閑話 死霊の盆休み

私の名前はひいらぎ。ちょっと霊が見える、普通のリサイクル店店員である…のだが。

最近、まあいろいろあって、首なしトラック運転手「ゴーちゃん」を組長とする悪霊団「ゴーちゃん組」の組員になってしまった。


で、だ。

組長のゴーちゃんの言動が、いろいろヤバくて毎日のように奇行を繰り返していたのだが。

ここ数日おとなしいのだ。幽霊トラックで爆走もしないし、動物霊たちとヒーローごっこもしない。静かにオカルト本を読んだり「よいこの絵日記帳」にヘタクソな絵を描いたりしている。病気かな?

どうしたのか聞いてみたら、「盆休みだよ」とのこと。…はぁ?


組長「精霊しょうりょう馬って知ってる?お盆の時期にご先祖様の霊が帰ってくるじゃん。その時に乗ってもらう『乗り物』の事。馬とか牛とか野菜で作るやつ。これに乗ってきてくださいね~っていのるわけよ。日本全国で。」


な、なんか言い出したぞコイツ。


組長「そりゃもう全国的に祈るわけよ。で、牛霊や馬霊がその依代よりしろを使って、先祖霊の送迎そうげいに大活躍なわけよ。でもさ、お盆の時期だけの期間工なわけよ彼ら。ドゥーユーアンダスタン?」


あー、もうわかってきた。もういいです。


組長「お盆の時期以外、ヒマしてる牛霊や馬霊にさ。ウチの組に来ない?って声かけたら、ふたつ返事でOKだってさ。全員だよ!ビックリだよね!」


あー、あの異常なパワーはコレがアレしたわけか。

ていうか、その発想が頭おかしい。


組長「んだから、お盆の時期だけウチの組はお休み。『自動車型の精霊馬』を作るところも結構あるからさ。トラック霊のトラッキーちゃんにもコンテナハウス霊のコンテナ載せて…『お座敷精霊馬』!」


お座敷精霊馬。


組長「そそ。お座敷精霊馬。絶対ニーズがあると思うんだよね!」


私は『精霊馬ビジネス』の今後の展望についてのアツい話を聞き流しながら、青空に湧き昇る白い入道雲を見つめていた。ビールが飲みたい。


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