第九話 歯車
イツナの守護が払拭されるや否や、立ち所に出現したのは白く神々しい雲だった。
細長く、螺旋状に何本も重なって浮かんでいる。
今しがた空間と頭の双方に響き渡った謎の声。
十中八九、眼前の雲から発せられたものであろう。
内容は意味不明だった。
ハナノミコト――誰に対する、何を表す言葉なのか。
黒之助は集中状態を維持しつつ、場の様子を窺った。
全員が微動だにせず、雲を見つめている。
みな表情は険しく、とても開口できる雰囲気ではない。
質問は諦めて、雲に視線を戻す。
どうやら自分のエネルギーに触れても、特に影響を受けていないようだ。
ならばこれ以上延ばしたところで、こちらが消耗するばかりである。
彼は意識の方向を内側へと戻し、力の浪費を避けた。
とはいえ、無心はできる限り存続させねばなるまい。
いま解除すれば、不調と切迫の二重苦に押し潰されてしまうことだろう。
この局面で卒倒するほど、絶望的な
彼は半目になり、瞑想を深めながら状況を確認する体制に入った。
緊張で引き延ばされた静寂がその後、何秒続いたかはわからない。
気がつくと雲が一本だけ、枝毛のように螺旋からひょこりと跳ね出ていた。
先端を上下に
明らかに、ある一点に対して伸び縮みしているのだった。
「!」
羅摩がホウゲンの前に立ち、彼を庇護せんと構える。
雲はその場で伸縮を繰り返すのみで、近づいている気配はない。
だが、彼らに何らかの反応を示しているのは間違いなさそうだ。
それを裏付けるように、あの声が再び響く。
《
ぞわりと背筋に這い上がったものが首の後ろまで到達し、凍りついている。
その氷塊は心に引っ付き、
聞こえてきた声には、如何なる意識も含まれていない。
いないのに、そこに宿る偽りの恬淡が、かえって底なしの闇を彷彿とさせるのだ。
無心を掻き乱され、強制的に有心へ移行した黒之助は不調を取り戻す。
案の定、体の悲鳴は絶叫へと進化し、常に最悪が更新されている。
卒倒は免れたものの、このままでは遅かれ早かれ気絶することに変わりはない。
膝をつき、今にも崩れ落ちそうな彼をゾグが見遣る。
(坊主! 耐えられんかったか)
ゾグにはわかっていた。
あの美しい雲が、如何に醜く、どれほど霊妙で無比の存在であるのかを。
鬼や蛇なら問題はない。
穢れし眷属、荒ぶる龍でも調伏はできよう。
しかし今回は相手が悪すぎる。
(まさか上をも欺くとは。どう対処すりゃ……クク、泣きごと言ってる場合じゃないのう)
彼は杖で空中に光る紋様を描くと、剣で薙ぎ払った。
二つに分かれた紋様は散開、雲の左右に位置取り、停滞する。
ゾグが両手の得物を交差させると、それらは中心に向かって動き出した。
紋様を遠隔操作し、雲を挟み撃ちにしたような形だ。
ところが、何かに見えぬ力に押し返されているのだろうか。
反発する磁極を無理やり近づけているかの如く。
ゾグの力んだ両腕が、グググと窮屈そうな振動を伴っていた。
雲の周辺には稲妻が閃き、空間が
彼は額に汗を滲ませながら、愕然としているイエミズに尋ねた。
「小僧、動けるかの? 」
「あ、ああ……! だがあのような存在、霊符はおろか式神すら……」
「そう悲観するでない。とりあえず、吾だけでは不足のようだ。五芒星で蓋してくれんか、表も裏も」
「蓋……そういうことか……!」
「迅速に頼むぞ」
イエミズは懐から穂先の三つある大きな筆と、青い地紙の扇子を取り出した。
そして小声で何かを唱えた途端、
彼は扇面に、起筆の位置を変えて二回、点描した。
一回目は三つ、二回目は二つの丸を打ち記す。
宛ら、快晴の空に浮かぶ太陽が五つ。
ひとたび扇子を前方へと煽ぐと、太陽たちは空中へと飛び出して静止した。
筆と扇子を収めたイエミズは、左手で特殊な手刀をつくる。
人差し指と中指をピンと伸ばして密着させ、薬指と小指を第二関節で折り畳む。
それらの爪の上に、親指の腹を乗せた形である。
この手刀を使って全ての点同士を切り結ぶと、五芒星が完成する。
左手と五芒星は、細い炎のような朱き糸で繋がり、連動するようになっていた。
(複写、反転)
手刀を解き、指先を天に向けて、胸の前で両手の平を静かに合わせる。
そうして右手のみを奥へと捻り、指先を下に向け直す。
最後は擦れた左の
すると五芒星が二重になって、それぞれが独立していった。
増えた五芒星は、各頂点の位置が逆になっている。
「ゾグ、参るぞ」
「ああ、かましたれ」
左手は六時の方向、右手は十二時の方向へ。
反時計回りに弧を描きながら、流れるように、優美に移動させる。
上段と下段に掌底を構える――謂わば、空手の"廻し受け"に当たる動作。
イエミズは溜め込んだ力を、ゾグによって拘束されている雲に向けて放った。
二つの五芒星が縦に並んで走り抜け、雲の上下に入り込む。
(仕上げだ)
貝を閉じるように手の平同士を押しつけ、組み合わせる。
五芒星とゾグの紋様が四方を囲み、雲を空間もろとも圧縮した。
仔細はわからぬが、頗る高度な連携技と見受けられる。
視界の霞む黒之助でも、彼らが何をしているのかは想像できた。
捕縛、ないし封印を試みているのであろう。
赤い粒子や光の交錯するその光景は魔法のようで、神通力のようでもあった。
――規模や二人の消耗具合から察するに、奥の手を使ったのかもしれない。
そうせざるを得ないほど、相手が
小さくなりつつも、依然としてただ佇んでいるだけの白の浮遊物。
その卦体な雲は、不気味なほどに変わらぬ調子でぽつりと言い放った。
《あはれ、わたうたちか。……
捻じ曲がった空間の中から、いつの間にか煙が漏れ出している。
すぐに煙は周囲に充満し、ゾグらの術ごと雲を覆い隠した。
一同、あっさりと凝念を掻い潜られ、出し抜かれてしまった形だ。
神経を擦り減らしながら観察していると、やがて煙が薄れてくる。
そこには、元の大きさに戻った雲が垣間見えた。
何事もなかったようなその姿は、策がすべて無に帰したこと物語っていた。
「!?」
「あわよくばと思ったが、どうにもならんか」
「……皆様、お気をつけください!」
落胆する間もなく、沈黙を保っていた羅摩が叫ぶ。
緊張の上塗りが、空気を極限まで張り詰めさせた。
直後、雲は音もなく膨張を始める。
たちまち数十倍に増殖し、大広間が奇妙な粒子に溺れていった。
一寸先を確かめることすらままならない、濃霧の奇襲。
黒之助は手で振り払ったり、呼気で吹き飛ばそうとするが、霧は流動しない。
「こ……まず……吸っ……ならん」
ゾグと思しき声が遠くから断片的に聞こえる。
この霧は視覚だけでなく聴覚も阻害するらしい。
欠けた言葉から意図を推量するにも、頭が朦朧として働かない。
何もわからず、考えることもできず、本能的な恐怖だけが残っている。
繰り返す後悔と絶望の狭間――黒之助はとうとう、意識を手放してしまった。
◇
『ようやく掴んだ』
色彩を失った世界で、清廉な光が人を象った。
少し離れたところに、黒之助が横たわっている。
人型は鏡のようなものを創り出すと、自身を写した。
反射された光が
遍く満ちていた霧は一気に晴れ渡り、倒れ込む六人と雲の存在を暴き立てた。
突然の転変であったが、雲は尚も平坦な声色で、淡々と告げる。
《
『……やはり格上。
人型は目を閉じて合掌した。
その心の銀幕には、次々と未来の光景が映っては消えてゆく。
未来は押し並べて過去にあり、作為によって決められた本流に帰結する――見極められた真実は単純で、老獪だった。
『なるほどな。この一切は
《
『諸行無常か……だが』
人型が眼差しを向けた刹那、同調するように黒之助の体が輝いた。
彼は即座に薄っすらと意識を回復し、片方の瞼のみ、僅かに開くことに成功する。
ぼやける視界の端に立つ、見知らぬ光の存在。
あれは何なのだろうか。
あまりにも慈悲深く暖かい念が、そこにはあるように感じられる。
瞳を通して伝わってくるのは、際限なき愛。
不可解な情緒が湧き起こり、黒之助はひどく優しい安心感を憶えた。
その所為か彼は無自覚に、この窮地に似つかわしくない笑みを浮かべている。
人型は穏やかに言った。
『黒之助。乗り越えて天命を果たすがよい。……少し借りるぞ』
お互いの光が繋がって、共有される。
まるで秘湯で美酒に酔いしれ、
心地良い安寧に包まれて、黒之助の意識が再び混濁してゆく。
『ただし、ゆめゆめ忘れてはならぬ。挽回できる機会は、これが最初で最後だ』
彼は辛うじてそれを聞き届けると、奇妙な感謝を抱きながら昏睡に陥った。
光は、生き物と見紛うほど意図的な軌道で、ある方向に真っ直ぐ伸びてゆく。
辿り着いたのは、ホウゲンの体であった。
三者を結び、
雲は何かを察したのか、また起伏のない声を響かせた。
《思ひ励みても、
『されど、その力はもはや汝だけのものではない。人は時として、帝の御意思すら手繰り寄せるものだ』
《
『……願わくば、全ての御霊の幸せを』
その言葉を最後に世界は止まり、
星の道には、終焉の跫音が忍び寄っている。
◇
暗澹たる様相の書斎に、白き衣の男が倒れている。
すぐ近くには、同じく意識のない青年の姿があった。
彼らがいつ気絶し、どれほどの時間が経ったのかは定かでない。
ただ、少なくとも目覚めるのに必要な休息は得られていたようである。
青年の指先がぴくりと動き、ゆっくりと瞼が上がってゆく。
(ここは……暗くてよく見えないな)
両目を擦りながら起き上がり、鈍い動きで辺りを見回す。
燭台の火が朧げに室内を照らしている。
この光景に、青年は既視感を憶えた。
それがどこから来る感覚なのかを探ってみる。
(……この部屋、前も床で寝てたことがあったような。あの時は確か……)
段々と記憶が蘇ってくる。
おそらく自分はこの場所を知っているはずだ。
過去にあった出来事が、頭の奥底から湧き上がる。
傍らには二人の人物がいた。
起こされた自分は、質問に答えた。
最初は記憶の有無、次は名前。
「あ」
我ながら驚くほどの声量で口を衝いて出たのは、言語化できぬ感情だった。
走馬灯のように、数々の記憶が脳裏を駆け抜けてゆく。
青年は俄然、ここに来てからのことを全て思い出した。
特に鮮烈に残っているのは、気を失う直前に見た光景だ。
大広間にて謎の存在と邂逅し、死すらも覚悟したあの壮絶な場面。
しかし、雲は見当たらない上、ここはホウゲンの書斎である。
何がどうなっているのか――圧倒的な情報不足の痛感。
青年こと天利黒之助は立ち上がると、部屋の中を調べた。
すぐに机と椅子が目に入り、後者が不自然な位置で静止しているのに気づく。
慎重に机に近づき裏の方へ回ると、その理由は単純明快だった。
「ホウゲンさん!」
男が伏していた。
風貌は見違えたが、彼はホウゲンその人である。
自分がそうしたのだから、忘れるわけもない。
彼は慌てて駆け寄り、ゆさゆさと肩を揺すった。
ホウゲンは小さく呻き、ほどなくして意識を取り戻した。
「……クロいのか?」
「そうです、大丈夫ですか」
「ああ……他の者はどうした」
「それが……」
黒之助は掻い摘んで経緯を説明した。
ホウゲンの悪意が消失したあと、同じようにイツナの守護もなくなったこと。
その際、突如として筆舌に尽くしがたい存在が現れたこと。
ゾグやイエミズが抵抗するも敢え無く失敗し、全てが飲み込まれてしまったこと。
その後、誰かから何か大切な導きを受けたが、うろ覚えで不確かであること。
自分も先ほど目覚めたばかりで、他の者たちがどうなったかわからないこと。
ホウゲンは黙って話を聞き続けた。
黒之助が一通り喋り終わると、彼はため息を一つ零し、怠そうに立ち上がった。
そうして椅子の位置を戻し、力なく座り込む。
視線の先には何かの本が開かれていた。
ホウゲンはそれを一瞥してから、黒之助と目を合わせる。
「だいたいわかった。調べたいことは山ほどあるが……生憎、この体たらくでな」
「あ、すみません……」
「よい。清々しているくらいだ」
「……ありがとうございます。差し当たり、調査は私が代行させていただければと思います。わりと普通に動けそうなので」
「ああ、頼む」
「はい。では、まず皆さんの安否を確認をしないとですね」
「それなのだが……妙に引っかかる」
「え?」
「クロいの、そこの転移陣を潜ってみろ」
ホウゲンが顎で指し示した場所に、不思議な紋様が描かれている。
おそらくこれは、唯一この書斎と直通になっていると聞き及んだ転移陣。
手掛けた張本人である、羅摩がそう言っていたはずだ。
「この先って、確か……」
「羅摩の領域に出る。いる保証はないが、とりあえず呼んで来い」
「わかりました。倒れているかもしれないですし、急いだ方がよさそうですね」
「まあ、あいつがいた方が何かと都合も良いしな。……ただ、自重してゆけよ。どうにも様子がおかしい」
「……くれぐれも気をつけます」
黒之助は会釈して、恐る恐る転移陣を潜り抜けた。
するといきなり、目の前に扉が出現する。
そこは一畳にも満たない極めて小さな空間だった。
どうやら繋がっていたのは、どこかの玄関のようである。
裏拳でコンコンと扉を叩いてみるが、特に返事はない。
仕方がなくドアノブに手を掛けると、鍵は掛かっていなかった。
――この場合、問答無用で入室しても良いものだろうか。
彼は逡巡したが、非常時と考えれば躊躇っている時間はない。
意を決して扉を押し開き、そっと中へと入る。
「失礼します」
さほど広くない、木造の静かな部屋に出た。
物は何も置いておらず、頭上は格天井になっていて、奥に何か祀られている。
左右の壁の上部には欄間があり、外部の空模様が覗いていた。
構造からして、神社の拝殿であろうか。
見えている空は非常に紅く、黒い雲の
(羅摩さんの言っていた空の違いって、これかな)
もう少し近くで魔界の空を見てみようと、一歩を踏み出す。
床が軋むのと同時に突如、パシと紙が切れるような音が複数、鳴り響いた。
驚いて周囲を見回したところ、ふと背後から気配を感じて振り返る。
開けた扉の裏側に、人が立っていた。
非常に見覚えのある白装束である。
頭巾を被っておらず、素顔が露呈している点を除いては。
「……? 羅摩さん、ですよね?」
「!」
黒之助が声を掛けると、羅摩は何故か身構え、動かないでいる。
警戒の色を帯びており、違和感のある所作だ。
まさか人違いということもあるまい。
何か気に障るような言動でもあっただろうか。
彼は戸惑いながらも続けた。
「あの、羅摩さんは大丈夫でしたか? 私とホウゲンさんは無事だったんですけど」
「…………」
尚も、羅摩は返事をしなかった。
こうなってしまっては、こちらも押し黙るしかない。
澄み切った美しい瞳が、黒之助を射抜く。
気まずい静寂が場に居座って、外の雑音だけがやけに大きく聞こえる。
しばらく警戒態勢のまま佇んでいた彼女は、やがて両手をゆっくりと下ろした。
徐に、壁の方へと歩いてゆく。
揺れるミディアムボブの髪は、
壁際には御札と思しき紙が、細切れになって散乱していた。
反対側にも落ちている。
無言で断片を拾い上げる羅摩の姿を見て、黒之助は察した。
先ほど聞こえた音の正体は、御札が破裂する音だったのだ。
そしておそらく、これは自分が仕出かしたことに違いない。
彼女がそれで機嫌を損ねているならば、急いで謝罪するべきだ。
「すみません……大事なものだったんでしょうか」
しゃがみ込んで、そそくさと自分も拾い集めに行く。
背中への視線が痛いが、ここは誠実に対応したい。
ややあって、黒之助は全ての断片を拾い終える。
両手で椀を作り羅摩に差し出しながら、もう一度頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
「あ、ありがとうございます……」
彼女は困ったように紙吹雪を受け取る。
やっと発せられた声は、間違いなく本人のものだった。
もしや別人なのかと冷や汗を掻いたが、一安心である。
「いえ、自分のせいだと思いますから……。とりあえず、羅摩さんが無事でよかったです」
「ふむ……どのようにして結界を破られたのかは存じませんが、貴方の誠意に嘘偽りはないようですね」
「は、はぁ」
「恐れ入りますが、書斎の方でお待ちください。わたしもすぐに参ります」
羅摩が奥に向かって歩き出し、姿を消した。
空間自体に、別の転移陣があったものと思われる。
取り残された黒之助は止む無く、言われた通り踵を返した。
とはいえ距離は無いに等しく、一瞬で書斎に帰還する。
「存外、早かったな」
「ええ、羅摩さんがこっちで待ってて欲しいって」
「……ほう。ならば待つとしよう」
ホウゲンは座ったまま腕を組み、目を閉じた。
安静にしているところ、物音を立てるのは忍びない。
黒之助は書斎の中央で立ち止まった。
その場から見える範囲の棚、収められている書物に目を向ける。
知らぬ言語がある一方、日本語の見出しも散見される。
『900年前の爪痕』
『次元冷戦』
『第二次霊学革命にみる宿業』
『革命、狂わせし愛』
『
(どれもすごい内容なんだろうな……)
目移りしているうちに、後ろから羅摩が現れた。
今度は頭巾を被っていて、謎の安心感を憶える。
彼女は「失礼します」と言って、横を通り過ぎようとした。
しかしホウゲンを見た瞬間、急に直立不動となる。
「さ、齎魔殿下……!? 一体、どうされたのですか!」
堰を切ったように駆け寄り、机に両手をついて問い質す羅摩。
ホウゲンは少し面食らった表情をした後、何も言わずに考え込んだ。
予想だにしない展開に、黒之助も眉間に皺を寄せている。
「どうかお答えを。あちらの方と、何か関係が?」
「少し落ち着け、羅摩よ」
「あ……申し訳ございません」
「……一つ教えてくれ。今は魔界暦でいうと、どのくらいだったか?」
「え……そうですね。24252年の年初かと存じますが」
「やはりそうか」
「?」
桁の違う数字が飛び出す。
魔界暦なる単語は初めて聞いた。
ホウゲンは机に肘をついて、組んだ両手の甲に額を当てて俯いている。
何かに気づき、打ちひしがれてしまったようにも見える。
他の二人は全く状況を飲み込めていない。
少し間をおいてから、彼は神妙に語り始めた。
「クロいのも聞け。おれたちは少し先の未来から戻ってきている」
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