第22話執事の逃走劇3

「お前が今世話になってる砂糖元家の希美って娘がいるだろう?彼女が通ってる学校が貂彩学園で、俺は今そこに勤めてるってわけだ。」

雲龍は言葉のキャッチボールを諦めた。

しかし、雲龍の言葉のボールを受け取った『大きな』執事は何やら上を向いて考えこんでいる。


雲龍は『大きな』執事の想定外の反応に困惑する。

今の言葉に何か分からない部分があったか?

『大きな』執事は数秒考えた(本当に考えてたのかは不明だが)後、雲龍に衝撃の言葉を返した。


「希美って誰だい?そんな人いたかなぁ?」

「おいおいおい、お前が今お世話してる女の子がいるだろう?その娘の名前は分かってるのか?」

「馬鹿にしないでくれ、そのくらい分かってなきゃ仕事にならないよ。お嬢って名前だよ。最初にそう呼んでくれって言われたんだから。」


「.......。」

ちゃんと仕事だと理解していたのか。。

いやいや、それよりもなんて言った?お嬢?お嬢って名前?

雲龍は何から聞いて良いか分からず、思考停止した。

すると『大きな』執事は、何かを思い出したかのように手を叩いた。


「あ、そう言えば他の人は愛称みたいな感じで望みちゃんって言ってた気がする。たぶん小さい頃からなんでも欲しい欲しいって言ってたからじゃないかな?学校でも愛称で呼ばれてるのかい?」


「そっかー、そうなんだー。」

雲龍は説明を放棄した。

これ以上カロリーを『大きな』執事に奪われないように。


「で、うちのお嬢様が何か悪いことでもしたのかい?ほかの人の給食を食べちゃったとか?」

そういうことするのはお前だけだろうという言葉を飲み込み。雲龍は説明する。


「おそらく知らないだろうけど、お前の上司である砂糖元家の執事長の醤油屋さんは貂彩学園の学園長なんだよ。学園長から直接は言われてないが、希美くんには特に気を遣うように先生の間でなってるんだよ。だからお前から情報を仕入れたいなと思ったわけだが、期待外れだったかもな。」


「そういうことならお安い御用さ。」

『大きな』執事は胸なのか首なのか分からないが平手で叩き、満面の笑みを浮かべた。

「何か有力な情報があるのか?」


雲龍は期待してないとは言いつつも、『大きな』執事の態度に期待する。

「今は毎日の献立しか分からないけど、ご飯を奢ってくれるなら情報を探って来るよ!」

今度は確実に左手でお腹を擦りながら、右手の親指を立てている。


「まぁ、背に腹は代えられないか。ただし情報の質によって食べ物の量が決まるからな。」

ここに『報質食量』の協定が結ばれた。

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