第20話執事の逃走劇1
「はぁはぁ、そうか今日は始業式だから早く終わるのか。でも顔は見られてないからばれてないと思うけど。」
『大きな』執事は自分の特徴が、顔よりも体型だとは思ってないのだろうか。
時は少し遡る。
希美達から逃げ切った『大きな』執事は、貂彩学園前駅までやってきた。
しかし、山葵山の手伝いでやってきただけなので、携帯電話もお金もない。
いや、そもそも『大きな』執事は携帯もお金も持ってない。
もちろん給料は出ているが、つまみ食いと酢矢に借りてたお金の返済で初日になくなってしまう。
そして執事の生活は全て家の中で完結してしまうので、生活するうえでお金は必要ない。
さらに『大きな』執事に友達は酢矢を含めてピースサインで事足りる。
携帯電話なんて必要ない。
なので『大きな』執事はスマホもお金も持ってない。
持ってるのはナイフとフォークだけだ。
「でもどうしよう、お金もないしお腹も空いたなぁ。でもまだ夕飯の時間じゃないし、どこかのスーパーで試食とかやってないかなぁ。」
『大きな』執事は食べ物がないか駅前を徘徊する。
しかしハッピーアワーをやっている店はあるが、試食をやってるお店はなかなか見つからない。
食べ物を探しているうちに、多摩川沿いに出てしまっていた。
こんなところにお店なんでないなぁと思っていると、なにやらとても香ばしいにおいがしてきた。
匂いを辿っていくと、河原でバーベキューをしているのを発見する。
日本では外で食べている人は高確率で食べ物を分けてくれると、小さいころから教えられていた『大きな』執事は、河原を散歩している風を装って近づいていく。
今日は良い天気ですね。
何を焼いてるんですか?
美味しそうですね。
『大きな』執事はどうやって声をかけようか考えながら、じりじりと近寄っていく。
そしてお腹空いたなぁ、と近づきながら独り言のように言おうとした瞬間だった。
河原でバーベキューをしている男の方から、『大きな』執事に語りかけてきたのだ。
「今回はずいぶん遅かったじゃないか。」
まさか相手から話しかけてくるとは思わなかった『大きな』執事は、反射的に内ポケットからナイフとフォークを取り出す。
そして薄ら笑いを浮かべている男の顔を確認すると、そのまま焼かれていたソーセージをフォークで食した。
「なんだ、雲龍じゃないか。久しぶりだね。」
知り合いだと分かるや否や、正式に食事を始める『大きな』執事。
「相変わらず食べるなぁ。ちゃんと噛んでるか?」
この河原でバーベキューをしている男は雲龍幸太郎。
『大きな』執事がピースサインで数えられる数少ない友達である。
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