第19話探偵事務所3

気にしすぎ?しっかりしてちゃダメなの?

希美は幸子の言ってることが理解できないでいた。

希美は幸子にこれ以上聞いても分からないと考えた。


「よく分からないから、幸子さんともっとお話ししたいです!お友達になってくれませんか?」

幸子は改めてそう言われると、少し照れながら頷いた。

そして、親指と人差し指を開いてこう言い放つ。

「希美ちゃん、お友達になるのに許可なんていらないでしょ?」

希美はその言葉とほぼ同時に、幸子の差し出された右手にハイタッチをする。


「なに~、なにか良いことでもあったの?」

玉三郎に逃げられた琴音が、パチンという音に釣られて来た。

「幸子さんとお友達になったのよ。私同級生以外で初めて友達できた。」

「良いなぁ。私も幸子さん欲しい~。」

琴音は友達というものを何か勘違いしている気がするが。


希美達は連絡先の交換を終えると、その輪に入れてない一人の探偵を発見する。

その探偵は安物のクッキーを食べながら、チラチラとこちらの様子を窺っている。

片手には携帯電話(スマートフォンではない)を上げたり下げたりしている。


希美はそっと近づくと、スマートホン片手に語りかける。

「山葵山さんは、スマートホン持ってないんですか?」

すると山葵山はまるで話しかけられることを想定していたかのように、迅速かつ流暢に返答する。


「僕は電子機器は苦手でね。でもこの携帯は赤外線の機能がついてるから、連絡先の交換は簡単にできるよ。」

「赤外線の機能って何ですか?」

希美は初めて聞いた言葉を、そのままオウム返しする。


山葵山は想定していなかった言葉なのか言葉を失う。

「.....、いや君たちもさっき携帯を近づけて連絡先の交換をしてたじゃないか!?」

「あれはアプリの機能で、近くでスマホを振ると交換できるやつでやってたんですよ。それが赤外線なんですか?」

「きっとそうだよ。赤外線はすごい便利なんだから、今でも使われてるはずだ。ちょっとやってみてよ。」


そう言うと、携帯を差し出してきた。

希美はしかたなく、アプリを立ち上げ差し出された携帯電話の近くで上下させる。

山葵山は一生懸命自分の携帯電話を振り続けるが、何も反応しない。

息を荒げながら必死に携帯電話を振っているのを見て、可哀そうになる。


希美は何度も上下させられている携帯電話を救助すると、慣れた手つきで操作する。

そしてそのまま携帯電話を、疲れ果てて崩れ落ちてる探偵に笑顔で手渡す。

「私の家の電話番号登録しといたんで、『大きな』執事に用があったらそこに電話してくださいね。私も暇だったらお手伝いしますよ。」


手渡された携帯電話を見つめる、憔悴した探偵はその場に倒れこむ。

相当疲れたのか言葉も絶え絶えに、感謝の意を伝えている。

しばらくすると、立ち上がって水を飲んで希美に問いかける。


「そういえば啓介君はどこに行っちゃったんだろうね。大丈夫かな?」

希美は確かに、と時計を確認する。

時刻は午後の6時をまわったところだ。

時間を確認すると、希美は軽く頷いて『大きな』執事の居場所を確信する。


「大丈夫です。もうすぐ夕飯の時間なので家に戻ってると思います。」

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