第18話探偵事務所2

あたりを見回していると、「お帰りなさ~い」と奥から女性らしき人がやってきた。

らしき、と表現したのは声は女性らしい可愛い声なのだが、山葵山さんより背が高いのだ。鯨川さんよりも背が高い。


「やぁ、幸子くん。お礼の品は用意してもらえたかい?」

幸子と呼ばれたその人は、は~いと言いながら冷蔵庫の中から大きな発泡スチロールの箱を持ってくる。

じゃ~んと言いながら開けられたその箱には、冷凍パックにされたおそらく肉であろうものが入っていた。


「幸子くん、これは何かな?」

「何って、お肉ですよ!啓介君に手伝ってもらうから、あらかじめ用意してくれって言ってたじゃないですか?」

「そ、そうだっけ?神戸牛って書いてあるから、もちろんこれは最高級のお肉なんだろうね?」

山葵山はチラりとこちらを確認して、そう尋ねる。


「違いますよ~。啓介君は肉の味なんてこれっぽっちも分からないだろうから、ネットでいっちばん安いのを買って、なんとか牛って箱に書いとけば高級和牛と勘違いするだろうからって言ったの山葵山さんじゃないですか?」

「..........。」

何も言い返せない山葵山は、希美たちの目を気にしながら代わりのものを考える。

別に私たちはお礼なんていらないのに、これが大人なのかと希美は思った。

琴音と聡美はお礼のことなんか忘れて、玉三郎と戯れている。


「た、確か調査に協力してくれた人へのお礼が残ってなかったっけ?」

「あ~、残ってますよ!山葵山さんが、調査に協力してくれるのは大抵暇そうなおばちゃんだから、有名店っぽい名前を書いとけば安物のお菓子でも喜ぶだろうって言って買ったクッキーが残ってますよ!」

「幸子くん、君は包み隠すことをおぼえて欲しいな。」


山葵山はそう言うと、まるで今までの会話がなかったように希美に語りかける。

「希美ちゃん、おいしいクッキーがあるみたいだから、お礼にあげるよ!」

希美は何も言わずに山葵山を見つめる。

山葵山はすぐに目をそらし、小さな声で申し訳ないとつぶやいた。


「山葵山さん、何か勘違いしているようなので申し上げます。私たちはお礼が欲しいから手伝ったわけではないので、安物のお肉も安物のクッキーもいりません。」

山葵山は、えええっ!と大げさに驚いた反応を示す。

「お礼はいらないですけど、私幸子さんとお友達になりたいです。」


ソファで安物の紅茶を片手にクッキーを食べてる幸子は、名前を呼ばれてこちらを振り返る。

希美は幸子のもとへ行くと、目を輝かせながら問いかける。


「幸子さん、どうしたら幸子さんみたいに女性らしい体系になれますか?」

幸子は少し困惑しながら、親指と人差し指を顎に添えて考える。

確かに幸子はモデルのような体系をしている。

身長も170cmを超えて、すらっとしながらもふくよかさを感じさせる。


「うーん、どうしたらって。よく分からないなぁ。」

幸子は手のひらを上にして興産のポーズをしている。

希美が下を向き落ち込んでいると、でもね、と幸子は続ける。


「希美ちゃんとは会ったばかりだからよく知らないけど、話し方聞いてるとすごくしっかりしてる感じがするのね。でも逆に色々気にしすぎて心が窮屈になってると大きくなれない気がするよ!」

幸子は親指を立てながらウィンクをする。

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