第17話探偵事務所1
「よし君たち、手伝ってくれたお礼をしたいから、今から事務所に来てもらって良いかな?」
山葵山は玉三郎に引っ掻かれながら、希美たちに提案する。
玉三郎は山葵山の手を逃れて、聡美のもとへとやってきた。
これは山葵山一人で事務所に成果物を持っていけないだろうと、希美はその提案を承諾する。
「お礼って、何かくれるんですか~?」
琴音は聡美が抱えてる玉三郎にちょっかいを出しながら確認する。
山葵山は少し考える。
希美は考えてなかったのか、と思いながら観察していると携帯電話を取り出してどこかに連絡をしている。
スマートフォンではない、折り畳みでもない。アンテナがついてるタイプの携帯電話だ。
「あ、幸子くん、山葵山だけど。依頼されてた猫を捕獲したんだけども、手伝ってくれた人がいてお礼の品を用意してくれないかい?これから向かうからすぐ用意してくれると助かる。うん、君に任せるよ。ありがとう。それじゃ。」
電話を終えた山葵山は、希美たちの方に向かって親指を立てる。
「お礼は今用意してもらってるから、期待しててくれ!」
出会ったばかりだが、この短時間での印象からとても期待できるものではない。
希美は全く期待することなく、微笑みながら山葵山についていく。
「鯨川さん悪いわね、手伝ってもらった上に一緒についてきてもらっちゃって。」
気にしないでと言いながら、聡美は玉三郎に夢中である。
嫌そうでないことに安心した希美は、隣の琴音に目を移す。
「お礼ってなんだろうね?スイーツかな?コスメかな?」
スキップしながら楽しそうにしている琴音に、期待しすぎない方が良いよと希美は返す。
あの探偵に、女子中学生が喜びそうなお礼を用意できるとは到底思えない。
電話口では女性の名前を口にしていたが、おそらく年配のパートさんみたいな人だろう。
どうせおせんべいとかあんこの和菓子とかであれば良い方だろう。
期待してがっかりするより、期待しなくて想像以上だった方が良い。
希美はそんな失礼なことを考えながら、自分たちの歩く速度などお構いなしに進む山葵山に少し早歩きでついていく。
そんな各々違う思惑を抱きながら、多摩川沿いにある探偵事務所に到着した。
ここの二階が事務所なんだ、そう言いながら山葵山は外階段に案内する。
一階、というより作業スペースみたいなところには少し錆びれた軽自動車と何に使うかわからない工具などがある。
ただいま~と言いながら事務所へと案内する山葵山。
おじゃましま~す、と希美たちは中へと入る。
すると想像していた事務所とは違い、生活感が溢れる空間がそこにはあった。
ソファにテレビ、冷蔵庫洗濯機といった家電に加えてランニングマシーンやトレーニングマシーンのようなものまである。
希美たちがあたりを見回していると、奥からお帰りなさ~いと声がする。
奥からやってきた女性と思われる人を見て、希美はまた驚いた。
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