第16話探偵登場3

「ん?何か良いものがあったのかい?」

「山葵山さん、ちょっとこっち来て四つん這いになってもらっても良いですか?」

希美はそう言うと、琴音を木の傍に立たせて、その前に山葵山を誘導する。


「ん?なんで四つん這いに?」

そう言いながらも何か良いことがあるかもしれないという思いを擦れきれない山葵山は、琴音の前で四つん這いになる。

そして、きもち首を下にさげ上目遣いになる山葵山。


こいつは、、と思いつつも思い通りに行動してくれる山葵山を可愛いとさえ思ってしまう。

配置についたのを確認すると、琴音は聡美に声をかける。


「聡美ちゃ~ん、準備できたよ~。」

木の下で四つん這いになっている山葵山を確認してすべてを察知した聡美は、淑女であるので靴を脱いで前にある台に足をかける。

うぉ、といううめき声が聞こえた気もするが、聡美は台に乗り枝に手をかけ下から猫に手を伸ばし、舌を鳴らしながら近づいていく。


「玉三郎~、怖くないよ~。こっちおいで~。」

玉三郎と呼ばれたその猫は、若干の警戒心を残しながらも聡美の手の方にゆっくりと近づいてくる。

しかし台となっている山葵山は、顔の右を上に水平にして右目で木の上の様子を窺ってるのか聡美のスカートを窺ってるのか、体制がおぼつかなく定期的にがくんと揺れる。

その度玉三郎は驚いて後ずさりする。


見かねた希美は、琴音に目配せをする。

そして山葵山の左頬に左足を添える。

希美の行動を理解し、琴音は右頬に右足を添える。

互いに目を合わせると、小さく「せーのっ、」とタイミングを合わせて山葵山の顔を足で挟んで固定する。


すると台がきちんと役割を果たすようになり、聡美と玉三郎の距離が小さくなってくる。

玉三郎は聡美の指先のにおいをかいで、左頬を聡美の手に寄せるともう勝負あり。

聡美は玉三郎の首を優しく撫でると、玉三郎はそのまま頭を手に這わせて聡美のもとへとやってきた。

「やぁ、玉三郎は甘えん坊さんだね。」


聡美は玉三郎を抱きかかえ、台からゆっくりと降りる。

同時に希美と琴音は山葵山を開放する。

「鯨川さん、どうもありがとう。とても助かったわ。」


希美は聡美に感謝の意を述べるとともに、両手を差し出し成果を要求する。

聡美は若干惜しみながらも、玉三郎を希美へと差し出した。

受け取ると、希美は土埃を払っている山葵山へ玉三郎を差し出す。

「やぁ、よくやってくれたね。」

そう言いながら、不躾な態度で受け取ろうとする。


その態度を見た希美は、ぱっと差し出した手を引っ込める。

驚いた表情をしている山葵山を、希美は鋭い眼で睨みつける。

「せっかく手伝ってあげたのに、なんでそんな態度とれるんですか?」

山葵山は希美の軽蔑するような眼を確認する。

そして琴音と聡美もまったく同じ眼をしているのを確認する。


「申し訳なかった、手伝ってくれてありがとう。」

観念したのか、山葵山は謝罪と感謝の言葉をささげる。

その対応に満足したのか、希美は笑顔で玉三郎をささげる。

山葵山は頭を下げてそれを受け取る。

これではどちらが大人なのかわからない。


「よし君たち、手伝ってくれたお礼をしたいから、今から事務所に来てもらって良いかな?」

女子中学生に手伝ってもらい、説教を受け頭を下げる。

これでは大人の面目が立たないと感じたのか、山葵山は3人に大人の威厳を見せようとする。。

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