第15話探偵登場2
「大丈夫だよ、僕はこうやって目を瞑るし覗くなんてことしないよ。なんてったて僕は紳士だからね。」
山葵山は薄目を開けて希美を見ながらそう語る。
「とにかくあなたが肩車するのは断固拒否します!私が下になるからどいてください!」
そう言うと希美は琴音のそばに寄って前かがむ。
琴音は嬉しそうに、かがんでいる希美の肩に足をかけて、いいよ~と声をかける。
希美は少し力を入れ、琴音の足を握り体を起こした。
楽しいね~と言いながら手を伸ばす琴音だったが、木の枝に手はかかるが登るまでには少し高さが足りない。
「希美ちゃん、あとちょっと。ジャンプしてジャンプ!」
肩の上で腰を弾ませながら訴えているが、支える希美は必死だ。
「ちょっとそんなに動かないでよ。じっとしてて!」
え~と言いながら口をとがらせる琴音。
見かねた山葵山が「やっぱり僕が下になるべきだね」と言って交代を促してくる。
それは断固拒否を継続するが、このままでは埒が明かない。
良い方法はないかと考えていると、上に乗っている琴音が大きく手を振って誰かを呼び止めている。
「聡美ちゃ~ん、ちょっとこっち来て~。聡美ちゃんの好きな猫ちゃんがいるよ~。」
琴音が呼びかける方へ視線を向けると、そこにはバレーボール部期待の新人、鯨川聡美の姿があった。
琴音の呼びかけに気づいた聡美は、少し気だるそうに希美たちのもとへやって来る。
「なんだ、騒がしいなと思ったら琴音とさときびじゃないか。こんなとこで何してるんだ?」
肩車されている琴音とほぼ同じ目線で会話する聡美を見上げながら、希美は交渉を開始する。
「鯨川さん悪いんだけど、木の上に猫が登っちゃって困ってるの。私の代わりに琴音を肩車してもらえないかしら。」
「それは構わないけど、あんたたちが騒いだおかげで玉三郎がだいぶ警戒してるぞ?」
「玉三郎?」
初めて聞く名前に、希美はオウム返しする。
「あの猫の名前だ。良い名前だろう?」
聡美は誇らしげにそう説明をするが、希美と琴音は口をぽかんと開けたまま言葉が出てこない。
聡美はそんな2人のことはお構いなしで続ける。
「木の上に登ってしまうと逃げちゃいそうだよ。少し下の方からゆっくり近づいて警戒を解かないと。。私がやるから、何か登れる台みたいなのはないかい?」
肩車を解いた希美と琴音は互いを見合わせた後、近くに何かないか周りを確かめる。
しばらく探したのちに、2人の視線はあるところで交差する。
「ん?何か良いものがあったのかい?」
2人は互いを見合わせ、目標を見つけた表情でうなずいた。
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