第八雨-①

 しとしとと雨が降っている。

 昇降口の軒先から雨水が滴っていた。下校時刻の昇降口は雨音を掻き消すほど騒がしい。僕は少し大きい傘を手にして空を見上げていた。

「あれー、誰か待ち?」

 あのクラスメイトだ。タイミングがいいと言えばいいのか。一人苦笑する。

「うん。例の女子を待ってる」

「例の?」

「この前僕が女子と相合傘しているのを見たって言ってただろ。その女子だよ」

「えっ、おまっ、えっ? 彼女じゃないって言っただろ!」

「実際彼女ではないし相合傘を否定はしなかった」

 なんだよもー、と一しきり驚くなどしてから、ばしんと僕の背を叩いた。

「じゃあ今日は勝負の日なんだな? 健闘を祈る!」

 大きく手を振って去って行く彼に僕も手を振った。勝負の日、か。そこまで大きく考えていなかったが、そう考えると、叩かれた背から心臓に向かって、どくんどくんという血流が動いてくるように感じられる。

 彼女はなかなか来ない。もう帰ってしまったのか知ろうにも名前がわからないのでどうしようもない。同級生の目を気にして遅く学校を出ているのかもしれない。もう少し待っていいだろう。

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