第八雨-①
しとしとと雨が降っている。
昇降口の軒先から雨水が滴っていた。下校時刻の昇降口は雨音を掻き消すほど騒がしい。僕は少し大きい傘を手にして空を見上げていた。
「あれー、誰か待ち?」
あのクラスメイトだ。タイミングがいいと言えばいいのか。一人苦笑する。
「うん。例の女子を待ってる」
「例の?」
「この前僕が女子と相合傘しているのを見たって言ってただろ。その女子だよ」
「えっ、おまっ、えっ? 彼女じゃないって言っただろ!」
「実際彼女ではないし相合傘を否定はしなかった」
なんだよもー、と一しきり驚くなどしてから、ばしんと僕の背を叩いた。
「じゃあ今日は勝負の日なんだな? 健闘を祈る!」
大きく手を振って去って行く彼に僕も手を振った。勝負の日、か。そこまで大きく考えていなかったが、そう考えると、叩かれた背から心臓に向かって、どくんどくんという血流が動いてくるように感じられる。
彼女はなかなか来ない。もう帰ってしまったのか知ろうにも名前がわからないのでどうしようもない。同級生の目を気にして遅く学校を出ているのかもしれない。もう少し待っていいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます