第六雨-④
「もうわかりましたよね。理由なんてそれだけです」
彼女も駅を見て言う。もう聞くな、という圧に負けるまいと思いながら、僕はもう一つ尋ねる。
「じゃあどうして傘をさしている時があったの?」
「ああ、それですか。あの日親友が風邪をひいたんです。それで少し放課後お見舞いに。その日彼女が学校へ行っていないのは明白でしたし、ずぶ濡れで行けませんから」
これでいいですよね、と言わんばかりに溜息をつく。自分の心の奥にあるものを他人に話すのは疲れるものだ。雨音の中に、僕の乗る電車が間もなく到着する旨を知らせるアナウンスが響く。
「教えてくれてありがとう」
ごめん、と言おうかとも思ったが、それは違う気がした。それから勇気を出して口にする。
「また、一緒に帰ってもいいかな」
彼女は傘の雨粒を払いながら言う。
「別に構いませんけど。先輩、電車遅れますよ」
「うん、ありがとう。じゃあまた」
彼女は返事をせずに去って行く。僕もホームに行かなければ。彼女の後ろには傘から落ちた水滴がてんてんてんと続いていた。
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