第六雨-①
「お前彼女いんの?」
クラスメイトにそう言われた時、どきりとした。
「いやいないよ」
「そうなん? なんかお前が女子と相合傘してるの見たって奴がいたんだけど、じゃあ勘違いかな」
「傘をさしてると顔は見えづらいしね。それに僕と同じような背格好の男子はたくさんいる」
嘘はついていない。彼女はいないし、僕と同じような見た目の高校生は数多い。ただ、彼の言う「女子と相合傘をしていたお前」というのは、紛れもなく僕だ。今もこうして、例の女子がさす傘の中に僕はいる。彼女とは雨の中で会う度にこうして一つの傘を分け合うことになった。それは名前もわからぬ彼女のことが気になっているからだ。と言ってもそれは、周囲が色めき立つような意味での気になるではない。ただ純粋に、誰彼構わず相合傘をしたがるその理由が気になっている。個人的なことだ、を言うその理由を果たして教えてもらえるかはわからないが。それでも、一歩踏み込んでみたくなった。
「傘をさしている時があったけど、違いは何かあるの?」
「わざわざささない理由がなかったからです。……いつだって、そんな理由はないのかもれませんが」
珍しくその理由について覗かせた。続きを促すように彼女の横顔を見つめる。
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