第五雨-②
いわゆる相合傘なんて初めてだったため少し緊張したが、彼女は随分と慣れているようだ。雨が降る向きに合わせて少し傘の向きを調整したり、リュックを守ったりと、とても細やかだ。でも自分の肩が濡れることはお構いない。
「同級生の子は入れないの」
「催花に行く人はほぼいないので。それに変な人と思われそうで、それで」
ならばなぜ僕はいいのか。一時限りの関わりだからだろうか。
「いつからこうしてるの?」
失礼な質問だったかもしれない、と言ってから思った。まるで尋問だ。
「今年からです。理由は個人的なことですけど」
理由は教えてくれないらしい。
「学校から催花までは割と距離があるけど、いつも歩くのは疲れない?」
「特別疲れた時以外は歩きです。歩くのは嫌いじゃないですし、電車を降りたら家にはすぐ着くので、大丈夫です」
「そうなんだ」
会話はまちまちだ。彼女の方からも特別会話をしようという気は感じられない。真っすぐ前だけを向いている。しとしとと鳴る雨が心着良い。彼女の傘は、冷たい雨のようで、どこか心を潤す雨露のようだった。
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