第37話 聖なるぎしき②
「……ありがとうね」
ある時、休憩時間に草原で寝そべって風に吹かれていたら、エレメートがやってきて隣に腰を下ろしました。ミモルも上体を起こして、優しげな瞳を見つめ返します。
「ミモルが来てくれて、本当に嬉しいよ」
「どうして、私だったんですか?」
思い切ってミモルは、これまで胸にしまい続けた疑問を口にしました。
人間はそれこそ星の数ほどいます。あの時見た夜空に
「……僕らは
なんの話でしょう。多くの何かを含んだ話に聞こえましたが、ミモルにはすぐに理解しきれませんでした。花が人間だとして、肥料や花壇は何を意味するのか……。
深い思考に落ちようとする少女に、彼はのほほんと「そんな顔してると、
「心配しなくても、ミモルにはたくさん助けてくれるひとがいる。それに、永遠にお留守番をしてなきゃいけないわけじゃないんだから」
「……帰ってきて下さるんですよね?」
「もちろん」
時が来れば、彼らは死んでしまいます。でも、世界が存続するならば神々もまた転生し、いずれ復活すると彼らは言ったのです。
魂の
「僕達が帰ってくるまででいいんだ」
あくまで一時に過ぎない役目です。欠片はあくまで本物のピースが戻り、かちりとはまるまでの臨時の代用品なのでした。
「いつ、とは約束できないけど。その時がくれば絶対に分かるから。探してくれると嬉しいな」
どこかで人間として生まれる神の
見つけ出した時こそが神の復活の時であり、今はまだ出せないでいる「ミモルなりの答え」を伝えるタイムリミットでもありました。
長い長い、黒い人影の列が
ミモルが後継者に選ばれるまでは決して
「う、……うぅ」
列の出発点となった神殿の入口。エルネアが止め
ミモルは何も言えないまま、
後ろに立つフェロルは
「フェロル、泣いても良いんだよ?」
ミモルにとって母を失った時の胸を裂かれるほどの悲しみは、まだ古い記憶になっていません。だから、涙が押し流してくれる痛みもあると知っています。
「……いえ、大丈夫です」
返ってきたのは引き絞るような声でした。泣きたくないのか、泣けないのか、それとも別の何かでしょうか。
儚げな青年の胸中に渦巻くものを、ミモルには推し量ることが出来ません。
葬列も、まだ最後尾は訪れません。
長い間使われて
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