第34話 さいだいの真実と決断②
「知って良かったです」
神々は、少なからず驚きを示して少女を見下ろしました。ミモルはぎゅっと服の胸の辺りを掴み、きっと顔を上げます。
「神様達は身勝手だって、誤解したままになるところでした。未来があと何年もないなんて、それで皆さんが苦しんできたなんて考えもしないで」
ネディエが戻って来ないと嫌だ。ジェイレイにはもっと自由に生きて欲しい。その気持ちも世界が終わってしまったらなんの意味もありません。
彼らのことです。問題を抱えた二人がきっかけとなって、世界の崩壊が早まってしまうのを防ぐことも
様々な疑問が、一つの鍵を得て次々にほどけていきます。まだまだ考えれば、更にたくさんの謎が解けるのでしょう。けれど、ぐるぐると回る思考を一旦止め、ミモルは「私が」と切り出しました。
「私が代わりに支えます」
「ミモルちゃん!?」
「何を言い出すんですか!?」
突拍子もない言葉にエルネア達も顔色を変えます。少女の
「無茶言わないで。今の話、聞いていたでしょう?」
「そうですよ!
どちらも小さな主を心配しての言葉でした。
当然です。神々が四柱がかりで存続させてきた世界を、人間が代わりに引き受けようだなどとは、
ミモルにだってそれくらいのことは解っていました。導きによって力を付けたと言っても、創造主と被創造物の差は歴然としています。
ここへ来て実際に肌で感じました。目の前に立っているだけで、押しつぶされそうなのです。それでも言わずにはいられません。「先」に一歩でも進むために。
「まだ答えも出ていないのに、お
様々な解を得てもなお、世界の仕組みには課題が山ほど残されていることでしょう。悲しみは地に
「完全なんて、多分ないんだと思います」
楽園があるとすればこの天のような場所でしょうが、人間が住むに
「だから見つけたいんです。みんなが笑っていられる方法を。そのための時間がないっていうなら、ここに来て真実を知った私が作ります。一分でも、一秒でも」
ただでさえ静かだった空間に、もう一層の沈黙が降りました。やけに長く感じられた静けさを破ったのは、すうっと通った
「やはり、行き着くか」
どきりと胸が鳴ります。何かが決まり、進んだという予感が体を満たしました。
「気が進まないがな」
「じゃあ決まりだね?」
最後にエレメートが楽しげに確認し、ミモルに「良かったね」と微笑みかけました。それは不思議と、嬉しくて仕方がないといわんばかりの笑みでした。
「え、あの、何が良かったんですか……?」
手をぎゅっと握られ、ミモルはきょとんとして訊ねます。大きくて温かい手でした。無論、エルネア達も事情が呑み込めず、同じような顔をして突っ立っています。
それまで一定の距離を保っていたエレメート以外の神々が少女に近寄ってきました。
子どもの姿のクロノを除けば全員、背が高い男性です。こうして一度に見下ろされると、彼らから
「あの……」
少女は怯えた表情で見回します。エレメートはまだ手を掴んだままでしたし、そうでなくとも足が竦んでしまって逃げられはしなかったでしょう。
「大丈夫。すぐに終わるよ」
『もしかして事実を知り過ぎたから、消されちゃうんじゃ』
恐ろしい考えがよぎって、背筋が一気に冷えます。「馬鹿ねぇ」と答えたのはリーセンでした。
『もしこいつ等がそこまでの阿呆だったら、あたしが化けて出てやるわよ』
フォローになってないよとミモルは返しました。
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