第25話 還るばしょ①
話は少し前に
ムイは、ミモル達にアレイズの家で休んでいるよう告げると、アルトと共に騒ぎを収拾するため、てきぱきと天使達に指示を出し始めました。
「さぁさぁ、
鋭い
天への不満を申し立てようと集まっていた彼らでしたが、目的の途中で
「身を引き裂かれるほどの重い罰だとお思いでしょうが、神々は命をお救い下さると仰っておられます」
死よりも深い苦しみを覚悟していた者達ですが、アルトの静かな説得が功を奏し、
彼らから聞き出した通りの場所には、新たに
「他に方法はなかったの?」
ミモルはやるせない気持ちで胸がいっぱいです。
仕方ないのは解っていました。二人は主の命令を忠実に遂行しただけで、暴力を振るったわけでもありません。それでも問わずにはいられませんでした。
……まただ。
また悲劇が生まれてしまいました。それも今度は自分の目の前でです。
巻き込まれた身とはいえ、ミモルは事件の渦中にいたにも関わらず何も出来なかったことが悔しくて、ぐっと唇を噛みしめます。
「これじゃまた同じことが繰り返されるだけだよ」
今回の事件はボヤ騒ぎのようなものでした。燃え盛る前に火を消したように見えて、影でたくさんの種火をまき散らしたのだと少女は訴えます。
「なら、あいつらの要求を呑めっていうわけ?」
ムイはため息をついて、面倒なことをを言わせるなという瞳で返します。
「それは……」
それこそ出来るわけもありません。沈黙を
「じゃあこの話はここまで。次の仕事をさせて貰うわよ」
「次の仕事……?」
他にどんな用事があるというのでしょうか。聞く間もなく、神の使いは音を立てて席を立ち、ネディエの前に素早く歩み出ます。一切の迷いを持たない足取りでした。
アルトが、黒髪を揺らしながら静かに告げます。
「不要な魂を回収致します」
「なっ……」
静止するタイミングもなく、突き出されたムイアの腕がネディエを貫きました。がたん、と椅子が後ろに倒れます。少女は自分の胸元から伸びる白いそれを、これ以上ないくらいに見開いた瞳で見つめています。
「ネディエ!?」
不思議なことに血は一滴も落ちて来ず、腕が埋まった断面は湖のように波打つのみ。物理的に傷を負わせる行為ではないということなのでしょうが、見る者を蒼ざめさせるだけの恐ろしさは十分にありました。
「やめ……ろ」
たとえ怪我をさせるつもりがなくとも、ネディエの歪んだ表情からは苦しみが伝わってきます。異物が侵入する感覚が、ぞわぞわと全身を駆け巡っているのです。
「見つけた」
腕を小刻みに動かしていたムイが呟き、動きを止めました。何を指すかは明白です。
ネディエに吸い込まれたアレイズの魂は、天界にとっては
しかし、掴んで引き抜こうとしたムイは小さく舌打ちします。
「融合がこんなに進んでるなんて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます