最終話 「最後の仕返し」

「……ごめん。私、罰ゲームで告白をするようなそーくんとは付き合えない」


 その言葉を聞いた瞬間肩を落としたものの、悲しみを感じるよりも先に納得してしまった。


 自分がしたことがどれだけ酷いことかは理解していたつもりだったが、やはり嘘で告白された本人は俺が想像しているより数倍嫌な思いをしたはず。


 そう考えればフラれて悲しいなんて思う資格は俺にはなかった。


「……だよな。ごめん。本当に。それじゃあもう帰るわ」


 肩を落としながら自宅に帰ろうと小咲の部屋の扉に手をかける。


「でも、自分の過ちを素直に謝罪できるそーくんとは付き合いたいな」

「……え?」


 小咲が何を言っているのか理解しようと数秒間頭を回転させるが、答えにたどり着くことはできない。


「それはどういう意味でしょうか?」

「そのままの意味だよ。罰ゲームで私に告白するようなそーくんとは付き合いたくないけど、ちゃんと素直に謝ってくれたでしょ? そんなそーくんとなら私は付き合いたいな」


 ん? 素直に謝る俺となら付き合いたいってことは……。


「……ということは?」

「酷いことされたんだから、これくらいやり返してもバチは当たらないでしょ?」


 そう言って先程同様百合さん譲りのしたり顔で俺を見つめる小咲。


「--そりゃバチは当たんないかもしれねぇけどな⁉︎ 自分がされて嫌なことは人にしちゃダメって親から教わらなかったんですか‼︎」

「そんなまともな話、私のお母さんが教えてくれると思う?」

「思わん‼︎」

「でしょ‼︎」


 百合さんならむしろ人に嫌なことされたらやり返せって教えそうだな。それも倍返しで。


 二年越しとはいえ、親の教えを守ってしっかりやり返してやったってわけだ。


「あー疲れたら甘いもの食べたくなっちゃった。下にチョコ取りに行くけど食べる?」

「もう小咲の家では何も食わんし何も飲まん‼︎」

「そうですよねーっ。まあでも、いつか私のことは食べてもらわないと困るけどね?」

「な、何言ってんだお前⁉︎」


 そう耳元で囁いてから部屋を出ていく小咲を見送りながら、俺は思わずこう言ってしまっていた。


「はぁ……。マンマバンブ……(仕方ねぇな……)。--⁉︎」


 その後一週間程度赤ちゃん言葉が抜け切らなかったが、その程度の代償で小咲と仲直りすることができて、更にはそれより先の関係に進めたのだから今後一生百合さんには感謝しなければならない。


 しかし、それを盾にして俺がこの先の人生で百合さんのおもちゃにされ続けることになったのだけはどうにも納得がいかないのである。

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薬で小さくなった俺がお隣に住む幼馴染に弄ばれる話 穂村大樹(ほむら だいじゅ) @homhom_d

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