第8話 「小さくならずとも」
「なっ、なにしてんのよ‼︎」
そう言って俺の頬を思いっきり叩く小咲。
叩かれて感じた痛みは嘘で告白をして叩かれた際の痛みより何倍も強いものだった。
「ッテ‼︎ お、おま、なにすんだよ‼︎」
「なにすんだよじゃないわよ‼︎ 早く服着てきなさい‼︎」
そして俺は小咲の部屋から廊下へと放り出された。
廊下に出て一番最初に俺の視界に写ったのは再びしたり顔で俺を見つめる百合さんの顔。
俺は慌てて大事な部分を両手で隠す。
「仲直りできたみたいね。よかったじゃない
「いやよくないでしょ。色々とよくないでしょこれ。仲直りとか以前に大きな問題があると思うんですけど?」
「それを言うなら今蒼真くんが全裸なことの方が大きな問題のような気がするけど?」
「そ、それは……」
「ほら、服」
百合さんは俺に向かって上下のジャージを放り投げてきた。
とりあえずお礼を言いながらそそくさと服を着るが、お礼を言ってる意味も分からんよなぁなこれそもそもこうなった原因って百合さんだし。
--いやまさか?
「……百合さん、もしかして最初から俺たちを仲直りさせるつもりで?」
「ただの科学者の気まぐれよ」
言葉数少なく階段を降りていく百合さんの背中は、白衣が階段を降りる勢いでヒラヒラと舞っているせいなのかいつもより大きく見えた。
喧嘩をしていたことは俺たちから百合さんには一言も伝えていないはずなのに、親というものは子供のことならこちらがなにも言わなくったって気付いてしまうものなのだろうか。
方法は褒められたものではないが‥‥感謝するしかないな。
そして再び小咲の部屋へ戻ると、小咲は扉に背を向けて立っている。
「も、もう服着たんでしょうね」
「もう着たから安心してくれ」
小咲は恐る恐るこちらを振り向いた。
「……ママのせいで迷惑かけて悪かったわね」
「俺の方こそ、罰ゲームで告白して悪かった」
今がチャンスだと思った俺は素直に小咲に謝罪をした。
「そ、それはもういいわよ別に」
勢いで罰ゲームでの告白について謝罪ができたので、もうこのまま勢いで自分の気持ちを伝えてしまおう。
「……こんなときに言うことじゃないかもしれないけど、罰ゲームでもなんでもなく俺は小咲のことが好きだ。こんなこと言っても見苦しいだけかもしれないけど、本当に好きだったからこそ罰ゲームでの告白で済ましたくないと思って罰ゲームだったって伝えたんだ。だから俺は本当に小咲のことが好きだ。付き合ってほしい」
今更都合がいいと思われてしまうかもしれないが、俺には正直な想いを伝えることしかできなかった。
「……ごめん。私、罰ゲームで告白をするようなそーくんとは付き合えない」
小咲の返事は当然で理解はしていたものの、実際にそう言われるとダメージは大きく俺は肩を落とした。
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