第5話 「正体の暴露」
目に涙を浮かべていた小咲に赤ちゃんになってしまった俺がしてやれることは何もなかった。
いや、きっと赤ちゃんに変身していなかったとしてもしてやれることはなかっただろう。
「マ、マブブ……(こ、小咲……)」
「ははっ。ごめんね。まだ言葉なんて理解できないのに相談なんかして」
「マブ!!(おい!!) マブブママママ゛!!(俺は蒼真だ!!)マブマブマンマ!!(俺だって小咲と仲直りしてぇよ!!)」
「へへっ。慰めてくれるの? 成那くんは優しいんだね」
今なら嘘でも罰ゲームでなくとも本当の気持ちを伝えられそうなのに、言葉を発することができないのがあまりにももどかしい。
「そーくんもね、罰ゲームで告白する最低野郎ではあるけど本当に優しくて格好いい人なんだよ?」
……俺が格好いい? そんなことを思っていたのか?
というかこれ後から俺だと気付かれたらとんでもなくマズいんじゃねぇか?
頼む小咲‼︎ これ以上恥ずかしいことは言わないでくれ!!
「何事に対してもだるそうな表情も、少しうねってる髪型も、涙袋の下にあるホクロも、もう全部が格好いいんだよね〜」
おい、耳元で恥ずかしいことを連発してんじゃねぇぞ‼︎
てかほくろってなんだよ!? こいつそんなところまで見てたのか!?
「バ、バンマ……(お、おまえ……)」
「ちょっと引いちゃったかな? 成那くんも大きくなったら分かるよ。自然に好きな人のことを目で追っちゃう感覚とか、寝ても覚めても好きな人のことしか考えられなくなるような感覚が」
「ブバ?(好き?)」
今こいつ、俺のことが好きって言ったよな?
ついにとんでもない発言をきいてしまったんだが⁉︎
誰か助けてくれ!! もう赤ちゃんに変身した俺にはこの状況を打開する術はない‼︎
そう願った次の瞬間、小咲の部屋の扉が開く。
「お、仲良さそうにやってるじゃん」
そう言って小咲の部屋に入ってきたのは百合さんだった。
百合さんの表情から察するに、助けてくれるというよりもこの状況をさらに悪化させようとしている気がしてならない。
「赤ちゃんってこんなに可愛いんだね。それに従兄弟ってだけあってどことなくそーくんに似てるし」
「ああ、そりゃそうでしょうね。それ蒼真くんだから」
「……へ?」
予想通り過ぎる百合さんの行動に俺は言葉を失った。
助けに来るどころがどでかい隕石を落とした百合さんは固まる小咲と慌てふためく俺を残してリビングへと戻っていった。
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