第4話 「素直になれない」

 私は幼馴染であるそーくんのことが好きだった。


 それはもうめちゃくちゃに好きだった。


 同じ教室にいれば無限に目で追ってしまうし、近くを横切ればスンッと臭いを嗅ぎたくなる。


 若干変態の域に足を踏み入れていたかもしれない。


 好きになった理由を訊かれれば、優しいとか気が遣えるとか、いくらでも答えることができる。


 とはいえ、正直に言わせてもらえばそーくんを好きになったことに明確な理由はない。


 小さい頃からずっと一緒にいれば理由はなくても好きになってしまうものだ。


『ずっと前から好きだった。付き合ってくれ』


 そう告白をされた瞬間は本当に驚いた。


 (え、私告白されてる?)


 心の中でそう疑ってしまう程、そーくんから告白されたのは予想外だった。

 そーくんは私のことをただの幼馴染としか思っておらず、今後私たちの関係が幼馴染以上に変化していくには私の方から行動を起こすしかないと思っていたからだ。


 驚きはしたもののそーくんが私と同じ感情を抱いていたことに強い喜びを感じていたので、その告白がイタズラだったり罰ゲームだなんて考えは思い浮かんでおらず告白を受け入れるつもりだった。


『私も……』

『ご、ごめん‼︎ これ実は罰ゲームで……』

 

 告白に対する返事をしようとした矢先、この告白が罰ゲームだったと告げられ今何が起こっているのかということは一瞬で把握できた。


 その場のノリにすぐ乗ってしまうお調子者のそーくんなので、告白を賭けたジャンケンに負けでもしてしまったのだろう。


 これまではそーくんが何をしでかしても怒ったことは一度もなかったが、今回ばかりはそうはいかなかった。

 そーくんが罰ゲームで私に告白するような人だとは思っていなかったからだ。


 仮に罰ゲームだったのだとしても、事前にこっそり私に今から罰ゲームで告白しないといけないと伝えておくとか何かしら対策はとれたはずだ。

 理想を述べるとするならば、私のことを考えて無理やりにでもその罰ゲームを放棄してほしかった。


 裏切られたと感じた私はそーくんの頬を叩いてその場を立ち去ってしまった。

 そしてそのまま私たちの関係は悪化していってしまった。


 あの事件以来一年が経過しても私たちの関係は元に戻っていない。


 しかし、私はそーくんと昔のような関係に戻りたいと思っている。

 とはいえ、一度冷たい態度をとってしまったがために昔のような立ち振る舞いで話すことはできず、そーくんが何度か謝罪をしようとしてきた場面でも私はそれを許さず突き放してしまっていた。


 本当は元の関係に戻りたいのに感情が言うことを聞いてくれず、そーくんとの関係が悪化してしまった状態で過ごしてきた一年間は非常に苦しいものだった。


 そーくんと仲直りするには私がそーくんを許すしかない。

 もっと早くあの嘘の告白を、まあ罰ゲームってこともあるよね、と軽く受け流していれば私たちの関係がここまで悪化することはなかったはずなのに……。


 今更私がそーくんに寄り添ったとしても、そーくんの方が私に呆れてしまって取り合ってくれないかもしれないけど、できるだけ早いうちにそーくんと仲直りをしたい。


 何かいい方法はないものだろうか……。

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