第99話 三葉とデート
「今週は私の番ですよ!」
そう言いながら三葉が俺の部屋の扉を豪快に開ける。俺は思わず飛び起きて言った。
「なんだっ!?って三葉か。まだ朝だぞ?そんな焦るなよ」
「えーっ!?だってワクワクしすぎて眠れなかったんですよ!」
「だから何だよ」
俺がそう言うと三葉は俺の布団を引っ剥がして言った。
「だから早く行きましょう!」
こうなってしまえば俺が何を言っても無駄だろう。俺は観念して言う。
「はあ、分かったよ。けどまずその前に準備させてくれ」
「はーい!」
・・・・・・
「今週もここか・・・」
そう言いながら俺は先週も来たショッピングセンターを見上げる。そんな俺の反応に気づいてか、三葉が俺に声をかける。
「どうしましたカナタ君?テンション低くないですか?」
「まあ、先週も来たからな・・・」
すると三葉は不思議そうな顔をしながら言った。
「あれ?カナタ君、双葉から聞いてないんですか?」
「何をだ?」
「私達のデート場所はここで固定って決めてるんですよ」
「はっ!?じゃ、じゃあ来週も・・・?」
「はいっ!来週は和葉とここを楽しんでください!」
「そ、そっかぁ・・・楽しみだなぁ・・・」
何が悔しくてここに頻繁に来なきゃならないんだ・・・
「あっ!もうこんな時間です!」
そう三葉が慌てながら言った。
「ん?何か予約でもしてるか?」
「見ようと思ってた映画の上映開始まであと10分なんです!ホラッ!カナタ君早く行きましょう!」
俺は三葉に手を取られながら中へと入っていった。
・・・・・・
「はいっ!カナタ君、これチケットです!」
映画館に着いてすぐに、入場券を買いに行った三葉は俺に入場券を渡してきた。
「これは、恋愛ものか?」
「ご存知ですか!この映画、泣けるって有名なんですよ!」
俺は思ったことを口にする。
「それはそれでいいけど、1番驚いたのはお前がこういうの見ることだな」
すると三葉は顔を膨らませて言った。
「何ですか?私だってこういうしっとりした作品も見るんですよ!」
「ハハハッ!そんな顔するなよ!ホラっ!そろそろ入んないと始まっちまうぞ」
「あっ!カナタ君待ってくださーい!」
・・・・・・
(とは言ったものの、俺こういうの見ないんだよなぁ。楽しめるんだろうか?あっ、始まる)
そして映画が始まって少しして、俺はやはりこの映画との相性の悪さを感じていた。
(飽きてきたな・・・三葉は楽しめてるのか?)
そう思って横を見ると、三葉が目を輝かせながら映画に見入っていた。
(こいつの観察でもしてるか・・・)
すると三葉は、ギャグ寄りのシーンでは笑いを堪えて、修羅場のシーンではハラハラした表情をし、悲しいシーンでは涙を流していた。
(これは・・・飽きないな)
そんなこんなで映画が終わり、俺は席を立ち背伸びをする。
「んぅー!終わったなー!」
すると横から三葉が声をかけてきた。
「ガナダぐぅーーん!」
そう言われて三つ葉の方を向くと、三葉は涙をダラダラに流していた。
「うわっ!?どうしたんだよ三葉!」
「がんどうじでぇー!ずごい良がったでず!」
「分かった!分かったからこれで涙拭けよ」
「ありがどうございまずぅー!」
まっ、映画はつまんなかったけど、意外と楽しい時間だったな。
・・・・・・
「うわー!見てくださいカナタ君!綺麗なのがたくさんありますよ!」
三葉は、先週俺が双葉と訪れた店の中に入ると開口一番にそう言った。
「そうだな、三葉は何買うのか決まってるのか?」
「うーん、まだ悩んでるんですけど・・・あっこれなんかどうですか?」
そう言った三葉が手に取ったのは、緑のクローバーのついたネックレスだった。俺は三葉に思ったことを口にする。
「それは、確かにいいが双葉がもうネックレス買ったから別の方がいいんじゃないか?」
すると三葉は真面目な顔をして言った。
「それでもいいの。むしろそのほうがいいんです。だって、当日つけるのは1つだけ。だったら同じ所につけるものなら2人とか3人を同時に選べませんから」
俺はその三葉の顔と声につい飲まれてしまった。しかし、三葉はすぐに元の表情に戻って言った。
「だから1番可愛いこれにしましょう!」
「お、おう」
そして、帰り道の途中、俺は考えていた。2週間後には俺の心中を伝えるということ。そして3姉妹の気持ちの大きさを。
そんなことを考えているうちにも時間は刻一刻と過ぎていっていた。
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