第95話 お前ら3人と
『もういいわよ!』
その双葉の言葉が俺の頭にこびりついていた。あの双葉の言葉は、あまりにも正論で何も言い返せなかった。けれど俺だって悪意で今回の提案をした訳じゃ無い。もう決まったなら、そのままズルズル引っ張るのも良く無いと思って、かつ直近のイベントが夏祭りだった。ただ、それだけだった・・・
俺は、間違ってしまったのか?そんな疑念や後悔も双葉の言葉に取り巻くように渦巻いている。
「・・・タ君?カナタ君!」
「ハッッ!?」
三葉の呼びかけに俺の思考は目の前の現実に引き戻される。それと同時に、自分の呼吸がひどく乱れていることに気が付いた。すると三葉は優しい声で言った。
「カナタ君、大丈夫ですか?まずはこれで涙拭いて下さい」
その言葉に、俺は初めて自分が涙をこぼしていることに気づいた。気恥ずかしくなった俺は冷静を装って三葉の差し出すハンカチを手に取って言う。
「すまん、ちょっと取り乱した」
俺がそう言うと、三葉は優しく抱きついて宥めるように話し始める。
「大丈夫ですよカナタ君、カナタ君だけが悪いんじゃ無いんです。双葉だって、今はカナタ君にごめんなさいって思いがあるはずです」
その言葉に、頭の中で渦巻いていた辛さが水風船が割れるように涙と共に溢れてしまった。
「俺は、俺は間違ったのかなあ・・・俺は、俺はただ和葉と双葉と三葉、お前ら3人と仲良くいたいだけなんだよ・・・!」
俺は、涙が止まるまで弱音を吐き続けた、三葉はただ頷きながら聞いていた・・・
・・・・・・
「カナタ君、もう大丈夫ですか!?」
目を泣き腫らした俺に三葉がそう声をかける。
「おう、ごめん三葉。迷惑かけて」
「もう!それは大丈夫って言ってるじゃないですか!」
「でもなぁ・・・」
俺がそう言って下を向くと、三葉は俺のアゴをクイとあげて言った。
「もう弱音は無しです!じゃないと告白の時に振られちゃうかもしれませんよ?」
「それも・・・そうだよな」
「そうです!だからホラッ!元気出しましょうよ!」
そう言いながら三葉はもう一度俺の手を取ってニコリと笑いかける。
しかし、今の俺にはまだ不安なことが1つあった。
「双葉、大丈夫なんだろうか・・・」
すると三葉は声高らかに言った。
「はいっ!双葉は絶対大丈夫です!きっと戻ってきます」
いつになく自信のある三葉に俺はその理由を聞こうとした。けれどそうしようとしたのも束の間、三葉は言葉を続ける。
「だって、双葉はあんな理由で怒るような人じゃありません。和葉だってそのことを分かってる上で双葉を追ってるはずです。それに、」
「2人とも私の頼れるお姉ちゃんですから!」
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