第93話 ちょっと出かけよっか♪

 球技大会が終わって自由が約束された日曜日。俺は携帯の目覚ましで目を覚ます。何でこんな日に目覚ましをつけてしまうんだ・・・あれば携帯のある方向に手を伸ばす。すると、途中で何やら柔らかな感触を覚えた。何だと思い目を開けると・・・


「げっ!?和葉!何でここにいんだよ!?」


 和葉がいた。俺が飛び起きると和葉は待ってましたと言わんばかりに言った。


「おはようカナタ君♪やっと起きたね♪」


「やっと起きたね♪じゃねぇよ!何でここにいるか聞いてんだよ!」


 すると和葉はうーん、と何か考えるフリをして言った。


「実はね、今日はカナタ君と一緒に出掛けようと思うんだ♪」


「却下、俺は寝る」


「あーっ!カナタ君!寝ないでよ!」


 そう言いながら二度寝しようとしている俺に覆い被さってくる。


「おい、重いぞ和葉」


「ひどーい♪カナタ君ってそんなデリカシー無いんだー♪」


 ていうか色々触れちゃってるんですけど!?これじゃあ寝るに寝られない。俺は和葉に押し潰されながら言う。


「分かったよ!出掛けるから退いてくれ!」


 すると和葉は俺に跨ったまま言った。


「やった♪それじゃ早く準備して行こうよ♪」


 ・・・・・・


「で?どこに行くんだ」


「うーん、適当?」


 この女に計画性の3文字は無いのか?


「じゃっ、適当に近くをブラつこうぜ」


「もっとオシャレなデートにしたいんだけど、それでいっか♪」


 ・・・・・・


「久しぶりに来たね♪」


「あの時以来だな」


 そう言いながら俺たちが来たのは西園寺さんの件のときに来ていた近くの神社だ。そして初めて三葉に会い、三姉妹に会うきっかけになった神社だ。


「あの時のカナタ君、相当参ってたよね♪」


「うっ・・・その件はホントにお世話になりました・・・」


「アハハっ!でもあの時のカナタ君の気持ち、嬉しかったよ♪」


「カッコ悪かったけどな」


 すると不意に和葉が俺の手をとってしみじみと言った。


「あの時の手の傷、良くなって来たね・・・」


「お、おう。お陰様でな」


「あれからもう3ヶ月経つんだね」


「そうか、もうそんなに経つんだな」


「今では西園寺さんとは仲良しだもんね♪」


「まあ、あの人も悪い人じゃ無いからな」


 俺がそう言うと和葉はニヨニヨ笑いながら言った。


「もしかしてカナタ君、琴音ちゃんにお熱?」


 その言葉に俺は思わず鼻で笑ってしまった。


「そんな訳無いだろ?俺はお前ら3人から選ぶに決まってるだろ?それに・・・」


「それに?」


 俺は咄嗟に口を抑えたが聞かれてたか・・・でも言うなら今が1番か。俺は1つ息を吐いて言った。


「俺、学校祭の時に誰か伝えるって言っただろ?」


「うん、そうだね♪」


「だけどあれ、夏祭りに前倒しにしようと思ってるんだ」


「えっ、それって・・・もう誰にするか決まったって事・・・だよね?」


 流石和葉だ、ズバリ言ってきたな。


「まあ、そう言うことだな」


 すると和葉がズバリ言ってきた。


「それって・・・誰か聞いてもいいのかな♪」


「お前、案外ずぶとい所あるよな」


「ひっどーい♪女の子に太いだなんて♪」


 コイツ、大して傷ついても無いくせに・・・でもまあ、コイツなら言っても言わないと思うけどそれでもなぁ・・・


 ジーーーーーッ♪


 コイツの瞳、こんな輝かせやがって・・・ここは一つ、和葉を信頼してやるか。


「分かったよ、だから早いとこ耳貸せよ」


「やったー♪だれだれ?」


 そして俺は和葉にそれが誰かを伝える。


「・・・うん、そっか。ありがと♪カナタ君」


 そうして俺たちは家へと戻った。

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