第87話 はるやちゅみ!
「春休みだよみんな!!」
期末試験が終わって一夜経ち、リビングに全員がいるタイミングで唐突に三葉が声を上げた。また何か始まったなと心の中でため息をついて俺は答える。
「また随分と急だな?」
「だって無事に春休みを迎えられるんですよ!」
確かに今回の期末テストは俺、和葉、双葉の力で追試を免れることが出来た。
(だからこんな変にテンションが高いんだな)
なんて思っていると急に双葉が三葉を攻撃し始めた。
「普通に勉強してたら大体の人は無事に春休みを迎えられるのよ?」
「むー、双葉ぁ〜酷いよー!」
そう言いながら三葉が双葉に抱きついた。双葉は鬱陶しそうに答える。
「コラっ!抱きつくな!」
「だって誰かが酷いこと言うもーん」
「もー、何なのよぉー!!」
心の中で双葉に合掌をしていると、和葉が後ろから俺に抱きついてきた。
「お前はどうしたんだよ?」
「んー?カナタ君が1人で寂しそうだったからさ♪」
「何を言うかと思えば・・・俺があの酔っ払いみたいな奴に絡まれたい願望があるとでも?」
すると和葉は不思議そうな顔をして言った。
「カナタ君が実は寂しがり屋さんなの知ってるからそんなに強がらなくていいのに♪」
そう言って俺の耳に息を吹きかける。
「ひうっ!?」
思わずそう声が出てしまった。すると視界の後ろにいる和葉がプルプルと小刻みに震えながら言った。
「ひ、ひうっ、だって・・・」プルプル
「し、仕方ないだろ!咄嗟に出ちまったんだから!」
「ねえ!もう一回やっていいかな♪」
「ダメに決まってるだろ!?」
なんて、じゃれあっていると三葉が俺たちに照準を合わせてきた。
「あっ!2人共何楽しそうなことしてるの!?」
「そうよ!和葉も抜け駆けは許されないんだからね!」
訂正。照準を合わせてきたのは三葉だけではなく双葉もだった。
「だってカナタ君、耳に息吹きかけたら『ひうっ!』って可愛い声出すんだもん♪」
すると2人は俺に好奇の目を向けてきた。
「えっ!そうなの!?じゃあ私、脇くすぐってみよっかな!」
「あっ!ずるいわよ三葉!それなら私は足の裏やってみるわ!」
ヤバイと咄嗟に感じ席を外そうとするとガシッと和葉が俺の体を掴み動きを封じてきた。
「おいっ!和葉!何やってるんだよ!?」
「まあまあ、カナタ君落ち着いて♪」
「落ち着いた上で抵抗してるんだよ!」
そう言っても和葉は一向に俺の体を離さない。そして双葉と三葉はジリジリと俺に近づいて来ている。そして和葉が一言、
「それじゃあ2人とも、かかれー♪」
「やめろお前ら!やめろぉーー・・・!」
・・・・・・・
「はーっ、はーっ・・・お前ら・・・もう辞めてくれないか。死んでしまう・・・」
「でも楽しかったわね2人共!」
「「ねー!!」」
そう言いながら3人共俺から離れた。そして三葉が思い出したように言った。
「そういえば!私が天井高いのにはテスト結果とは別に理由があるんです!」
「ほう、一体それは何なんだ?」
すると三葉はどこか誇らしげに言った。
「お母さんが何か旅行券手に入れたみたいで、私たちとお母さんで旅行に行くからです!」
一瞬時間が止まり、そして俺たちは互いに目を見合わせて言った。
「「「えーーーーー!!!!」」」
次回!2度目の旅行編!
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