第85話 恋愛相談
それは、不意に訪れた。
ピンポーン
春の陽射しにうたた寝をしていた俺は、突然のインターホンに思わず飛び上がった。
「何だっ・・・!?インターホンか。何かAmazonで頼んでたか?」
すると、それに和葉が答える。
「何も頼んで無いよ♪私のお客さんが来たんだよ♪」
「そうか、だったら俺は自分の部屋に・・・」
「待って!!」
何だ何だ!?突然の大声に俺は思わず和葉の方を凝視する。
「カナタ君の意見も聞きたいからここにいて?お願い♪」
「そ、そうか。分かったよ」
そして、俺が再び席に座ると和葉は、よろしい。と一言言って玄関へと向かった。
・・・・・・・
件の来訪者の正体は意外な人物だった。
「しんとう・・・さん?」
「そうよ。それよりスガワラ君もいたのね」
その正体は、俺と和葉が担当した文化祭実行委員会の副委員長である心頭冷だった。
「ええ、一応ここは僕の家ですから」
「そうなの、ということはスガワラ君と和葉さんは同棲しているのかしら?」
「はいっ♪でも私とカナタ君の二人暮らしって訳じゃなくて、妹2人もここに住んでるんですよ♪」
「そう・・・最近の子は進んでるのね」
何だかあらぬ誤解を受けているような気がするが・・・とにかく今は話を進めよう。
「と、とにかく!先輩は何の用事でここに?」
「そ、それは・・・」
そう言って先輩は体をモジモジとさせる。他人に言えないような事なのか?
すると、突然和葉が俺に手を合わせてきて言った。
「お願い!私たちにお菓子の作り方教えて!」
「・・・へ?」
お菓子?確かに作れないことはないが・・・あまりにも突然だ。
「私からもお願いするわ」
先輩までっ!?恐らくただ遊びで頼まれてる訳ではなさそうだ。でもとりあえず・・・
「詳しい理由聞いてもいいですか?」
・・・・・・・
「つまり、バレンタインデーに向けてのお菓子作りの先生になってほしい・・・と」
「そうなんだよ♪だからお願いできる?」
色々言いたいことはあるが、まずは真っ当な質問をする。
「お菓子に関しては、俺よりも双葉や三葉の方が上手いと思うぞ?」
すると和葉は僅かに肩を落とし答えた。
「それが・・・双葉も三葉も、ライバルには教えてあげないって」
「そ、そうなのか・・・ていうか、だとしたら俺に聞くのはどうなんだ?」
「それは・・・」
「それは?」
「それは・・・それ、これはこれ」
つまり、何も考えてないのか。
「ま、まあ和葉に関しては一旦置いておくとして、何で心頭さんまで?」
「それは、チョコを渡したい人がいるのよ」
俺はその言葉に失礼ながら驚いてしまった。まさかあの冷徹そうな心頭さんに意中の相手がいるなんて。
「へー!意外ですね!ちなみその相手って誰か教えてくれますか?」
「そ、それはちょっと・・・」
そう言うと先輩は顔を真っ赤にして下の向いてしまった。すると和葉が俺に近づいて耳打ちをしてきた。
「心頭さんの好きな人なんだけど、熱井さんらしいんだよね♪」
俺はその言葉に意外にも驚きを覚えなかった。というのも、文化祭の準備期間も含め、あの2人は基本的にいつも一緒にいたからだ。
しかしまあ、恋する乙女2人のお願いを門前払いにはできないだろう。俺は2人に声をかける。
「分かりました!俺で良ければ手伝いますよ!」
すると2人の顔がパァッと明るくなった。
「それじゃあ、早速作りたいんですが・・・材料は買ってきたんですか?」
俺がそう言うと2人の顔は一転してドヨンとしてしまった。
「あっ・・・えっと、じゃあ。材料買いに行きましょうか」
この2人、大丈夫だろうか?
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