第75話 ついに明日からか
「そういえば、カナタ君。今日肝試し係の集まりが放課後にあるからよろしく頼むよ」
「あっ、今日だったか。分かったよ」
そして放課後、俺は委員長に言われた教室に入った。すると、
「あっ、カナタじゃない!」
双葉の姿があった。俺は双葉の隣の席に腰掛ける。
「お前も肝試しの係だったんだな、料理得意だしやらないと思ってたが」
「そうね、料理は得意なんだけど・・・」
「けど?」
「班の子たちが料理下手すぎて現地にいると胃に穴が開くと思ったから」
「そうか、なんか・・・災難だったな」
「そういうカナタだって料理できるのに何でこの役受けたのよ」
「それは単純に楽な方を選んだだけだ」
「アンタはそういう奴だったわよね」
とかなんとか話していると学級主任の先生が肝試しの説明を始めた。
「えー、今年の肝試しは散策路を回るんですがそのうちの三箇所、つまり2人1組で生徒と先生を驚かしてもらいます」
「なのでまずは2人組を作ってください」
先生がそう言うと教室にいる生徒が各々組を作り始めた。そして俺は案の定・・・
「アンタは私と組むわよね?」
双葉と組むことになった。
その後、淡々と説明が行われ、予定よりも早く集まりは終了となった。
双葉と一緒に帰っていると双葉がとある提案をする。
「せっかくだし、学校から支給される奴以外に何か驚かせる道具買いましょうよ!」
確かに先生からは個人を道具を持って来てもいいと言われているが・・・
「なんかテンション高くないか?」
「そんなことないわよ!ただ高揚感で溢れてるだけ」
それをテンションが高いって言うんだよ。
「そうかよ、まあ買いに行くか。時間もあるしな」
そして俺たちは激安の殿堂にやって来た。
「わあ!私ここ来るの初めてなのよ!」
そう、目を輝かせて言った。どおりでテンションが高い訳だ。
「昂っているのは構わないけど迷子になるなよ」
「分かってるわよ!それじゃ早速行くわよ!」
「そっちじゃないぞー」
・・・・・・・
「ねえカナタ!これ使いたくない!?」
「そういうあからさまなのは逆に安心させるだけだから辞めとけ」
「何よ、じゃあカナタは何かアイデアあるのかしら?」
「やっぱりリアリティだな。非現実的なものほど作り物感が出る」
「なんだか知ってるような口振りね」
「まあ、現実の恐怖はこの前体験したばかりだから・・・」
「そうだったわね・・・」
「じゃ、じゃあ血糊を使って私達が直接出るのはどうかしら?」
「その方が俺は好みだな」
これ買って終わりだな・・・そう思っていたが甘かった
「この安物の和服着たらさらにびっくりするんじゃないかしら!?」
この女もあの姉妹、あの家族の一員なのだ。こうなるともう止まらない。
「でも白い方が良いわよね?ちょっと店員さんに聞いてみるわ!」
「ふ、双葉さーん?」
「良かったわね!白いのもあるみたいよ!」
俺はその良し悪しについて何も言ってないですけどね・・・
「他にも何かできることあるかしら?あっ!着物着てても寒くないように厚手の上着も必要よね」
これは・・・しっかり止めないと大変なことになりそうだ。
「おい!双葉!」
「へ?な、何かしら?」
「落ち着いて」
その言葉に冷静さを取り戻したのか双葉は顔を真っ赤にして言った。
「そ、そうね。ちょっと周りが見えて無かったわ」
「で?その和服は買うのか?」
「辞めておきます・・・」
結局俺たちは血糊だけを購入して帰路についた。
「やっぱり日が沈むと寒いわね」
そう言って双葉は両手をさすさすと摩る。
「今日は手袋持ってないのか?」
「そ、そうなのよ!家に忘れて来ちゃって」
「そうか、俺の今日は手袋を家に置いて来ちまったからな・・・」
すると双葉はしれっと俺の手を握ってきた。
「だったら、こうするしか無いわよね!」
「無いわけでは無いと思うが・・・」
「無いわよ!きっと無いわ!」
「ホントは?」
「・・・好きな人と手が繋ぎたいだけです」
「でも何か文句ある!?私はアンタが好きなのよ!だからこういうことしたいの!文句あるかしら!?」
清々しいまでの開き直りだ。その必死さに俺は思わず吹き出してしまった。
「な、何よお・・・」
「いや、あまりにも必死だったからさ。いいぜこのまま帰ろう」
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