第71話 事は思ったより
「えー!何で快諾しちゃったんですか!?」
「そんな噂知らなかったんだよ!」
あの後、俺たちは三葉を含めて会議を行なっていた。議題は・・・
「まさかあの琴音がカナタに告白するなんて思わなかったわ・・・」
そう、西園寺琴音の間接的な告白と俺がそれに気づかず容認してしまった事だ。前者はともかく、後者は圧倒的に俺の非なのだが・・・
「それでさ、カナタ君は西園寺さんと付き合いたいの?」
まあそれが一番大事な所だよな。俺は正直に答える。
「正直言って真っ直ぐの告白だったらハッキリと断る予定だった」
「そうなんですね、でも琴音ちゃんって女の子の私から見ても可愛いので勿体無いように感じます」
「それは・・・単純にお前らの方が可愛いから問題ねえよ」
すると途端に三人の動きが覚束なくなった。
「ア、アンタねぇ!そう言うところよ!」
「ほ、ホントだよねえ!全く、カナタ君は魔性な男だよ♪」
「うんうん!魔性だよ魔性!」
三葉、魔性の意味を分かって言ってるんだろうか?
「まあ、とにかく明日本人に言ってみるよ」
「そうね!それが一番確実よね!」
「じゃあそういう事で、おやすみ」
しかし、事はそう簡単に終わる出来事ではなかった。
「おいっ!カナタお前!西園寺さんと付き合ったのか!?」
俺が教室に入るや否や高橋が鼓膜を破らん勢いで聞いてきた。俺が驚き高橋から目線を外すと周りが好奇の目線で見ている事が分かった。
「どうしたんだよいきなり?」
「どうしたもこうしたもねえよ!今や学校中この話で持ちきりだぜ!?」
俺はこの話を他人に公言していない。となると西園寺さんが他の人に話したのだろう・・・困ったな、どうしようか。
「やあ、カナタ君。朝から君の話で持ちきりだが・・・大丈夫そうかい?」
流石委員長だ、周りに流されない。となると誤解も解きやすいだろう。
「ちょっと二人とも来てくれないか?」
「お、おう」 「ええ、いいですよ」
・・・・・・・
「告白だと気づかずに・・・」
「OKしたぁ!?」
「そうなんだ、だからOKを取り消したいんだけど・・・」
「これだけ話が広がってると断りづらいって事ですね」
「ああ・・・」
「だとしたら早い方がいいですね、今は噂なのか事実なのかあやふやな状態なので」
「そうだな、今日の放課後にでも本人に伝えるよ」
「そうか!頑張れよ!」
・・・・・・・
「カナタ君・・・こんな所に呼び出してどうしたの?」
放課後、俺は西園寺さんを屋上前に呼び出した。
「西園寺さん、今日は言いたい事があって呼んだんだ」
「はっ!はい!」
「実は俺、キャンプファイヤーの噂知らなくてOKしちゃって、だから昨日の話無かったことにできないかな?」
すると西園寺さんは俯いてブツブツと何やら呟き始めた。俺はその声に耳を澄ました。すると
「どうしてどうしてどうしてどうして」ブツブツ
えっ、何かめっちゃ怖い。しばらくすると西園寺さんはユラリと俺のことを見上げて言った。
「どうしてそんな事言うんですか?私はこんなに愛しているんですよ?」
そう言う西園寺さんのトーンは普段より2つ3つ下がっていた。怖い、めっちゃ怖い。
だけどここで日和ってはダメだ!俺は正直に答える。
「どうしても何も俺は好きだなんt・・・」
ドンッ!
「ひっ・・・!?」
「そんな事言わないでください・・・私は貴方を狂えるほどに愛しているんです。それじゃダメなんですか?」
すると西園寺さんはスッと裾から何かを取り出した。カッターだろうか?でもまさか人にカッター突きつけたりは・・・
ガンッ!!
めっちゃ使ってきた!?いや、直接俺には刺してないけど、あと5センチ横だったら俺死んでるよ!?
「カナタ君、アタシのこと・・・愛してくれますよね?」
「い、いやだから俺は・・・」
「アイシテクレマスヨネ?」
西園寺さんはそう言うとカッターを俺の首元に突きつけてきた。この人、他人に刃物を向ける躊躇がない!小学校で習うじゃん!?他人に向けるなって!小学校違うから分かんないけど!でも多分習うじゃん!?
俺はあまりの恐怖に過呼吸になりながら答える。
「ハァ・・・ハァ・・・はい・・・」
「やった!ありがとうございます!カナタ君!これからもよろしくお願いしますね」
そして西園寺さんは階段をご機嫌に下って行った。一方俺はヘタリとその場に座り込んだ。
「これは思ったより・・・ヤバイな・・・」
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