第57話 ケーキ論争
「ケーキ買うのはここで良いわよね?」
そう言うと双葉はとあるケーキ屋の前で立ち止まった。
「こんな所にケーキ屋なんてあったんだな。普段意識してなくて気づかなかったな」
すると双葉はムスッとした顔で言った。
「何よ、普通に生きてたら気づくでしょ?ねえ2人とも!」
「えっ!あー、うん。そうかな♪」
「そうかな?私は気づいてたよ!」
2人がそう言うと双葉がドヤ顔で言った。
「ほら見なさいよ!これでアンタの呑気っぷりが露呈したわね!」
さいですか、俺は話題の軌道修正を図る。
「分かったよ、それよりサッサとケーキ買いにくぞ」
俺がそう言うと双葉は そうね と言って店の扉を開けた。店の中はクリスマスの稼ぎ時にしてはなんだか寂しい人の入りだった。
店の奥には女性の店員がいた。その店員は俺たちの方を見ると
「あら〜、双葉ちゃんじゃない!また来てくれたの〜?」
と言い、双葉の元へと近づいて来た。しかし、途中で足を止めて言った。
「あら!?双葉ちゃんが3人!?どういうことかしら?そしてあなたは・・・?」
「あっ、どうも。双葉の友人のカナタです。双葉いつもここ来てるんですか?」
「そうね〜、いつもって程じゃないけど週に一回は来てくれるわよ。ほらウチって見てわかると思うけどガラガラだから双葉ちゃんみたいな可愛いお得意様は覚えちゃうのよ」
「そんな、可愛いなんて・・・そんなことないですよー!」
「そうだな、そんなことないな」
すると双葉が俺の方を泣くかも黙る表情でこちらを睨んだ。俺はすぐさま口を閉じる。双葉は表情を元に戻すと朗らかに言った。
「紹介しますね!こっちが長女の和葉でこっちが三女の三葉です!」
「あらそうなの〜、よろしくね?それより何のようかしら?とは言ってもケーキ屋だからケーキを買いに来たと思うけれど」ウフフ
「はいっ!そうなんです!ママにケーキ買って来てって言われたので」
「そう!それじゃ好きなの買ってってね」
そう言うと店員は奥へと戻っていった。
俺たちはケーキの飾られているショーケースを覗く。すると俺の隣の三葉が感嘆の声を上げる。
「うわー!たくさん種類ありますね!」
「そうだな、思ったより色々あるな」
「これだけあると迷っちゃいますね!」
三葉が頭を左右に揺らしながら悩んでいると和葉がやってきた。
「2人はもう決まったの?」
「いや、俺はまだ決まってない。三葉は、見ての通りだ」
「となるとまだ時間かかりそうだね♪」
「そういう和葉は何にするか決まったのか?」
「うん♪だって前から決めてたもん♪」
「そうなのか、俺はアレにするか」
「おっ♪きまったの?何々?」
「このチーズケーキにすることにした」
すると和葉は目を丸くして言った。
「ホントにッ!?私もそれしようと思ってたんだ♪やっぱり一周回ってこういうシンプルなのが良いよね♪」
和葉がそう言うと三葉がこちらを向いて言った。
「えー!?やっぱり色々乗ってた方が良いに決まってるよ!」
その言葉に双葉が乗っかる。
「そうよそうよ!せっかくのケーキなのにシンプルなんて勿体無いじゃない!」
それに和葉は飄々と反論する。
「分かってないなー、2人とも♪素材を楽しむんだよこういうのは♪」
「分かってないって、アンタより私の方がケーキたくさん食べてますけど!?」
「そうだー!やっちゃえ双葉!」
「三葉もなんか言ってやんなさいよ!」
三葉は面を喰らったもののどうにか言葉を口にする。
「えっと色々あった方がたくさん楽しめる!」
「別にたくさん楽しみ方があるから偉いわけじゃないでしょ?」
ダメだこれは・・・このまま野放しにしたら永遠とやり続けるだろう。俺は割り込んで話を切ろうとする。
「まあまあ、3人とも一旦落ち着いて・・・」
「「「カナタ(君)は黙ってて!!」」」
「あっ、はい・・・」
もうダメだ、こうなってしまっては俺の力では止められない。時間か超常的な何かが起こらない限り止まらないだろう。南無
しばらくこの不毛なやり取りは続いたが終わりは不意にやってきた。
「双葉ちゃんたち〜」
「あっ、はいなんですか?」
「ここ一応お店だから・・・静かにね」
この言葉に3人はハッとしたのかほぼ同時に言った。
「「「すいませんでした!!」」」
ありがとう!店員のお姉さん!
結局その後、俺と和葉がチーズケーキ、双葉がフルーツタルト、三葉がショートケーキを買って真菜さんの家へと向かった。
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