第56話 クリスマスを三姉妹と
「ふうー、眠いな・・・」
結局あの後、俺たちは家で双葉と三葉と共に晩飯を食べ、その後色々とわちゃわちゃと深夜まで遊んでいた。そのせいもあって今俺は、いささか睡眠不足気味だった。
「せっかくだし、もうちょっと寝るか・・・」
そう言って再び俺が布団に潜り込むとほぼ同時に部屋を扉が開いた。
「カナタ!さっさと起きなさいよ!せっかくのクリスマスの日にぐうたらと寝てるんじゃないわよ!」
和葉はそう言うと俺の元へずかずかとやって来て俺の布団を引っぺがす。
「さみっ!何してんだよ双葉!人がせっかく」
「せっかく・・・なんですって?」ゴゴゴゴゴ
「あっ、起きます。すいませんした・・・」
「分かればいいのよ」
そう言うと双葉はフンッと鼻を鳴らすと部屋を出た。
あれは重たい腰をどうにか起こしリビングへと向かう。その途中、和葉の部屋から双葉の怒鳴り声が聞こえてきた。やっぱりアイツもまだ寝てたか・・・
俺がリビングへ到着すると既に料理が並んでいた。見ると今日のメニューはいつもよりも洋風だった。
黙ってそれを見ていると三葉が俺に話しかけてきた。
「おはようございます!カナタ君!メリークリスマスです!」
「おう、メリークリスマス。にしても今日の朝飯、なんか洋風っぽい?」
俺がそう言うと三葉は目をキラキラと輝かせて言った。
「あっ!分かりますか!?そうなんです!せっかくのクリスマスなのでご飯もクリスマス仕様にしようと思って!」
「そうか・・・にしても三葉はホントに料理が上手いな、なんでも作れるんじゃないか?」
すると三葉は手と首を振って全力で否定して言った。
「いやいやいやいや!全然そんなことないですよ!作れない料理も沢山ありますし・・・」
「へー?例えば?」
そう言うと三葉は首を傾げて言った。
「それは・・・うーん、何ですかね?」
「無いなら無いって言っとけ」
「そうですね、基本的には何でも作れますね」
なんて話していると和葉が眠たそうにやって来た。
「ふあぁ・・・おはよー2人とも〜」ポヤポヤ
「おはよう!和葉!メリークリスマス!」
「そっかあ・・・今日がクリスマスだもんね〜メリクリメリクリ〜」
すると後ろから双葉がやって来て和葉の背中を叩きながら言った。
「和葉!いつまでそんなに眠たそうなのよ!もっとシャキッとしなさいよ!」
「はーい・・・」
・・・・・・・
俺たちは朝食を食べ終え、しばしの空き時間が出来た。三姉妹の実家、もとい真菜さんの家へは18時に訪れる事になっている。
俺は双葉に改めて質問をする。
「なあ双葉、何か真菜さんの家に行く時に必要な物って無かったよな?」
すると双葉が何かを気づいた感じで答える。
「あっその事なんだけど、なんかママ、ケーキ作る材料買うの忘れちゃってたらしくて行く途中でケーキ買って来て欲しいって言ってたわ、後ついでに欲しいものがあれば適当にって」
「そうか、じゃあ道すがらのケーキ屋さんでそれぞれ食べたいの買って行くか、他のは適当にスーパーとか寄って考えるか」
俺がそう言うと和葉が脚をプラプラさせながらしみじみと言った。
「ケーキかあ・・・最近食べてないなあ、何買おっかなー♪」
「あっ!そういえば私もケーキしばらく食べてません!・・・ていうか、ケーキってスイーツの中でも上の存在な気がして何となく手が出ないんですよね」
「確かにな、誕生日とか、それこそクリスマスとかそういう特別な行事の時に食べるイメージがあるな」
すると和葉がニヤニヤしながら言った。
「でも約1名そうでも無い人がいそうですよ?ねえ、双葉さん?」
双葉は急に自分に矢面が立って驚いたのかしどろもどろになりながら答える。
「えっ!?あ、まあ、そうね・・・」
「そうだったのか、ケーキ好きなのか?」
「ふぇっ!?そうね、人よりは好きよ」
すると三葉が屈託のない表情で言った。
「だって双葉、将来はパティシエになりたいんだもんね!」
俺は心の中で、へーそうだったのか。なんて思っていたが、すぐに双葉が三葉の言葉をかき消すように言う。よく見ると、いや、よく見なくてもその表情は真っ赤だった。
「も、もうこの話は終わり!ホラッ!そろそろ出ないと買い物する時間無くなっちゃうわよ!」
そして、俺たちはクリスマスの寒空の中、真菜さんの家へと向かっていった。
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