第55話 クリスマスイブ②

「うっわぁ・・・!!見てカナタ!すごい綺麗じゃない?」


「ホントだな!ちょっと舐めてたな・・・もっとこう、なんて言うか陳腐なのかなって思ってたが・・・これは凄いな」


 俺たちが向かったのは駅前のイルミネーションで有名な場所だ。ネットやテレビで取り上げられているのを見たことはあったが現地に赴いたことは無かった。


 けど、俺は今その事を猛烈に後悔している。それ程までに目の前の景色は綺麗だった。


「おーい、カナタくーん?カナタ君大丈夫?」


「えっ?あっ、ごめん。ボーッとしてた」


「もーっ、せっかくのデートなんだからボーッとしてないで今を楽しもうよ♪ホラッ、早く行こうよ♪」


 そう言うと和葉はイルミネーションの光の花の道を進んで行く。俺はその導を見失わないように和葉に着いていく。


「ねえ、カナタ君。今日は楽しかった?」


 突然の和葉からの質問に俺は驚いたがすぐに微笑んで答える。


「おう!楽しかった!」


「そ、そっか・・・なら良かった♪」グッ


「でも何で、今日俺のこと誘ってくれたんだ?」


「へ?何で?」


「何でって・・・だってお前、例年だったら姉妹でクリスマス祝ってたじゃんかよ。なのに今年は俺とだったから何でかなって」


 俺がそう言うと和葉は少し照れくさそうにモジモジしながら言う。


「えっと・・・それは・・・あっ!そろそろメインのイルミネーションの場所に着くよ!」


 訂正、言ってなかった。


 そしてそのまま俺たちは無言のまま少し歩くと少し開けた場所に出た。


「うわあ・・・!」


「すげえ・・・!」


 その開けた場所には、およそ10mはありそうな程大きなイルミネーションが飾られていた。


「ねえカナタ君!すごい綺麗だよ!ほら!」


「見ればわかるよ、でもホントに綺麗だな」


「でしょでしょ?やっぱりクリスマスの日に出掛けるならこういうのも楽しまないと♪」


「そうだな・・・」


 そして俺たちは近くのベンチに腰掛け何とも無しに空気と景色を楽しんでいた。しかし、不意に和葉が口を開いた。


「ねえ、カナタ君」


「どうした?」


「ここに着く少し前、何で私がカナタ君を誘ったかって聞いたでしょ?」


「おう、聞いたな。今も気になってるし」


「そう、じゃあ教えてあげる」


 そう言うと和葉は立ち上がり俺の前に立つと1つ大きく深呼吸をして言った。


「理由はね、私がカナタ君に告白するため♪」


「好きだよ、カナタ君」


 俺はこの言葉に驚きは無かった。この前、高橋たちがそんな感じのことを言っていたからだ。そして俺の答えは決まっている。だけどその前に俺は和葉に質問をする。


「ちなみに今答えないとダメなのか?」


 すると和葉はフルフルと首を横に振って言った。


「そんなことないよ、だって双葉と三葉のこともあるでしょ?だから今すぐは求めてないよ」


 俺はその言葉に安堵を覚える。何故なら俺が今から言おうとしている言葉はハイ、イイエのものでは無かったからだ。そして和葉は続けてこう言った。


「でもずっと待ってるだけだといくらカナタ君相手でも痺れ切らしちゃうから選ぶ日を私たちで決めたんだ♪」


 俺はその言葉に驚きを隠せなかった。しかし俺はどうにか口を開く。


「それは・・・いつなんだ?」


 すると和葉は笑顔で言った。


「それはね、来年の学校祭♪」


「えっ!?」


 俺は思わず声が漏れてしまった。そしてその声に和葉が反応する。


「えっ!?って何か不味かった?」


「いやっ、そうじゃなくて・・・」


「俺も学校祭の時に伝えようって決めてたからビックリしちまってさ」


「そっか・・・じゃあその日までこのお話は一旦お終いだね♪」


 そして、しばらく無言になった後、和葉がアッと言うと何やらバッグの中を探り言った。


「えっと・・・あっ!あったあった!ハイッ!これクリスマスプレゼント♪」


 そして、小さい紙袋を俺に渡してきた。よく見ると昼に行ったアクセサリーショップの紙袋だった。


 俺は思わず声を漏らす。


「これって・・・」


「あっ!気づいちゃった?実は前からプレゼントしたいなって思ってて今日やっと買って渡せたんだ♪」


「そっか・・・ありがとな」


「ほらほら!早く開けちゃって!」


 そう言われて袋の中身を取り出すと中には銀色のネックレスが入っていた。なんとなくだがカッコいいなと思った。


「どう?いい感じじゃないかな?♪」


「うん、似合うと思う。あっそうだ」


 そう言って俺はさっき買ったハートのネックレスを和葉に渡した。


「はいこれ、お前欲しがってただろ?だからクリスマスプレゼント」


 すると和葉は目を丸くして言った。


「えっ!ホントに!これ欲しかったやつだ!付けてみていい?」


「おう、いいぞ」


 そして和葉はネックレスをつけると俺に近づいて言った。


「ねえカナタ?似合ってるかな?」


「ニシシッ!ありがとっ♪」


 そんな和葉の笑顔はイルミネーションの光を纏ってとても美しく見えた。

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