第52話 野郎共の休日

 Prrrrrrrr!Prrrrrrrr!


「なんの電話だ急に?」


 今日は何の用事もない優雅な冬休みを過ごす予定なのだが・・・


 俺は電話を取り迷惑そうに話し始める。


「もしもし?」


 すると聞きなじみのある声が電話から聞こえてくる。


「おー!スガワラ!元気か?ってか今暇か?これから高森と遊び行くんだけど一緒に遊び行こーぜ!」


 高橋か・・・高橋は球技大会の時に仲良くなってそれ以降、学校で一緒に過ごしたり休日は一緒に遊ぶほどには互いに気の知れた仲になった。そして高森は俺のクラスの委員長で俺は普段、委員長と呼んで親しんでいる。高橋とは幼い頃からの関係らしいが委員長いわく腐れ縁らしい。


 俺は高橋に正論をぶつける。


「突拍子が無さすぎるだろ!それに俺は今日はゆっくりしたいんだ!」


 すると高橋が電話越しに駄々をこね始める。


「えー!何でだよー!一緒に行こうぜー!なーあー!」


 俺が心のドン亹いてドン引いていると電話越しから別の声が聞こえてきた。


「何やってんだこの馬鹿!街中だぞ!」


 えっ?委員長もういんの?俺は高橋に確認をとる。


「委員長もういんのか?」


「え?おう!だからスガワラも来いよ!カラオケももう3人で予約してあるし」


「じゃあ俺に拒否権ねえじゃねえか!」


「おう!だからよろしくなー」 プツッ


 切りやがった・・・俺は渋々準備をして駅前へと向かった。


 ・・・・・・・

 歩く事十数分、駅前に到着した。すると道の真ん中で委員長が高橋にチョークスリーパーを掛けていたので俺は今日も平和だと思いながら二人に声を掛ける。


「お疲れ二人とも、今日も相変わらずだね」


 その言葉に委員長が笑顔で答える。


「あっ!スガワラ君!悪いね唐突に呼んでしまって」ギリギリ


「いいよいいよ、けどお前からは謝罪がほしいな?なあ高橋?」


「お・・・おう、す、すまなかった・・・」ガクッ


「「あっ・・・」」


 ・・・・・・・


「全く・・・俺に非があるのは認めるけど落とす必要なかっただろ」


「それは・・・すまなかった」


「まあいいよ!それより早速ゲーセン行こうぜ!」


「え?カラオケ予約してんじゃ無いのか?」


 俺がそう尋ねると高橋は首を縦に振って言った。


「してるぞ?だけどまだ時間あるからその間ゲーセン行こうぜってこと!」


 なるほど・・・何で事前に言わないのだろうか?後でシメよう。


 そしてゲーセンにたどり着くと、なにやら数人の人だかりが出来ていた。見てみると二人の男が一人の女をナンパしていた。


 俺がゲーセンの治安だなー、助けにいった方が良いか?でも高橋達に迷惑かけないか?なんて思っているとその二人が男たちの会話に入っていった。


「ねえねえお兄さんたち!何してるの?」


 するとナンパ男は凄みがある風の声で言った。


「あ?何だよお前?」


 その言葉に委員長が反応する。


「すいませんね、でもその人が嫌がってそうでしたので」


「ああ!!んだお前ら!おいっやっちまうぞ!」


 ・・・・・・・


「ありがとうございます!!本当に助かりました!」


「いやいや!助けたくなっただけだから!」


「そうですよ。それでは私たちは予定があるのでこれで」


「は、はいっ!」


 ・・・・・・・

「お前らって喧嘩強いんだな」


 俺はカラオケで先の出来事について尋ねた。


 結局、あの後、強硬策に出たナンパ男を二人をいとも容易く撃退していた。


 すると委員長が飄々と言った。


「まあ、あれぐらいの人なら高橋の方がよっぽど強いね」


 その言葉に高橋が照れながら言った。


「よせやい!まあでも、俺的にも高森の方が強かったな!」


 こいつら普段どんな生活してるんだ・・・


 すると高橋が不意に俺に尋ねる。


「スガワラも大室さんたちがおんなじ状況になってたら助けるだろ?」


「お、おう。まあな」


 俺がそう言うと高橋は天を見上げて大声で言った。


「いいよなー!あんなに美人な3人に惚れられてるなんてズリーよー!」


 その言葉に俺は思わず固まってしまったが、どうにか言葉を紡ぐ。


「あいつら、俺の事好きなように見えるのか?」


「?おう、違ったのか?」


「い、いや分からない」


 俺がそう言うと高橋が大声で言った。


「嘘だろ!お前鈍感すぎだろ!あれは間違いなく好きだって!」


「そ、そうなのか・・・」


「特に和葉さん!あれが一番わかりやすく惚れてるね」


 その言葉に俺は思わず呆然としてしまった。和葉が?だって和葉は今まで俺に特にそういう事をしてこなかったからだ。


(これは・・・ホントだとしたら俺はどうすればいいんだ?)


 このもやもやした気持ちをもったまま俺は家へと戻って行った。

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