第48話 木枯らしなる恋路

 それは、あまりにも突然の出来事だった。


 俺は放課後、高橋と委員長と何ともなしに話していた。


「そういえばスガワラって年末年始はどうして過ごすんだ?」


「年末年始?年末年始は普通に実家で過ごすかな?」


「となると、友達とは過ごさないんですか?」


「友達とは・・・あっでも和葉たちと過ごすかもしれないな」


 すると委員長が目を見開いて言った。


「ホントですか!?はぁ、なんて幸せな年越しなんですか・・・僕なんてこんなのといないといけないのに・・・」


「おいっ!!こんなのってなんだよこんなのってよ!!」


 なんて話していると不意に教室の扉が開き、双葉が顔を覗かせた。


 俺は双葉に声を掛ける。


「おう、双葉か。どうしたんだ急に?」


 すると双葉は俺に近づいて言った。


「ちょっと、今日時間あるかしら?」


「え?まあ、あるはあるけど・・・」


「じゃあちょっと顔貸しなさいよ」


 そして双葉は俺の腕を掴んでグイと教室を出ようとする。


「えっ?はっ!?あっじゃあな!」


 ガラガラピシャン


「スガワラ・・・忙しい奴だな」


「そうだな、でも双葉さん。なんかいつもと違った気がしないか?」


「ん?そうなのか?俺あの人と話した事ねえからさ」


「ああ、なんか余裕がなさそうというか、切羽詰まってる感じがしたな」


「そうなんだなー、でもお前、双葉さんのことよく見てんだな!」


「はっ!はあ!?んなことないよバーカ!」


 ・・・・・・・


「お、おい双葉!どこ行くんだよ」


 すると双葉は腕から手を離して話し始めた。


「ねえ、カナタ・・・」


「お、おう。どうした?」


「私、カナタに告白したじゃない・・・」


「ああ、したな」


「それ、忘れて欲しいの・・・」


 俺は一瞬何を言っているか分からなかった。だけど、その中でどうにか声を上げる。


「えっ、本当にどうしたんだよ急に?」


「だって・・・だって!」


 そう言うと双葉は俺の制服を掴んで俺に顔を見せないようにして叫ぶように言った。


「だって!私のこの気持ちがカナタの足枷になってる!薄々気付いてたわよ!だけど・・・この気持ちに嘘をつきたくなかった!」


「でも・・・この前和葉に言われて我に帰ったのよ・・・私、自分のわがままでカナタに迷惑をかけてたんだって・・・」


「だから・・・この気持ちはもうお終い!これからはなんて事ないただの友達!ねっ?」


 そう言うと双葉は顔を上げて俺に笑いかける。その目は真っ赤で涙の跡がくっきりと付いていた。


 俺は何も言えなかった。双葉が言う通り、俺は双葉や三葉の告白の事を考えると複雑な気持ちになっていたからだ。だけど、ホントにこのまま告白を無かった事にしていいのか?俺は、双葉のことをどう思っているんだ?俺は・・・


 俺と双葉はそのままお互いに何も話すことなく家に着いた。


「じゃあ、そういうことだからこれからもいつも通りよろしく」


「お、おう・・・」


 ・・・・・・・

 ♢

「これで・・・良かったんだよね」


 私は、カナタ君への告白を無かった事にした。ホントはそんなことしたくないけど、だけど仕方ないんだ。こうしないとカナタが不幸になるんだから・・・


「だから・・・だからぁ・・・!」


 泣くなっ!泣くな私っ!泣いたら・・・泣いたら余計に悲しいかなるから!


 でも、そんな気持ちとは裏腹に涙はとめどなく流れ続けた。辛い・・・辛いよカナタ・・・


 ・・・・・・・

「情けないな・・・俺って」


 俺はついさっき双葉からの告白を無かった事にされた。理由は俺の甲斐性の無さだ。ホントに俺はなにやってるんだよ・・・幼馴染1人ですらも傷つけるなんてクズもいいとこだ・・・


「一回、しっかりと向き合わないとな」


 告白は終わった。だけど告白された事実は無くなってない。それにアイツの気持ちは変わってない。じゃないともっと別の理由で終わるはずだ。


「でもそのためには・・・」


 そのためには俺が双葉をどう思ってるか恋愛的にどう思っているかちゃんとハッキリさせる必要がある。


 でもそこがどうもハッキリとは・・・


『私と和葉と三葉の内の誰か1人しか助けられないとしたらどうするかしら?』


 不意に旅行の時に言った双葉の質問が頭をよぎる。


 そうか、この質問はやっぱり・・・だったら俺は、俺はきっと・・・

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