第35話 そんなことあるかよ

 俺は今、和葉と買い物きている。理由は簡単で罰ゲームでついて行くことになったのだ。


 まあ、そもそも料理音痴の和葉1人に買い物は行かせないんだけどな。


 そうして買い物を終えた俺たちはあるものに気付く。


「今、懸賞なんてやってるんだな」


「そうみたいだね♪どれどれ・・・一等がペアの旅行券、2等がホットサンドメーカー、3等が商品券だって」


「そうか、その中だったら勿論」


「3等だな」 「1等だね♪」


 その瞬間、俺たちはお互いの顔を見合う。そしてすぐにレスバトルが始まる。


 最初に口を開いたのは和葉だった。


「なんで3等なの?別に商品券なんて貰っても嬉しくないよ」


「そんなことはない、商品券はこの中でダントツの汎用性がある。そもそも、ペアの旅行券なんて貰ったところで誰と行くんだよ?」


「そ、それは・・・」


 そう言うと和葉は一瞬ニヤリと笑うと俺の耳元に近づいて言った。


「カナタ君・・・だよ♪」


 急な和葉の行動に動揺し、ぶっきらぼうに言った。


「だあ!!やめろ!ほらっ!もう行くぞ!」


 すると和葉はニヤニヤ笑いながら言った。


「えー?カナタ君もしかして当たる自信ないのかな?だからそんなに一等の旅行券を酷評してるのかな?」


「なん・・・だと」


「そんなに言うならやってやるよ!ほら早いとこ応募するぞ!」


「ニシシ、はーい♪」


 そして応募を終わらせた俺たちはそのまま家に帰った。


 数日後、俺たちの元にはペアチケットが2枚、つまり4人分の旅行券があった。


「そんなことあるかよ・・・」


 呆然とチケットを見つめていると横から和葉が顔を出して言った。


「これで、誰と行くか問題は解決だね♪」


「そうだな・・・」


 確かにこれなら俺と和葉、双葉と三葉の4人で行く事ができる。ただ一つ問題があるとしたら


「あいつら、行くって言ったら行くんだろうか?」


「行くとは思うけど・・・とりあえず2人が帰ってきた時に聞いてみようか♪」


 そして夜になって2人が帰って来た。そして帰ってくるとほぼ同時に和葉が旅行の提案をする。


「ねえ、2人とも!旅行行こうよ♪」


 困惑している2人のために俺は説明を付け加える。


 すると納得したように双葉が言った。


「そう、だったら私は行かせてもらうわ、だって・・・」


「もし私たちが行かなかったらアンタ達2人で行くんでしょ?」


 すると横にいた三葉がハッとした表情をして言った。


「そうなっちゃうんだ!!」


 まあ、確かにその通りではあるんだが・・・そう言われてしまうと俺からは何とも言い難い。すると和葉は笑顔で言った。


「そっか♪それじゃあ2人とも参加でいいね♪来週の土日空けといてね」


 流石和葉、長女の余裕というか気の振り方が分かってる・・・!



 そしてしばらくの日時が経過してあっという間に旅行当日になった。そして俺たちは今、旅館の前にいた。すると双葉が言った。


「なんていうか・・・趣があるところね」


 それに反応して和葉が言った。


「そうだね、なんていうか昔ながらの雰囲気があるよね・・・」


 そう、この旅館は少しばかりボロいのである。確かに2人の言うように趣やら昔ながらの雰囲気と言えなくはないが・・・にしたってボロい!


 俺たちが突っ立っていると不意に三葉が言った。


「ま、まあ住めば都と言いますし意外と楽しめるかもしめませんよ!」


 そう言って旅館へ向かおうとする三葉を双葉が引き留めて言った。


「待ちなさい三葉!私たちはするべき事が出来てないわ!」


 そんなものあっただろうか?俺は双葉に尋ねる。


「するべき事って・・・そんなのあったか?」


 すると双葉が答える。


「ふっふっふっ、それはズバリ部屋決めよ!」


 その瞬間、和葉と三葉に電流が走ったように見えた。


 そんな電流の流れた和葉が恐る恐る双葉に尋ねる。


「部屋決めって・・・それはつまり」


「そう、この中の誰がカナタと同じ部屋に泊まるかということよ!」


「「な、なんだってー!!」」


 なるほど、コレは俺が入っていきづらいやつだな!


 そんな俺の思いをよそに話は進んでいく。


「じ、じゃあ一体誰がカナタ君と同じ部屋で泊まるの?」


「それを今から決めるんじゃない」


 すると和葉がこれ見よがしに言った。


「ちなみにコレを当てたのは私なんだよね♪」


「そうね、当てたのはアンタとカナタなんだから部屋は別の方がいいわよね」


「しまった!」


 おっ、和葉が脱落したか?すると次に三葉が話し始めた。


「わ、私はえっと・・・私は単純にカナタ君と一緒にいたいです!」


 すると双葉はそれをモノともせずに言った。


「私だってそれは一緒よ、それにアンタはこの前のゲームより私より低かったし文化祭の時に代表してカナタと一緒にいたじゃない?」


「そ、それは・・・」


「だからここは私の番でいいわよね?」


「グ、グワアァァァァァ!!」


 この瞬間、勝負が決した。なんだかコングの音とガッツポーズの双葉、そして真っ白な灰になった2人が見えた。


 すると双葉がこっちによると耳元で囁いた。


「ということで、アンタと同じ部屋にいるのは私になったからよろしくね♡」


 あぁ、やっぱりこの旅行も色々と起きそうな予感がする・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る