第33話 文化祭最終話 契りの伝説
『ねえ、久しぶりだね!』
そう言われ俺が上を向くと、そこには小さい頃に俺を救ってくれたあの子がいた。
俺はその子に話しかける。
『ど、どうして君がここにいるの?』
するとその子は笑顔で言った。
『今日はね、お別れに来たの!』
俺は驚き尋ねる。
『ど、どうして!?』
『理由は、言いたいけれどもうお別れの時間。それじゃあね!』
そう言うと彼女は振り向き走り始める。俺はその子を懸命に追いかける。だけどその距離は一向に縮まらない。俺は必死に叫ぶ。
『待って!待ってくれ・・・!』
「待って!」
そう言いながら俺は目を覚ます。どうやら俺はあいつら3人が来たあと眠ってしまったらしい。
まさか学校でこんな夢を見てしまったとは。
なんて思っていると横から声が聞こえた。
「カナタ君、やっと起きたんですね!体調は大丈夫ですか?」
三葉だ。しかしアイツらはもう文化祭に戻ったはず、俺は三葉に尋ねる。
「大丈夫だ。それより俺はお前らに文化祭に戻れって言ったはずだが何でここにいるんだよ」
すると三葉はさも当然かのように言った。
「はい、だから代表で私がここに来ました!」
「何言ってんだよ、俺は1人ならいいとかそんなこと言ってねえだろ?」
「でもですよ、カナタ君。3人が2人になっても楽しいは3分の2ですけど、1人が2人になれば楽しさは2倍なんです!だったらこの方が良くないですか!?」
俺はこの言葉に反論できなかった。だから俺は苦し紛れに言った。
「もう勝手にしろ・・・」
そしてしばらくの間の後、三葉が話し始める。
「キャンプファイヤー、もう始まっちゃってますね・・・」
そう言われ時計を見ると時刻はキャンプファイヤー開始時刻の5時を過ぎていた。
そうか、俺は今年キャンプファイヤーを見られなかったんだな。そう知った途端、キャンプファイヤーが見られなかった悔しさとか、自己管理の甘い自分への嫌悪感とか、そんな負の感情が溢れ出そうになった。
しかしその瞬間、三葉が俺のことを抱き寄せてきた。
そして三葉はゆっくりと話し始める。
「そんなに悲しい顔しないでください。私まで悲しくなってしまいます。確かに文化祭を最後まで楽しめなかったのは辛いと思います。だけど私はカナタ君の無事が何よりも嬉しいんです」
「あの時、カナタ君が倒れた時、私すごくびっくりしちゃいました。カナタ君を保健室に届けた後もずっと心配で、3人で保健室きた時にカナタ君が元気そうで私嬉しかったです」
そうか、そんなに俺のことを気にかけてくれてたんだな。俺は不意に懐かしさを覚えた。それは会話からではなく、三葉にこうされていることにだ。俺はダメ元で三葉に尋ねる。
「あのさ、三葉」
「どうしました?カナタ君?」
「あの時、俺をあのいじめっ子から助けてくれたのってお前なのか?」
すると三葉は後ろの夕焼けよりも眩しい笑顔で言った。
「・・・はい!」
途端、俺の頭の中はぐちゃぐちゃになった。そして俺は絞り出したように言った。
「そう・・・なのか」
俺はコイツにずっと言いたかった。お前は俺の初恋の人だと。いや、だけど、今の俺が言いたいのはきっと違う!今の俺が言いたいのは・・・
「ありがとう、俺を救ってくれて。そしてアイツらを教えてくれて」
すると三葉はどこか慌てるように言った。
「えっ!?な、なんですか急に?」
そう言われた俺はゆっくりと話し始める。
「あの時、お前が俺を助けてくれなかったら俺とお前らは話すことすらなかったと思う。だから改めて感謝したかったんだ」
「そしてお前がアイツらを教えてくれたから俺は世界を広げる事ができたし、友達も増えた」
するとゆっくりと三葉が言った。
「そうですね・・・」
そしてまたしばらく間が開いた後、三葉が懐かしむように言った。
「あれからもう10年以上経つんですね」
「そうだな、あれから俺たちは基本ずっと仲よかったよな。一時期疎遠だったこともあるけど今じゃ同じ屋根の下だ」
「はい、まさかカナタ君の家で暮らすことになるなんて思いもしませんでした」
そして俺は正直な思いを打ち明ける。
「正直言って、最初はお前らと暮らすのは嫌だった。だけど一緒にいるうちにお前らと普段学校でいるだけじゃ分からないことも分かっていって、いつの間にかこの生活に馴染んでる俺がいた」
「そんなある日、お前が俺に告白したことをあいつらに言ったことでお前ら3人が部屋を出ていったことあっただろ?」
三葉はどこか申し訳なさそうに言った。
「そんなことも、ありましたね・・・」
俺はなおも話を続ける。
「その時俺さ、俺以外いない部屋を見てすげー悲しくなったんだよ。1人が欲しくて親もと離れたくせに1人になったら寂しかった。そう感じるくらい俺にとってお前らは大事なんだ」
「だからさ・・・俺はこれからもお前と和葉と双葉3人と一緒にいたいんだ」
そこまで聞くと三葉は目を閉じ、そして開くと微笑みながら言った。
「・・・そうですね。それじゃあ契りの伝説の神様にお願いしましょう」
ああ神様、どうか俺たち4人がずっと一緒にいられますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます