第29話 文化祭② 和葉の場合

 今日は待ちに待った文化祭の本番・・・なんだけど・・・


「激辛フランクフルト2本入ったよー!」


「あっ、これ3番テーブルに持ってってー!」


「すいませーん、注文いいですか?」


 忙しすぎるよー!物好きしか来なそうだからこれにしたのに、これじゃまるで逆効果だー!

しかも厄介なのは忙しいだけじゃなくて・・・


「あっ、あれ和葉ちゃんじゃない?」


「ホントだー!近くで見るとめっちゃ可愛いじゃん!」


「すいませーん!写真一緒に撮ってもらってもいいですか?」


 昨日のミスコンの影響か写真を求められることが多いのなんの。これだと今日は一日中てんてこ舞いだ。そんな中、見知った顔が教室に入ってきた。カナタ君だ、私は接客へ向かう。


「カナタ君いらっしゃい♪今は見回り?」


「いや、見回りは午前だけだ。午後の仕事まで少し時間があるからそれまで双葉と一緒にまわる約束をしてある」


「そうなんだ♪ていうか、私との約束はちゃんと覚えてるよね?」


「勿論だ、明日の午前中だよな。冷さんに言って少しまとまった時間を午前と午後とそれぞれ取ってある」


「よろしい♪あっ、それより何食べる?」


「そうだな、この激辛酸辣麺ってやつもらっていいか?」


「あいよ、それじゃあちょっと待っててね♪」


 10分後


「お待たせー♪ご注文の激辛酸辣麺おまちどーさま♪」


「おう、それじゃ・・・かっら!!」


「アハハハッ!そりゃそうだよ♪激辛だもん」


「だとしてもコレはヤバすぎる!・・・もしかしてお前が作ったんじゃないだろうな?」


 ムッ、これは心外だ。私はすぐさま反論する。


「それはいくらなんでも失礼だよカナタ君。私はとっくに厨房を出禁になってるからそんな事しないよ」


「出禁になってるんならあながち失礼じゃないだろ!」


「にしし、そうかも♪」


 そうして私が別の人の注文に周っているうちにカナタ君は料理を完食し、双葉の元へ向かっていった。頑張れ!双葉!


 そして当の私は忙しいまま1日を終わられてしまった・・・


 2日目


 私がいそいそと開店の準備をしているとクラスの女子にこんなことを言われた。


「和葉ちゃんさ、今日は一日中休みでいいよ?」


 私は急な言葉に驚きながらも答える。


「ど、どうしたの急に?」


「いやさ、昨日和葉ちゃん一日中お店の手伝いしてくれたじゃん?だからその代わり今日はゆっくり楽しんでほしいなって」


「そっか、それじゃあ言葉に甘えて今日はゆっくりさせてもらうよ♪」


 これは思わぬラッキーだ。私は2日目のスタート共にカナタ君のところへ向かった。するとカナタ君は私の元へきて言った。


「すまん和葉、今は仕事中だ。約束の時間までには終わるはずだから」


 そう言うとカナタ君は仕事へと戻っていった。カナタ君、だいぶ仕事が詰まってるみたいだけど大丈夫かな?


 しばらくしてカナタ君が来た。約束よりも少し早い時間だったけどどうやら仕事を巻きでやってくれたらしい。私は労いの言葉をかける。


「お疲れ様♪カナタ君♪」


「おう、流石に昨日からだと少し疲れるな」


「だね、それじゃあ最初はどこ行こっか?」


「そうだな、このお化け屋敷とかはどうだ?」


「お化け屋敷かー、私はそんなに怖いの得意じゃないけどいいよ♪それじゃ行こっか♪」


 シバラクシテ


 ヤバすぎる・・・このお化け屋敷本気すぎる!私は思わず出口の真ん前で腰を抜かしてしまった。するとカナタ君が心配そうに話しかける。


「大丈夫そうか?」


「うーん、もう少しかかりそうかも」


「そうか、それじゃあ」


 ヒョイッ


 するとカナタ君は私を持ち上げお姫様抱っこの状態で歩き始めた。


「カ、カカ、カナタ君!?急に何するの!?」


「何って歩けないんだからこれかおんぶしかないだろ?」


「それはそうなんだけど///」


「じゃあいまからこのままかおんぶか選べ」


「・・・おんぶでお願いします」


「はいよ、それで次はどこ行くよ?と言っても時間的に次が最後だと思うが・・・」


「そうだね、それじゃあここ行こうよ♪」


 そう言うと私は写真部のカップル撮影スポットを指さした。するとカナタ君は快諾してくれた。どうやら昨日既に双葉と行ったようだ。双葉も意外と強かだ。


 目的地にたどり着くとそこには見たことないような機械がいっぱい置いてあった。


 私は早速写真部の人に撮って貰うようにお願いする。


「では早速撮っていきますが何かポーズはとりますか?」


ポーズか・・・何にも考えていなかった。それなら思い切って・・・!


「カナタ君♪それ!」


 そう言うと私はカナタ君の腕を掴む。するとカナタ君は動揺しながら言った。


「うわっ!?どうしたんだよ和葉!?」


「どうしたもなにも私はこれがいいの♪ね?いいでしょ?」


「・・・勝手にしろ」


「ポーズの方そちらでよろしいですか?」


「はーい♪」


「それではいきますよー、はいチーズ」


 パシャッ!


「いやー、案外いい写真だね♪」


「そうだな・・・」


「もう、そんな照れないで♪仕事、頑張ってね♪」


「おう、お前も文化祭楽しめよ!」


 そう言うとカナタ君は仕事へ戻っていった。ホントはもっと一緒にいたいけど仕方ないよね


 そして私は午後から待ち合わせしている双葉の元へ向かった。すると双葉の姿がそこにあった。


「和葉遅い!なんでせっかくの文化祭で待ちぼうけを喰らわないといけないのよ!」


「ごめんごめん、それじゃあ早速行こっか♪」


 双葉とは色んなものを食べ歩きした。私的にはディッピンドッツっていうアイスが美味しかったかな♪


 そして太陽が茜色になり始めた頃、私たちの話題はキャンプファイヤー、そして契りの伝説の話になった。


「和葉、アンタはカナタをキャンプファイヤーに誘ったのかしら?」


「誘ってないよ、だってカナタ君は私たちの誰かじゃなくて私たちと一緒にいたいって言うだろうからさ♪」


「そうね、私もそう思ったから誘わなかったわし多分三葉も誘ってないはずよ」


「でも来年は容赦無しで誘うからそのつもりでいてよね!」


「うん、私もそのつもりだからくれぐれも気をつけてね♪」


 そうだ、ゆっくりで構わない。だけど来年の今日までには決着をつける。そしてカナタ君を手に入れてみせるんだ!

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