第27話 そうなんだぁ♪

今日は文化祭の実行委員での仕事があり、3人1組での作業だった。俺が組んだのは和葉と


「冷先輩、よろしくお願いしますね♪」


「よろしく」


実行委員の副委員長、心頭冷さんだ。しかし、正直言って俺は心頭さんの独特な雰囲気に慣れていない。ここは一旦、俺は黙って和葉の出方を伺おう。

和葉は心頭さんに積極的に話しかけていた。


「冷先輩って休みの日とかって何されてるんですか?」


「何って、特に何か特別なことはしていないわよ。けどまあ、強いて言うなら本をよく読むわね」


「へえー、そうなんですね♪どんなジャンルの本読むんですか?」


「主に読むのはミステリーね、後はたまにクラスの人のオススメされて恋愛小説とかも読んだりするわ」


「あなたは何か本を読むのかしら?和葉さん」


「私ですか?そうですねえ・・・実を言うと私はあまり本読むの得意じゃないんですよね♪」


「そう、ではあなたはどうなのですか?カナタさん」


俺か!急に振られて驚いたが俺は冷静に答える。


「そうっすね・・・俺もよく読むのはミステリーですかね」


そう言うと心頭先輩はどこか目を輝かせるように言った。


「あら、そうなのね。どういった類のものを読むのかしら?」


「俺がよく読むのは日常の謎系ですかね。あまり殺人事件がっていう作品は読まないですね。先輩はどういったものを読むんですか?」


すると先輩はどこか気恥ずかしそうに言った。


「私は・・・シャーロックホームズをよく読むわね」


「いわゆるシャーロキアンってやつですか?」


「ま、まあそんなところですね」


すると和葉が不思議そうに尋ねてきた。


「シャーロキアンって何ですか?」


「シャーロキアンっていうのは端的に言うとシャーロックホームズの熱狂的ファンのことを言うんだけど・・・」


「まさかそれがこんな近くにいるなんて思いもしませんでした」


「そ、それ以上言わないでください!」


「でもシャーロックホームズですか、手は出したいんですが海外小説ってどうも手を出しづらいんですよね」


そう言うと心頭先輩は目を輝かせると俺に顔を近づけて言った。


「そんなことないわカナタさん!実はシャーロックホームズの作品の中には短編集のような読みやすいものも沢山あってミステリーに慣れてない人でも読みやすいものなの!」


「・・・ハッ!す、すいませんカナタさん。つい興奮してしまいました。ですが興味があれば是非私の元に来てください。オススメの本をお貸しします」


「ホントですか!ありがとうございます!」


シャーロキアンのオススメなら失敗はないだろう。やっぱり他人のことは知っておくべきだ。不意に俺が横を向くと和葉が不満そうにこちらを見ていた。


「どうしたんだ和葉?」


「別に?知らないならそれでもいいんじゃないですか?」プイッ


私を置いてけぼりにして話してしばらくしても話が終わらなそうなので強引に別の話をねじ込むことにした。まさかカナタ君がミステリー小説を読むなんて知らなかったよ。私も読んでみようかなー。なんて


「ところで、委員長の熱井さんって普段からあんなに熱血の人なんですか?」


「そうね、私と彼は小さな時から一緒だけれどあの人はずっとあんな感じね」


「へー、先輩たちって幼馴染なんですね♪先輩の小さい時ってどんな感じだったんですか?」


すると冷先輩は懐かしむように話し始めた。


「私は小さい頃ずっと1人で内気な子だったわ。だから近所のいじめっ子からいじめられることも多かったの」


「だけどある日、別の街から引っ越してきたあの人が私を助けてくれたわ。それ以降、私がいじめられてるのを見つけるたびにそのいじめっ子に食ってかかって」


「時には私よりもボロボロになったりしたこともあったわ。だけどあの人はそれでも私に向かって『大丈夫か!』って言ってきて。まさにヒーローみたいな人だったわ」


そう言う冷先輩の顔はどこか赤みを帯びていた。

私はもしやと思い1つ質問をした。


「もしかして冷先輩、熱井先輩のこと好きなんですか?」


すると先輩は途端に動揺して言った。


「な、何を言ってるのよ!?わ、私が彼のことを、すっ、すすす好きだなんて・・・わ、私はもう仕事が終わったのでお暇させてもらうわ。2人も早く仕事をお、終わらせなさい!」


そう言うと冷先輩は颯爽と教室を後にしてしまった。


私とカナタ君が仕事を終わらせて校門を出るとそこには並んで歩く冷先輩と熱井先輩の姿があった。熱井先輩は遠目から見ても騒がしくて、そして冷先輩は先輩たちの前にある夕焼けよりも眩しく光って見えた。


それを見てるとなんだか切なくなってきた。だから私は思い切ってカナタ君の手を握った。するとカナタ君は案の定言った。


「ど、どうしたんだよ急に?」


「なんでもないよ♪だけど今だけお願い!」


するとカナタ君はやれやれといった感じで言った。


「分かったよ、今だけだぞ」


「やった♪ありがとねカナタ君♪」


「おう、まあな」


やっぱりカナタ君も浮かれてるのかな?だって明日はいよいよ文化祭当日なんだから!


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