第26話 三葉の心②
バシイイン‼︎!
私は一瞬、何が起きてるのか分からなかった。唖然としている私を他所に双葉が声を荒げる。
「アンタねぇ・・・」
「いつまでも何をウジウジしてるのよ!そういう被害者面が私は一番気に食わないのよ!」
それを聞いた三葉はゆっくりと話し始める。
「被害者ヅラなんてしてないよ。ただ今の私に前みたいに振る舞う権利が無いだけ」
「何が権利よ!私たちはアンタにどんなふうに振る舞えなんて命令したことなんて無いじゃない!!それとも何よ、このまま後ろ向きに振る舞ってたら逃げおおせることが出来るとでも思ってるわけ!?」
「そんなことないよ、でも私が2人に内緒で勝手なことしたことに変わりはないから」
「はあ、確かに私はあの時アンタを憎んだし、ショックな気持ちもあった。だけどね三葉、今はその時の何倍も何十倍も・・・!」
「それを許せなかった自分に腹が立つのよ!あの三葉が私と同じ人を好きになるはずがない、あの三葉が私より先に行動するはずがない。そんな風に勝手にアンタにレッテル貼って、そのくせにそのレッテルが裏切られたらアンタを許せなくなる」
「そんなわがままな私が許せないのよ!」
双葉・・・そうか、カナタ君への恋が散った勘違いだけじゃなくてこの自己嫌悪も双葉がカナタ君の家に戻って来なかった理由なのかもしれないな。
双葉の言葉に三葉はかなり動揺しているようだったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「でも皆んなが私が許したところでどんな顔すればいいか分からないよ」
そう言う三葉の目には溢れんばかりの涙が溜まっていた。
すると双葉は三葉を優しく抱き寄せると優しく諭すように言った。
「どんな顔でも許すわよ。だって三葉が告白したから私も前に進む勇気が出たんだもの」
「えっ・・・」
「私、カナタ君に告白したの。アンタなんかに私の大好きな人を取られてたまるかって思ったから。だから三葉に1つ聞きたいことがあるの・・・」
「三葉はホントにカナタ君の好きなの?」
三葉はかなり動揺しており言葉に詰まっているようだ。すると双葉は一つ言葉を付け加えた。
「複雑に考えなくていいわよ。私がどうとか和葉がどうとか、そんなのは関係なし。ただあなたの心の中でどう思ってるかを教えて欲しいのよ」
「ワタシ・・・私だって・・・」
「私だってカナタ君が大好きだよ!あの綺麗な無邪気な笑顔も!私の期待に応えてくれる優しさも!私をからかってくる子供みたいなところも!全部全部大好きだよ!」
そう言うと三葉はわんわんと子どものように泣き始めた。そして双葉は尚も抱きしめたまま言った。
「言えたじゃない。それじゃあ、今から私たち3人は同じ好きな人がいる仲間でライバルよ」
「和葉もそれでいいわよね?」
「うん、私は最初からそのつもりだよ♪三葉から告白したって聞いた時はビックリしてあんなこと言っちゃったけど」
すると三葉は泣きじゃくりながら言った。
「ありがとう・・・双葉・・・和葉」
そして私たちは三葉が泣き止んだ後、愛菜ちゃんに一言感謝を述べた。
すると愛菜ちゃんは三葉を見るや否や抱きついて言った。
「三葉、ちゃんと仲直りできたんだ・・・!よかった、ホントに良かった・・・」
「ありがとね三葉、私明日から学校行くから休んでた分の勉強教えてね!」
「もう何それ?でも分かった。私の親友のためだもん!みっちり教えるから覚悟してね!」
「ありがとう愛菜ぁ!」
そんなやり取りをして私たちは愛菜ちゃんの家を出て、今私たちはカナタ君の家の前にいる。
そして私がドアを開けるとそこにはカナタ君が立っていた。一体いつからここで立っていたんだろうか?そしてカナタ君は私たちの方を見ると言った。
「おかえり、和葉、双葉」
「うん、ただいま♪」
「ただいま・・・アンタ、いつからそこいたのよ?」
「いつからだろうな?お前らが帰ってくるのが待ち遠しくてついここで待っちまったよ」
「ふーん?そうなのね。私、アンタのそういうところ好きよ」
「そ、そうか・・・」
あっ、カナタ君照れてる。すごいなあ双葉は、私にはそこまでのとこはできないや。
そしてカナタ君は三葉の方を向いて言った。
「三葉もおかえり」
「た、ただいま・・・」
「実はもうお前の大好物を作ってあるんだ。だからほら、さっさと食おうぜ!」
「は、はい!」
そうして私たちは晩御飯を食べ、そして今私は自分の部屋でくつろいでいた。すると部屋をノックする音が聞こえ、カナタ君がドアの向こうから話しかける。
「俺だけど、ちょっといいか?」
「いいよ♪」
するとカナタ君が部屋に入ってきた。そしてベッドに座っている私の隣に座ると話を始めた。
「今日はホントにありがとな。お前がいなかったらまたこうやって皆んなで暮らすことは出来なかった」
「そんなことないよ、双葉も三葉も私たちどちらかだけの力じゃ戻ってきてくれなかった」
「だとしても和葉には感謝しても仕切れないことには変わりないさ」
「だからさ和葉・・・」
「今度の文化祭、お詫びの印に一緒に回したいんだけど、どうだ?」
なんと!まさかカナタ君の方からお誘いを頂くとはなんと幸せな御身分なんだろうか!だけど今の私が言うべきなのは・・・
「そっか、それは是非受けさせてもらうね♪だけど私だけが独占するのは他の2人が可哀想」
「だから他の2人にも時間を作ってあげてね♪」
「ああ、勿論だよ」
そう、私たちはライバルであり仲間、こんな思い出作りのタイミングで独占なんて出来ない。
だけど、いつか絶対に手に入れて見せるんだ!
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