第25話 三葉の心①

 ♡

 あれは昨日、カナタ君と別れてからのことだった。私はとある女の子に話しかけられた。


「あの!和葉さんですよね?」


「えっ、そうだけど・・・あなたは?」


「あっ私は愛菜って言います」


「愛菜ちゃん?初めましてだよね?そんな私になんか用かな?」


 するとその愛菜と名乗る女の子が驚くべきことを口にした。


「三葉、お姉さんたちと仲違いしてるんですよね?」


 この事は誰にも言っていないはずのこと。私は彼女に尋ねる。


「ど、どうしてそんなこと聞くのかな?」


 するとその子は少しドモらながら言った。


「そ、それは・・・三葉はいっつも元気で辛そうなことなんて無さそうな子なのに今日急に学校休んだから」


「そっか・・・」


 でももし急に休んだことが心配だとしてもいきなり仲違いをしたっていう結論になるだろうか?ということはこの子は何かを知っている?でも今回の事を自発的に知ることはほぼ不可能だ。となると・・・

 私は一つの仮説を検証するため彼女に1つ尋ねることにした。


「ねえ、愛菜ちゃん。一つ質問いいかな?」


「はい、なんでしょう?」


「三葉、今あなたの家にいるでしょ?」


 そう言うと彼女は目を丸くして、その後ゆっくりと口を開いた。


「はい、三葉は今、私の家にいます」


 そう言うと彼女は私に近づき捲し立てるように言った。


「お願いします!どうか三葉と仲直りしてくれませんか!三葉、私の家に来た時には普段もう違ってて、それで話聞いたらお姉さん達とトラブったって・・・だからどうか!仲直りしてまた三葉をいつもの三葉に戻して・・・!」


 そう言う彼女の目からは大粒の涙が溢れていた。

 私は彼女を宥めるように言った。


「分かった、ありがとう愛菜ちゃん。三葉のためにここまでしてくれて。今日は遅くなりそうだから厳しいけど明日、私と双葉であなたの家に行くよ」


「はい・・・ありがとうございます」



 そして私は今、双葉と一緒に愛菜ちゃんの家の前にいる。横を見ると双葉が緊張した面持ちで立っていた。私は声をかける。


「ちょっと双葉、緊張しすぎ」


「し、仕方ないじゃない!あんなことあった後なんだもの。ていうかアンタは緊張してないわけ?」


「してないと言えば嘘になるよ。だけど」


「これはカナタ君のためでもあるんだから♪」


「・・・そうね、ここにいないアイツのためにも頑張らないといけないわよね!」


 今日ここにカナタ君を連れてこなかった理由は単純だ。私たちが3人がしっかりと本音で話し合うため。ただそれだけだ。

 だけどこれは今までお互い何となく分かり合っているかのように生きてきた私たちにとって絶対に必要な事なんだ。

 そして私は愛菜ちゃんの家のインターホンを鳴らした。すると私服姿の愛菜ちゃんが出迎えてくれた。


「はーい、あ・・・来てくれたんですね」


「うん、約束だもん」


「ありがとうございます。三葉は上の一番手前の部屋にいるので」


 私はありがとうと一言言うと三葉の部屋へと向かった。そして、部屋を向かうために愛菜ちゃんとすれ違う時、愛奈ちゃんが一言


「三葉を頼みました」


 と言った。そうだ私は自分達だけじゃない。この子の期待も背負っているんだ。私は一層肩に力が入った。


 私は三葉がいると言われた部屋の前へ着くと迷わずそのドアをノックして話しかける。


「三葉、和葉だけど、そこにいるんだよね?いたら開けて欲しいんだけど・・・」


 すると部屋の扉がゆっくりと開けられ、三葉が顔を出して言った。


「和葉、それに双葉もいるんだ。ここだとアレだし入ってよ」


 そう言う三葉は明らかに普段の三葉とは異なっていた。見た目や振る舞いは変わらないけれど三葉から溢れ出ていた雰囲気やオーラというものは無くなりかけていた。それまでの三葉を太陽とするなら今目の前にいる三葉はさしずめ一本のロウソクみたいだ。今にも消えいりそうでどこかへいってしまいそうな危うさを感じる。


 私は部屋に入ると早速三葉への説得を試みた。


「ねえ三葉、そろそろカナタ君の家に戻ろうよカナタ君も心配してる」


 そう言うと三葉はもとから虚だった目からさらに光を無くして言った。


「そんなこと言われても・・・私もうあの家に戻る資格なんてないよ」


「そんなことないよ!私だって双葉だってもう怒ってなんかないよ!だからさ、一緒に戻ろうよ、ね?」


「だとしても、私が私を許さないんだ。勝手に抜け駆けして、2人の気持ちも考えずに勝手に告白して、しかもその事をずっと言わないでいた自分が嫌いで嫌いで仕方がないんだ」


「そんな!?じゃあ一体どうしたら・・・」


「皆んながどうするとかじゃないんだ。これは私の問題、だから和葉が思い悩むことはないから心配しないで」


「そうは言っても・・・そういえばカナタ君のことはどうするの!?まだ返事も貰ってないじゃん!」


 すると三葉はどこか諦めたように言った。


「こんな身勝手な私じゃカナタ君に釣り合わないよ。だから、もういいんだ・・・」


 そんな、それこそ身勝手だ。でもどうすれば三葉が納得して・・・


 バシイイン‼︎!

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