第24話 伝えたい思い
「何してるのよ、早く立って部屋に入りなさいよ。少しなら話し聞いてあげるから」
「あ、ああ分かったよ」
今俺は双葉の説得のため彼女の部屋を訪れていた。双葉の部屋は引っ越した後の部屋ということもありとても質素だった。
「とりあえずそこに座りなさいよ」
「あ、ああすまない」
俺は改めて今の思いを双葉にぶつける。
「双葉、やっぱりもう戻ってくれないのか?」
「何度も言わせないでよ・・・って言いたいところだけどアンタの言い分を無視するわけにはいかないのも分かってる」
しかし双葉は続けてこう言った。
「でもやっぱり私はもうアンタとは一緒に入れない」
それを聞き、俺は半ば諦めたように言った。
「理由を聞いてもアンタには分からないって言うんだろ?」
「そうね、私はアンタに理由を伝えるつもりはないわ」
「そうかよ・・・俺はお前の気持ち知ることもできないってのかよ」
俺がそう言うと双葉は俺を睨みつけると大声で捲し立てた。
「何よ!私なんか居なくてもアンタには三葉がいるんでしょ!だったらさっさとアイツのとこ行きなさいよ!」
双葉の言葉に俺は動揺すると共にこれまでの双葉の行動に納得がいった。双葉は俺と三葉が付き合ってると勘違いして居心地が悪くなって出ていったのだと・・・
俺は双葉の言葉に訂正を入れる。
「色々と勘違いしてるみたいだから言っておくが俺と三葉は付き合っていない」
「・・・え?」
「確かに俺は三葉に告白された。でもアイツの要望で俺はまだ返事をしていないんだ」
「だから、戻って来てくれないか?双葉」
そう言うと双葉は大きくため息をつくと話し始める。
「はあ・・・飛んだ早とちりじゃない。でも三葉が告白したのは本当なのよね?」
「ああ、それは本当だ。嘘なんかじゃない」
「そう、それなら・・・」
ドンッ
気づくと俺は双葉に押し倒されていた。そして双葉は俺を押し倒したまま高らかに言った。
「それなら言ってやるわよ!私の伝えたかった思い!」
「私はアンタが好き!ただそれだけ!それだけのことなのよ!」
そんな、まさか双葉が俺のことをそんな風に思っていたなんて・・・
「でも・・・」
双葉はそう言うと俺と顔を離すと馬乗りの状態になり、泣き出した。しかし双葉は、なおも話し続ける。
「でも分かってるのよ・・・素直じゃなくて不器用な私とアンタじゃ釣り合わないって。この恋は叶いっこないって・・・だから・・・だから私は・・・」
それ以降の言葉は泣き声のせいで続く事はなかった。しかしこの状況、俺は一体どうすればいいんだ・・・
その時、とある言葉がとある言葉が頭の中をよぎった。
(ママがね、悲しくて辛くてどうしようもない時はこうやって優しくギュッてするといいって)
俺は上半身をゆっくりと起き上がらせると双葉をゆっくりと抱き寄せて言った。
「ありがとう双葉。俺、恋は小さい時に一回しかしたことがないから、今俺がお前に抱いてる感情がどんなもなのかよく分からない」
「だけど、だからこそ俺はお前の気持ちにハッキリとした答えを出したいと思ってる」
「だからそれまで、俺からの返事を待ってもらいたいんだ」
そう言うと双葉は涙で声を振るわせながら言った。
「何よそれ・・・そんなの、ズルいわよ」
「だけど・・・分かったわ。私、アンタの返事ずっと待ってるから。いつまでも待ってるみせるから」
「ありがとう、それじゃあ一緒に帰ろう」
「・・・うん!」
そうして俺は双葉から体を離した。そして双葉の涙の跡が消えるのを待って俺たちは家へと戻った。しかし、双葉の家を出る直前双葉がとあることを言ってきた。
「言っておくけど私は全くアンタとの恋を諦めてない。だからアンタが私に振り向いてくれるようにアタックしてやるから覚悟しなさい!」
その言葉通り、双葉は俺たちの家に着くまでの間、ずっと俺の腕にしがみついていた。正直言ってこれは恋心関係なしにドキドキするな。
そして俺たちは家に着き扉を開けた。するとそこには和葉が立っていた。和葉は俺たちの方を見ると一目散に双葉の方に駆け寄ると抱きついて言った。
「おかえり双葉ぁ!ホントに、ホントに心配したんだから!」
「うん、ごめん和葉、でも私もう決めたんだ。もう消極的になんかならないって」
「そして皆んなも大切にするって、だから和葉には伝えておきたいことがあるんだ」
すると互いの顔が分かる距離まで離れると双葉は言った。
「私、カナタに告白した」
「このことは真っ先に和葉に伝えようと思ってたの。だって・・・」
そう言うと双葉は和葉の耳元で俺の聞こえない大きさで言った。
「私たち、ライバルだもの」
それを聞いた和葉は笑顔でこう言った。
「分かった、それなら私も頑張るよ♪」
そして和葉は俺の方を向くと言った。
「ありがとうカナタ君。やっぱりカナタ君に頼んで良かったよ♪」
「まあな、それより三葉はどこにいるか分かったか?」
「うん、だから明日その場所に行く予定」
「そうか、それなら俺も一緒に・・・」
俺がそこまで言うと和葉がそれを制止するように言った。
「待ってカナタ君、三葉に関しては」
「私と双葉に任せて欲しいんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます