第22話 嵐の予感

 それは、俺たちがいつも通り4人で飯を食べてる時のことだった。


「そういえば、今年もキャンプファイヤーやるみたいじゃない」


「ああ、それにしてもよく知ってるな。昨日決まってまだ発表されてない事だぞ」


「よく知ってるも何も学年の誰もが知ってることよ?きっとどこかのクラスで勝手に話した人がいたのね」


「キャンプファイヤーかあ、小学校の時以来だから楽しみだな♪」


 そこまでは普通の会話だった。だが、次の三葉の一言によって空気はおかしくなっていった。


「キャンプファイヤーといえば!皆んなは契りの伝説って知ってますか?」


「契りの伝説?なんだよそれ」


「契りの伝説っていうのはですね、キャンプファイヤーの時に願い事をすると必ず叶うって奴ですよ!」


「何よそれ?あまりにありきたりね、それにそういうのって恋が叶うとかそういうのじゃないの?」


 双葉がそう言うと三葉はフフンと自信ありげに答える。


「実は契りの伝説はコレだけで終わりじゃないんです!なんとキャンプファイヤーの時に一緒に時を共にした男女は永遠を共に幸せに過ごすらしいんだよ!」


「だからカナタ君、文化祭のキャンプファイヤー、私と一緒にいてくれませんか?」


 その言葉を聞き、双葉が三葉に詰め寄る。


「ちょっと三葉!?一体何の真似よ!そんなのカナタにこ、告白してるみたいじゃない!?」


 すると三葉はニコッと笑うと答えた。


「そう、私にカナタ君にもう告白してるんだ」


 それを聞くと双葉は動揺した様子を見せるもすぐさま口を開く。


「こ、告白したってそんなの全然聞いてないわよ!何で今まで黙ってたのよ!」


「だって誰かに伝えてその誰かに取られたくなかったから」


「だ、だからってそんなの・・・!」


 すると不意に和葉が立ち上がって話し始めた。


「私、ちょっと外の空気浴びてくるよ」


「それと、三葉」


「私は三葉がそんな事すると思わなかった」


 そう言うと和葉はどこかへ出掛けてしまった。


「あっ、待って和葉!」


「そんな、和葉・・・」


 すると続けて双葉も立ち上がり言った。


「そうね、私もそう思うわ。カナタ、私もちょっと出掛けるわね」


 そう言うと双葉もどこかへ行ってしまった。


 そして三葉は どうして そんなつもりじゃ などと独り言を言っていたがやがて立ち上がり言った。


「ごめんカナタ君、私、しばらく出掛けるね、あとキャンプファイヤーの件だけど忘れてください」


 そして三葉もどこかへ行ってしまった。



 あれから2時間近くが経ち玄関の扉の開く音が聞こえた。そして少しすると和葉がリビングの扉を開けて俺の元に来て言った。


「他の2人はどこにいるの?」


「他の2人もそれぞれどっか行ったよ。だから今家にいるのは俺1人だ」


 すると和葉は そっか と呟くと俺の向かいに座ると言った。


「ねえカナタ君、三葉に告白されたってホントなの?」


 俺は少し答えるべきか迷ったが正直に答える。


「ああ、夏祭りの時に」


「そうなんだ」


 そう言うと和葉は一つため息をつき話し始めた。


「きっと三葉がカナタ君に告白したのは私のせいだ。あの日、私が三葉にカナタ君のことをどう思ってるのか聞いたから、それでかえって気持ちが強くなって告白したんだと思う」


「そうなのか・・・でも何でそんな事をアイツに聞いたんだ?」


「だって三葉、カナタ君に勉強を教わるようになってから何か変わったから。最初はもしやと思っただけだけど段々と確信に変わってきて、だけど、本人の口から聞かなきゃと思って」


「そうだったのか・・・」


 俺も三葉がなんだか変わったなとは思っていたがまさかそれが恋心だったとは思わなかった。


 すると和葉が急にガタッと立ち上がると俺に顔を近づけると言った。


「それで!カナタ君は何で答えたの?」


 俺は急な質問に驚いたが冷静に答える。


「まだ返事はしていない。三葉がまだ答えなくていい、いつかその時が来たら答えてって言ってたからな」


「そっか、そうなんだ。それでカナタ君は三葉のことをどう思ってるの?」


 どう・・・か、俺は答える。


「俺は、はっきり言ってまだ分からない。この気持ちが恋心なのかただの信頼なのか。だけど今の俺がはっきりと言える事はお前ら3人にはずっと仲良くして欲しいって事だ」


「だからもし付き合うことで今みたいにお前らの仲が悪くなるなら俺は絶対に断るし、付き合う事で仲良くなるなら付き合うよ」


「それってつまりどういうことなの?」


「つまり・・・俺はお前らに仲直りして欲しいんだ、またいつも見たいな4人で一緒にいたいんだ」


 それを聞くと和葉はいつも通りのテンションで言った。


「そっか♪それなら仲直りする他ないよね♪それじゃいっちょお姉ちゃんが人肌脱ぎますか」


「私は三葉に電話してみるからカナタ君は双葉に電話お願いね♪」


 俺は分かったと答えると携帯を取り出し双葉に電話をかける。すると意外にすんなりと電話が繋がった。


「もしもし」


「もしもし?双葉か?俺だ!カナタだ!」


「そんなの分かってるわよ、それで何のようかしら?」


「双葉、何時頃戻ってくるんだ?」


 すると双葉は驚きの言葉を口にした。


「私、しばらくそっち戻らないから」


 俺は思わず大声で尋ねた。


「な、何でだよ!?」


 すると双葉は振り払うように言った。


「どうしてかしらね、でもアンタが何を言おうが戻るつもりは無いから、それじゃ」


 そう言い残すと双葉は電話を切ってしまった。俺は今起こったことをそのまま和葉へ伝えた。


「双葉、ここに戻るつもりはないって」


「そんな・・・」


「三葉はどうだった?」


「それが、電話に出てくれないの」


「まさかそんな!?」


 俺はすぐさま三葉に電話をかけるが繋がれど電話に応える事はなかった。


「マジかよ・・・」


 こうして俺たちはしばしバラバラになってしまった。

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