第19話 どういうことだ・・・
「そんなの・・・羨ましいからに決まってっしょーーー!?」
「・・・は?」
「はあああああ!!!!!!?」
今野さんの大胆なカミングアウトは俺の想像の斜め上をいくものだった。
俺は聞き間違いの可能性に賭け、もう一度書き直すことにした。
「今、羨ましいからって・・・言ったか?」
すると今野さんは冷静さを取り戻したのかゆっくりと話し始める。
「そう言ったよ、皆んなの憧れの3人と仲良さげなのはファンクラブ第一号のあーしとしてはマジで許されないんですけど!?」
なるほど憧れか・・・って今コイツ、ファンクラブって言ったか!?俺はファンクラブについて今野に尋ねる。
「ファンクラブって・・・アイツらにそんなものあんのか?」
「はあ!?君知らないの!?あの3人はあーしたちの学年のアイドルなんよ?」
「は、はあ・・・」
俺が勢いに押されるのを余所に今野さんは言葉を続ける。
「和葉ちゃんはいっつもキラキラしててなのにしっかりしててマジであーしたちのお姉ちゃんだしー」
あの和葉がしっかりしてるだと!?あの怠惰でポンコツな和葉が!?
「双葉ちゃんは真面目で凛としててリーダーシップがあるあーしたちの指導者っしょ?」
真面目で凛としてるねえ・・・他のやつらにはあのトゲトゲした物言いはそう見えているのか。もしくは普段は猫被ってるのか?今度確かめてみるとしよう。
「そんで三葉ちゃんは運動神経抜群で、だけど抜けてるところが多くてマジで妹って感じなんよ!」
それは・・・その通りだろう。抜けてるところがマジ妹というのはよく分からないが。
そこまで言い終えると今野さんはハーハーと肩で息をした後に俺にグイと近づくと言った。
「改めて聞くけど、君はあの3人とどういう関係なん?」
あ、圧が強いっす・・・でもこれはどう答えればいいんだ!?
俺が答えあぐねていると不意に扉の方からガタッ!と音が聞こえた。俺たちが会話を止めてそちらを凝視していると、声が聞こえてきた。
(ちょっと三葉!あんまり私に体重かけないでよね!?)
(ご、ごめん双葉!気をつけるよ!)
(ちょっと2人とも静かに!あんまし騒ぐとバレちゃうよ)
あの3人だ、俺は扉へ向かいそのまま扉を開くと詰んだ本が倒れるように3人が部屋に倒れ込んできた。
「お前ら一体何しにここに来たんだよ?」
「いやー、ちょっとカナタ君が心配で見に来ちゃった♪」
「私は別に心配なんてしてなかってわよ!でも万が一と思って見に来てあげたのよ!」
「私は普通にすっごい心配だったので見に来ちゃいました!」
コイツら・・・俺のためにわざわざここまで来たのか。そう思うと心がなんだか軽くなったような気がする。
そして俺は そうか と言うと再び今野の方を向く。すると今野さんは顔を真っ赤にしたまま硬直していた。すると双葉が不意に喋り始める。
「今野さん、久しぶりだね♪」
「は、はひ!お久しぶりです!しかしなんでこのような所に!?」
「私はこのカナタ君が心配だから来ただけだよ」
「心配って・・・皆さんはスガワラとどんな関係なんですか?」
「ただの幼馴染だよ♪」
「おさな・・・なじみ?」
「そう、だから私は大切な人を馬鹿にされた人ってところかな?」
それを聞いた今野さんの顔は見る見るうちに青くなっていき、そして叫んだ。
「す、すんませんしたーーーー!!!」
それを聞いた和葉はなおも言葉を続ける。
「反省してるなら、するべきことがあると思うんだよね」
「・・・へ?」
「カナタ君に謝罪して仲直りしようか♪」
お、脅しだー!コイツここにきて自分たちを餌に脅してる!あまりにもやり口がエグすぎる!
ていうか・・・コイツあの時の一瞬でこの作戦思いついたのか?だとしたら怖すぎるんだが!?頭がいいとは知ってたがまさかここまでとは知らなかった。次から気をつけなければ・・・
すると今野はこちらを向くと苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「すいませんでした・・・」
心の底ではやっぱり俺に苦手意識があるのだろう。俺は答える。
「こちらこそ、今野さんが不快に思うような振る舞いをしていたことに気づいてなくてごめん。僕からは無理して仲良くしてなんて言わないよ、だけど文化祭のために必要な会話くらいはしてくれると嬉しいかな」
すると今野さんはなんだか急ぐような感じで言った。
「分かりました、それじゃ私はコレで!」
そう言うと今野さんは教室を後にした。
「あの子、私たちに申し訳なくなって逃げたわね」
「なんか、すごい賑やかな人でしたね!」
確かに振り返ってみれば賑やかな奴だった。俺は改めて気になっていたことを尋ねる。
「結局、今野さんとお前らってどんな関係だったんだ?」
すると和葉が待ってましたと言わんばかりに答える。
「あの子は私たちのファンクラブの人なんだよ。もちろん私たち非公認のね♪」
「そ、だから今回の作戦をを聞いた時はエグいことするなって思ったわよ流石に」
「あはは、俺もそう思うよ」
すると急に三葉が素っ頓狂な声を上げる。
「ええ!私たちのファンクラブなんてあったの!?」
するとすかさず双葉のツッコミを喰らう。
「アンタ今まで知らなかったの!?少しは周りを見なさいよ!」
「えへへ・・・でもでも!コレでカナタ君の悩みは解決したんですよね!?」
確かに、ハッピーエンドとまではいかないが問題はもう解決したのか。俺は答える。
「ああ、皆んなのおかげでな」
そう言うと三葉は目を輝かせて言った。
「やりましたね!それなら今日は私が腕によりをかけて豪華なご飯作っちゃいますよ!」
そして俺たちは帰路に立った。ホントに今回は皆んなのおかげでどうにか頑張れた。きっとお前らのいない俺だったらきっと挫けてたはずだ。
そう、あの頃の俺なら・・・
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