第17話 そう来たか・・・

 昨日、俺はくじ運悪く文化祭の学級委員長となった。まだ本格的な仕事は先だがその前に色々とやっておきたいことがある。それはズバリ、今野美希との友好を深めることだ。俺は早速、今野との接触を試みる。


「あっ、今野さんちょっといいかな?文化祭のことでちょっと・・・」


「皆んな!ちょっとトイレ行かない?あーしちょっと化粧直したくてー☆」


「あっ・・・」


 行ってしまった・・・だがまあ化粧がどうとかは俺にはよく分からないがきっと大事なことなのだろう。次のチャンスに期待しよう。


 ヒルヤスミー


「今野さん、ちょっと・・・」


「・・・2人ともご飯どうするー?久々に屋上行かね?でも晴れてっしヤベーかも☆じゃあどこで食うよ?」


 ガラガラピシャン


 また行ってしまった・・・ていうか今、明らかにこっちを見ていた様な気が・・・でも次があるか!


 スウジツゴー


「今野さ・・・」


「・・・」 ガラガラピシャン‼︎


 ダメだ!完全に避けられてるっ!!このままだとクラスでの話し合いの時に何かしら問題が発生するに違いない。だが避けられてはどうしようも無い。帰るか・・・


「カナタ、最近何かあった?」


 飯の途中、不意に双葉が尋ねてきた。何かあったにはあったが双葉を巻き込むことでは無いだろう。俺は答える。


「いや、なんも無いよ。でも随分と急だな」


「なんかアンタから普段の覇気というかオーラというかが無かったから気になっただけ。だけど何も無いなら安心だわ」


 そんなに普段と違っただろうか?しかし他人に心配をかけたのは事実だ。バレない様にしなくては・・・


「・・・・・・」ジーーッ


 視線を感じその方向を見やると和葉が俺を見つめていた。俺は尋ねる。


「どうした和葉、そんなに見つめて」


「いや、なんでも無いかな♪」


 じゃあ一体なんだったんだ・・・でもまあそれはそれとして明日からも挑戦しなくては!こっちから話しかけることがなくなればおそらく一生話し合うタイミングはない。


 そう思った次の日、俺が学校に着き下駄箱を開けると手紙らしきものが入っていた。俺はそれを開き中身を読む。


『スガワラへ

 今日の放課後、学校の屋上前で待つ

                ミキ』

 これは・・・もしかしたらラブレターか?いやまさか、そんな訳ない。事実として俺は今野美希に避けられているのだ。そんな俺が惚れられてるなんて・・・でも待て、もし今までの今野の行動が一種の照れ隠しの様なものだとしたら?ホントにこれはラブレターなのかも!?


 そう思った瞬間、俺の中で何かが引っかかった。


(私はカナタ君が好きです、この世界の誰よりも)


 そうだ、俺は今三葉から告白されている状態だ。そんな俺がこんな場所に易々と行っていいのか?分からないがそもそも告白ではない可能性もある。であれば行かねばならないか・・・


 ホウカゴー


 ついにこの時が来てしまった・・・正直何の想定もできていない!このままではどうであれ対応できる自信がないっ!

 などと考えていると下の階からパタパタと足音が聞こえてきた。その方向を見ると今野がこっちに向かって来ていた。今野は俺を見ると気持ちスピードを上げ俺の前に立った。


「来てくれたんだスガワラ・・・」


「ま、まあここに来いって書かれてたからな」


「そう、それなら単刀直入に言うよ」


「な、何だよ・・・」


 一体何を言われるんだ!俺は今野の口を凝視する。


「あーしに話しかけるのはもう二度としないで」


「・・・え?」


「え?って私が避けてるの君は気づいてないわけ?」


 それは知っていたがそれはあくまでも必要な会話、いわばコミュニケーションだ。俺は反論する。


「そうはいっても俺たちで事前に擦り合わせたりとかしないとクラスでの話し合いになった時にトラブルが起きるかも知れないだろ」


 すると今野は俺を道端に捨てられたガムの様な目で見ながら答える。


「は?そんなのしなくても別にどうにかなるに決まってっし。それに・・・」


「あーし、君みたいな頼りなさそうな男マジで嫌いだから」


 そう言うと今野は用は済んだのか階段を降りていった。


「そう来たか・・・」


 俺はその場に立ち尽くしていた。確かに俺はあまり明るいタイプではないしそのせいで友人が偏っているのも事実だ。しかし今回の様に正面切って嫌いだと言われたのは初めてではっきり言って少し傷ついている。俺はこの気持ちを抱えたまま家へと帰った。


 トントンッ

「カナタ君、ちょっといいかな?」


 俺が部屋で1人今日の出来事を頭の中でグルグルとループさせていると和葉が部屋を訪ねてきた。俺は和葉を部屋に迎え入れる。


「おう、入れよ」


「急にごめんね、邪魔しちゃったかな?」


「いや別に大丈夫だ、ていうかどうしたんだ急に?」


「カナタ君さ・・・やっぱり何か悩んでることあるでしょ?」



 俺は思わずギクっとしてしまったが冷静に答える。


「いやいや、昨日も言っただろ?何もねえよ」


「そんなことあるよ、だってカナタ君、普段よりも目線が俯きがちだったもん」


 そうだったのか、これに関しては全くの無意識だった。すると和葉は言葉を続ける。


「ねえ、悩んでることがあるなら言ってよ!あの時にカナタ君が私の心を晴らしてくれたのとは逆に今度は私がカナタ君の心を晴らしたいんだ!」


 これは和葉なりの恩返しってことか・・・しかも和葉は実行委員だ、もしかしたら何か助け舟を出してくれるかもしれない。


「分かったよ、少し長くなるがいいか?」


 そう言い俺が今回の事を話し合えると和葉が口を開いた。


「そうか、やっぱりあの子か・・・」


「やっぱりって今野とは知り合いか何かなのか?」


「一応知り合い・・・かな?」


 それならばと俺は和葉に助けを求める。


「そうなのか!だったら今回の件、どうにか手伝ってくれないか?」


「うーん、分かった♪今回の件、私に任せてよ♪」


「そうか!助かるよ!」


「でも、カナタ君にも手伝ってもらうから、よろしくね♪」




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