第15話 見に来て欲しいんです!
「今日は暇だな」
今日は珍しく三姉妹全員が出掛けており家には俺1人だった。しかしそろそろ三葉が帰ってくる頃のはずだが・・・
ドタドタドタ
ほら帰ってきた。ずっと家にいる暇人だからなせる技だ。因みに友達はいる。
などと無意味な自己弁護をしているとリビングの扉が開いた。
「ただいまー!」
「おう、おかえり。疲れたろ?ご飯そこに置いてあるから食べろよ」
「あっホントですか!ありがとうございます!」
そうしてご飯を食べ始めた三葉だったが、ふと箸を止めると俺に話しかけた。
「そういえばカナタ君、他の2人はどこに行ったんですか?」
「あー・・・なんだったかな、確か和葉は友達と遊びに行くとかで双葉は見たい映画があるとか言ってたな」
「そうなんですね・・・ところでカナタ君は今週の土曜日はお暇ですか?」
「土曜日?その日は何も予定ないぞ、ていうか基本俺は暇だ。それがどうかしたのか?」
「実はその日、助っ人で入ってるバスケ部の練習試合があるんですけど見に来てくれませんか?」
「練習試合?また随分と急だな」
「前からどこかのタイミングで呼ぼうとは思ってたんですが中々タイミングが無くて」
バスケか・・・そういえばバスケの上手い人たちの試合は見たことがないな。せっかく誘われたことだし見に行くか!
「そういうだったのか、それだったら喜んで見に行くよ」
すると三葉はより一層瞳の輝きを強めて言った。
「ホントですか!?ありがとうございます!私っ頑張りますね!」
♧
「三葉ちゃん!準備できた?」
「あっはい!今行きます!」
今日は練習試合の当日、いくら練習試合だからって失敗はしてられない!油断せずに頑張らないと!
「これより、練習試合を始めます」
ピー‼︎
始まった!さすが本番っ!みんな気合いが入りまくってる、私を遅れてなんかいられないんだ!
「三葉っ!」
ボールが来た!まずは冷静に周りを見て渡せそうな人を探して・・・ここだっ!
ナイスカットー
あっ!?敵にボールが・・・早く巻き返さないと、巻き返・・・さないと・・・
ピー
全くダメだった・・・どうにかしようと思えば思うほどダメになっていく。このままじゃ私のせいで・・・
「三葉ちゃん大丈夫そう?」
キャプテンが心配そうに声をかけてきた。正直言って大丈夫じゃないと言って逃げ出したいけどお世話になった先輩のためにも頑張らないと・・・!!
「大丈夫です、まだやれます!」
だけどどうすれば、もしかしたら私が易々と助っ人を請け負ったのが・・・
「頑張れ!みつはっ!!」
そう大声が聞こえ上を向くとそこにはカナタ君がいた。肩で息をしててたった今着いたのが目に見えて分かる。もしかしたら私、時間伝え忘れたかも?
でもそうだ、カナタ君が見にきてくれてるんだっ・・・!だったらこんな所で残念なところ見せてらんない!
「先輩!私っ後半も頑張るので絶対に勝ちましょう!!」
「・・・うん!よしっ!最後1クォーター全力で逆転目指すよ!」
「はいっ!!」
ビーー‼︎
「これにて練習試合を終了します」
アリガトウゴザイマシター
「三葉ちゃん、まずは試合お疲れ様。そして、逆転勝利ありがとー!」
あの後私たちは最大20点差あったのを巻き返し無事に勝利できた。
「ホントですねっ!最後の先輩のスリーポイント!ホントに痺れちゃいました!」
「あれは三葉ちゃんのパスが完璧だったからだよ、それにしても三葉ちゃん後半覚醒してたね」
「イヤイヤ、全然そんなことありませんよ」テレ
「もしかして・・・あの彼氏君のおかげ?」
思わぬ質問に思わず動揺してしまった。それでも私は必死に答える。
「ふえっ!?あ、あの人は違うんです!彼氏じゃないです!」
「でも・・・」
「でも?」
「私の好きな人です・・・」
「・・・そうかい、それはなんともまあ青春だね。それなら早く戻ってその人と帰ってあげな」
「はい!分かりました!それでは先輩、お疲れ様でした!!」
「・・・あれー先輩?三葉ちゃん、打ち上げに呼ばなくて良かったんすか?」
「いやー、あんなに乙女な顔されちゃったら打ち上げなんて野暮な邪魔できないでしょ」
「かなたくーん!」
「お、三葉!」
私がカナタ君に小走りで近づくや否やカナタ君は目を少年の様に輝かせて言った。
「お前ホントにすごかったな!他の正式な部員となんら遜色なかったぞ!」
「エヘヘ、ありがとうございます!」
「あっ、そういえばカナタ君が私に声を掛けた時に肩で息をしてましたが、もしかして私時間伝え忘れてました?」
「忘れてたぞ。朝起きたらもうとっくに三葉なら出たって双葉から聞いたから速攻で準備して走ってここまで来たんだからな?」
「そうなんですね・・・でもカナタ君はそこまでして私の試合見に来てくれたんですね」
「おう、一応皆来いってお前に言われたし、それに・・・」
「それに・・・なんですか?」
「三葉の知らない一面も知れるんじゃないかと思ったから」
「そっ、そうなんですね・・・私、やっぱりカナタ君が好きで人でよかったです!」
するとカナタ君はそれまでの少年の目から一転、顔をどこか赤らませながら言いました。
「お、お前そんなことそんな平然というな、びっくりするだろ」
ああ、こうやって表情がコロコロ変わるところも可愛いな。カナタ君を知れば知るほどカナタ君が好きになっていくな私・・・
「ごめんなさい、次からは気をつけます!なので今日晩御飯は私の好きなオムライスにしてくださいね!」
「はあ・・・分かったよ、だったら帰りに材料買って帰るか」
「はいっ!!」
こういう細やかな幸せがずっと続いて欲しいな・・・なんて
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