第14話 望むところよっ!
それは、あまりにも突然な出来事だった。
「ムゥ〜〜〜〜・・・」
ピコピコピコピコ
「ふんぬぅ〜〜〜〜!!」
ピコピコピコピコ
「ぬがーーーーー!!!」
何やらうるさいなとテレビの方を向くと双葉がゲームをしていた。画面にはゲームオーバーの文字が浮かび上がっており、苦戦しているのが見て取れた。
俺は気になったので双葉に話しかける事にした。
「おい双葉、何やってるんだ?」
すると珍しく眼鏡姿である双葉は当たり前と言った風に答える。
「何って、ゲームに決まってるじゃない?見て分からないの?」
「それぐらい分かるに決まってるだろ。何のゲームをしてるか聞いてんだよ」
「今やってるのはチョビ髭ブラザーズよ、だけどこの面が難しくて中々クリアできないのよ」
チョビ髭ブラザーズか、小さい時によく1人で遊んでたな。せっかくだし少しやらせて貰おう。
「少し俺にもやらせてくれよ」
「別にいいわよ、だけどカナタなんかがこのエリアクリア出来るのかしらね?」
言わせておけば、絶対にクリアしてやる!
「よっ、はっ、ホッと」
プーン、コイーン
「おっと、よいしょっと」
イヤッフフーー!
「よっしゃ!クリア!」
確かに少し難しいところもあったけど案外簡単だったな。俺は自慢しようと双葉に話しかける。
「おい双葉!クリアしたっ・・・てエエ!」
するとそこには餌をこれでもかと頬張るハムスターの如く頬を膨らませた双葉がいた。
俺は恐る恐る理由を尋ねる。
「えっと・・・双葉さん?いかがなさいました?」
すると双葉は大声で話し始める。
「だってカナタが私の苦戦した所をあっさりクリアしたのよ!?こんなの悔しいに決まってるじゃない!こう見えても私少しだけゲームには自信あったのよ!?」
なるほどそういう事だったのか、それは申し訳ない事をしてしまったのかもしれない。
俺は双葉の面子を回復させるためにある提案をした。
「だったら双葉、俺とお前でゲームで勝負しないか?」
すると双葉は肩をピクッと動かすと言った。
「そんなの・・・」
「望むところよっ!!」
そうして俺と双葉のゲーム勝負が始まった。
「ゲーム勝負って言っていたけれど、負けたら何かあるのかしら?」
「そうだな・・・そういえば前に和葉が作って失敗したチョコがあったろ?」
「あったわね、あの劇薬の詰まった石みたいなやつよね」
「敗者はそれを食べるってのはどうだ?」
すると双葉は動揺したがすぐに落ち着きを取り戻して言った。
「なるほど・・・詰まるところ真剣勝負って訳ね、いいじゃない、その条件のむわよ」
「じゃあそれで決まりだな」
こうして細かいルールも決まり、ゲームもチョビ髭カートに決定した。
「双葉はこのゲームやったことあるのか?」
「当たり前でしょ、それにこのゲームは3人で1番上手かったんだから!ていうかそういうアンタはどうなのよ?」
「俺か?俺も一応やったことあるぞ。上手いかは分からん」
「そう、ならこの勝負、私の勝ちね!」
「勝手に言ってろ」
ピッピッピッピー!
「よっしゃスタート!」
俺はスタートダッシュを成功させると颯爽と先頭に立った。確かこのレースは先頭に立っていた方が有利と動画で見た。だから現状は俺の方が有利なはずだ!
「中々やるじゃない、私だって!」
そう言って双葉インを突き俺を追い越しにかかる。それと同時に双葉は体を傾けると俺の体とぶつかり合った。するとその瞬間フワッと双葉の髪の毛の匂いが香ってきた。
「んなっ!?ヤバっ!」
それに思わずドキッとしてしまった俺は集中が途切れコースから落下してしまった。
「何やってるよアンタ、まあいいわ、このまま勝負は私が頂きよ!」
くそっ!俺としたことが思わぬ刺客にやられてしまった。しかし俺もあのチョコはゼッッッタイに食べたくない!俺は心を無にし逆転を図る。
「くっそ!負けるかー!」
「負けるもんですかー!」
ゴールッ
勝負は決した。勝ったのは・・・
「勝った、勝ったぞーーー!!!」
勝ったのは俺だ!思わぬ刺客おも乗り越えて俺が勝利したのだ!
両手を上げ勝利のポーズをとる俺に双葉が悔しそうに呟く。
「何であんなところにバナナなんか置いてあるのよっ・・・!?」
悔しそうは双葉を横目に俺は罰ゲームを執行させる。
「なあ、負けたからにはあのチョコはお前が食べくれるんだろぉなぁ!」
すると双葉は今にも泣き出しそうな顔をして対抗する。
「嫌よ!あんな爆弾以上の危険物食べるくらいなら舌噛み切って死ぬわ!」
と、やんややんやしていると後ろから声が聞こえた。
「2人ともー、何のお話をしてるのかなー?」
その瞬間、俺と双葉の時間が凍りついた。そして俺たちはゆっくりと振り向くとそこには貼り付けた様な笑顔の和葉が立っていた。
「ふ、双葉っ!?ど、どうしてここにいるかしら?」
「だってここ、私の家でもあるんだから当たり前じゃん。ていうか2人はゲームしてたんだ♪」
心なしかいつもの口調にも圧を感じる様な気が・・・ッ!?
俺は冷静に答える。
「お、おう。そうなんだよ・・・」
「そしてなんか、罰ゲームが何か私のチョコとも言ってたよね?」
「そっそんなこと言ってたかしら?」
すると和葉は笑顔をより一層大きくして言った。
「そっかー♪2人はそんなに私の手料理が食べたかったんだね♪そんな2人に私の試作品のカヌレが沢山あるから・・・是非とも2人でたくさん食べてね♪」ゴゴゴゴゴゴゴ
そう言われると俺たちは互いに目を見合わせて叫んだ。
「「すいませんでしたぁぁぁ!!!!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます