第13話 プールに行こうよ

「暑っついなーー」


「ホントにそうだよ〜このままだと溶けちゃいそうだよ〜」


 今日、我らの家はやたら暑い。理由は単純でリビングにある唯一のエアコンが壊れてしまい、明日までエアコンが使えないからだ。

ちなみに今家にいるのは俺と和葉だけで、双葉は図書館へ三葉は助っ人を頼まれたバスケ部の練習へ行っている。


 俺たちが絶賛暑さにやられていると急に和葉がとある提案をしてきた。


「あっ、そうだ!プールに行こうよ!」


「プール?そういえば朝にCMやってたな、そこに行くのか?」


「そうそう、なんか調べたら案外近くみたいなんだよね♪電車乗ってから3つ離れた駅で降りて、そこから歩いて10分で着くらしいよ」


「そうなのか・・・ここで悩んでても暑いだけだし行っちゃうか!」


「おっノリいいじゃん♪それじゃ準備して早速行こー!」


 ジバラクシテ


「やっと着いた・・・」


 炎天下の徒歩10分を舐めてた・・・はっきり言って途中でぶち倒れるかと思った。

すると後ろから和葉の声が聞こえた。


「暑い・・・このままじゃ溶けるぅ」ジェルゥ


「溶けてるっ!?ほら和葉!目的地はもう目の前だぞ!」


「ああ、オアシスぅ・・・」


ジュップンゴ


「ふー!ここが噂のプールか、結構広いんだな」


 目的地についた俺は颯爽と水着に着替え和葉を待っていた。すると後ろから突然誰かが抱きついてきた。


「かーなーたー君♪」ムギュ


「うおっ!?な、なんだ和葉か・・・驚かすなよ、てか人が多い所でそういうことして別人だったらどうするつもりだったんだ?」


「間違えないよ。だって・・・」


「カナタ君分かりやすいんだもん♪」


「なんだよそれ・・・」


 ここで俺はとある事に気がついてしまった。今、和葉の胸が絶賛俺の背中に当たっている事に・・・!

 その事に気がついた俺が硬直していると和葉が不思議そうに声をかけて来た。


「どうしたのカナタ君?急に固まっちゃったけど?」


 くそっ!なんでこんな時に長女で培ってきた視野の広さを発揮するんだ!!


「あっ、いや、なんでもないんだ」


「ふーん・・・」


 そう言って少しすると和葉は何かを悟ったような表情をすると目を輝かせて言った。


「ははーん?もしかして私の胸が当たって興奮したの?ねえねえ、どうなの?」


「そ、そんなことねぇよバカっ!」


 すると和葉は俺の正面に来た。そして先と同じように話し始める。


「えー?そんな事言って顔が真っ赤ですよカナタくーん?」


「ああもううるせえ!!さっさと行くぞ!」


「あー!もう待ってよカナタくーん!」


「あと・・・」


「あと?」


「水着・・・似合ってるぞ」


 そう言うと和葉は顔を食べごろのリンゴのように赤くして言った。


「あっ、ありがとう・・・」


「その言葉はイケメンがすぎるよ・・・」ボソ



 ♡

「いやーそれにしても色々種類があるね♪」


「そうだな、いくつか遊んだけどまだまだ制覇には時間がかかりそうだ」


「それじゃあ次は・・・」


 すると向こうに見知った顔が見えた。葵だ。なんで同級生の葵がここに!?ってそれはいてもおかしくなんかないか・・・あんだけ堂々とCM打ってたんだから。

 てかヤバイ!このままだとカナタ君と一緒にいるのがバレちゃう!!そうなると学校始まってたから何言われるか分かんないし、それにカナタ君、私たちと一緒に住んでるのバレたくないっぽいし・・・


 私がアタフタしていると1人用のシャワールームが目に映った。狭いけどやむを得ない。


「カナタ君!ちょっとこっち!!」


「は?ちょっ!?お前何して・・・」


 バタンッ!


 ふー、助かったぁ・・・私がそう思い顔を上げると自分が思っていたよりも何倍も近い距離にカナタ君の顔があった。

 カナタ君は不思議そうに私に尋ねる。


「おい三葉、一体こんなとこに2人して閉じこもってどうすんだよ!?」


「えっ、あの、その・・・」


 ダメだッ!緊張のせいで声がうまく出ない。それに身体中が今にも爆発しそうなくらいに暑い!

 それを察したのかカナタ君がまた質問を私にぶつける。


「おいマジで大丈夫か?顔赤いぞ」


 やめてカナタ君!これ以上近づかれると心臓の音が聞こえちゃう!


 そう頭の中がグチャグチャになっていると外から葵の声が聞こえる。


「あっれー?おっかしいなー?なんかここら辺に和葉がいた気ぃすんだけどなー」


 その言葉を聞いてカナタ君は何かしら察してくれたのか無言でいてくれた。

 しばらくともあっという間とも言える時間が経って葵の声は遠くへと消えていった。それと同時に私達はシャワールームを出る。


「ふー、大丈夫だったか和葉?」


「え?あっうん大丈夫だよ」


 こんな時でも私を心配してくれるなんてやっぱりカナタ君って優しいんだな


「今の和葉の友達か?」


「うん、同じクラスの」


「そうか、だとしたらありがとな」


「え?」


「だってお前、俺がお前ら3人一緒住んでるのがバレたくないって知ってたからこんなことしてくれたんだろ?」


「へっ?あ、ああ大体そんなとこ」


 ホントはもっと別の理由もあったけど


「にしても今のでもう時間だな。買い物して帰ろう」


「あっ、もうそんな時間か・・・そしたらもう帰ろっか♪」


 ホントはもうちょっと遊びたかったけど葵のお陰でいい思いできたしいっか♪



 ユウガター


「ただいまー」


「ただいまー♪ホントに疲れたよー」


 あの後俺たちは無事に何事もなく買い物を済ませて家に帰宅した。

 すると三葉と双葉がご機嫌に俺たちを出迎えた。


「2人とも!おかえりなさい!」


「おかえり、遅かったじゃない?どこいってたのよ?」


「まあ、ちょっと色々とね♪」


「ていうか双葉、なんか機嫌良くないか?」


「そうなのよ!実は三葉が・・・」


「先輩から話題のプールのチケットを4枚頂いたんです!だからこんどの週末、みんなで行きませんか?」


 そういう三葉の手には先程行ったばかりのプールのチケットが握られていた。

 和葉の方に目をやると和葉と目が合った。そして俺たちは声を揃えて言った。


「「考えときます・・・」」

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