第8話 夏祭り 今年は4人で

「夏祭り?ああ、もうそんな時期か」


「そうそう、ちっちゃい時はチラシを見て今か今かと待ってたけど、歳をとるとあっという間だね♪」


「何言ってんのよ、アンタがそんなこと言ってたら私たちも年寄りみたいじゃない」


 明日は近くの川で花火大会が行われる日だ。ここら辺ではあまりお祭りの類いは行われないため、ここら辺の人達にとっての一大イベントである。



 すると三葉が興味深いことを言い出した。


「今年もいつものところで花火見るのかなっ!?」


「いつもの所?お前ら何か特別な場所で見てんのか?」


「そうなんだっ♪打ち上げ会場の近くに私たちしか知らない隠れスポットがあって毎年そこで花火を見てるんだよね♪」


「そうか、それなら当日に俺は不要だな。3人で楽しんでこいよ」


 そう言うと3人の目が少し冷ややかなものになった。そして双葉が口を開く。


「何言ってるのよ、アンタも参加に決まってるじゃない」


「えっ、でも毎年3人で見てるって言ってただろ?」


「それは今までの話しよ!春から一緒に過ごしてるアンタを置いていける訳ないでしょ」


「それに・・・」


 そう言うと双葉はグイとこちらに顔を近づけて言った。


「アンタっ私のこともっと知りたいんでしょ?」


 そこまで言われては参加しない方が無粋というものだろう。俺は答える。


「分かったよ、そしたら明日は俺も参加するよ」


 すると三葉が殊更大きな声で言った。


「よーっし!明日のお祭り全力で楽しんじゃいましょー!」


「「「おーっ!」」」


 ヨクジツッ


「アイツら遅えな、待ち合わせの時間はもう過ぎてるはずなんだが・・・」


 俺は今日、三姉妹の指定した場所に来ていた。しかし奴らはあろうことか待ち合わせに遅れているのだ。俺が少しイライラしていると後ろから声が聞こえた。


「カナタくーん!遅れてすいませーん!」


「おい遅いぞお前ら・・・ってええ!!」


 振り向くとそこには浴衣姿の三姉妹がいた。俺の驚きなどお構いなしに三葉は会話を続ける。


「ごめんなさいカナタ君!着付けが思ったより時間掛かってしまって」


「お、おうそんなことよりお前ら浴衣着てきたのかよ!聞いてなかったから驚いたぞ」


 すると三葉が目を輝かせて言った。


「えへへ、そうなんです!どうですか!?似合ってますか!?」


 三葉の圧に少し圧されながらも俺は答える。


「に、似合ってると思うぞ。三葉らしい明るい色合いで」


「・・・ッ!!ありがとうございますっ!」


 すると和葉が不満そうに言ってきた。


「三葉ばっか褒めちゃって、少し妬けちゃうな〜私のも褒めて欲しいな〜なんて♪」


「和葉も似合ってるよ。やっぱりお前は青とかそう言う色が合うな」


「あっ、ありがとう・・・」


「双葉も、浴衣にあってるぞ」


「う、うるさいわね!そんなこと言ったって何も出ないわよ!」


「そんなこと言っちゃって〜双葉、さっきから似合ってるかどうか何回も私に聞いてきてたじゃん♪」


「和葉っ!?余計なこと言わないでよ!ほっほら、さっさと会場行くわよ」



「やっと着いたわね!」


「意外と遠かったよー」


「やっぱりお祭りってワクワクしますね!」


「お前は少し落ち着け」


 俺たちは今祭り会場にいる。会場には屋台がいくつも並んでおり結構な数の人でごった返していた。


「ところで花火開始まであとどれくらいなんだ?」


「大体1時間くらいね、てかそれぐらい自分で把握しなさいよ」


「悪かった、しかしそうなると屋台をひと通り廻る時間は無さそうだな」


 すると和葉がとある提案をしてきた。


「だったら二手に別れようよ。そしてお互いのチームがお互いのチームの欲しそうなものを買って発表するっ!てのはどうかな♪」


「あっ!それすごい良い!」


「それなら早速2チームに別れましょう!」



「・・・それじゃあ、お二人さん良い食べ物待ってますよー♪」


「また後でね!双葉!カナタ君っ!」


「お前らも気をつけろよー」


「アンタ達こそ良いもの期待してるわよー」


 公正なるジャンケンの結果、チームは和葉と三葉チームと双葉と俺チームになった。


「よっしゃ、それじゃあさっさと良いもん見繕って集合場所行こうぜ」


「う、うん。そうね・・・」



「絶対このかるめ焼きの方が良いって!」


「なに言ってんのよ!絶対こっちの冷やしパインの方が良いに決まってるじゃない!」


 俺たちは和葉と三葉が欲しそうな物を買っていったが最後の甘いものが何が良いかで揉めている。

 俺は双葉の浅ましい意見に反論する。


「冷やしパインはどう考えてもないだろ!今買って持ってったら集合して食べる頃には温くなってるだろ!温パインなんか食べたくないに決まってんだろ!」


「何よ!かるめ焼きなんかもっと論外よ!ベタベタするものをあの2人が喜ぶと思う!?それにかるめ焼きは甘すぎて喉が渇いちゃうじゃない!」


「何をー!」   「何よー!」


 すると冷やしパインの店の人が声をかけてきた。


「ま、まあまあ2人とも落ち着いて・・・」


「「ちょっと黙ってて!!」」


「す、すまん・・・」


 依然として俺たちがいがみ合っていると知らないおばあさんが間に入ってきた。よく見るとかるめ焼きを売っている人だった。


「ちょっと良いですかお二人さん」


「何ですかおばあさん?」


 双葉の声を聞くとおばあさんはゆっくりと話し始める。


「何やら揉めているようでしたので解決案をと思ってねぇ」


「解決案・・・ですか?」


「ええ、実を言うとかるめ焼きはお土産でも買えるからそれお土産で買って冷やしたパインを今食べるように買えば良いんじゃないかと思ったのさ」 


「でも私たちそれだと予算オーバーしちゃって・・・」


「なーに、それぐらいサービスするよ」


「うちもサービスさせてもらうよ!」


「あっ」

「「ありがとうございます!」」


 こうして俺たちは無事に目的の物を買うことができた。しかしまだ祭りは序盤だと言うのにこんなんで大丈夫だろうか、先が思いやられる・・・


 花火開始まであと0:30:00

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