第25話 繰り返される惨劇
「嘘…だろ…?」
ダリアたちの家にたどり着くと、そこには俺の創造した最悪の未来が現実となっていた。
俺が独り言のようにつぶやくと、そいつらはその業火の中から姿を現した。
黒いローブを身にまとい、容姿は想像つかないが大きい奴が二人と小さい奴が一人の小隊のようだった。
俺がすかさず牧場に積んであるわらに身を隠す。
距離はかなり近いが、裏を返せばいつでもこちらから仕掛けられるということだ。
何やらぼそぼそと、その炎の中から出てきたやつらがしゃべっている。
俺はスキル聴覚拡張を使って、その会話を盗み聞くことを試みた。
「目的地にて……遺体はなし…。これより…へ…帰還する」
遺体…とはダリアとユリアという意味だろうか。
俺は次第に強くなるこぶしと怒りを必死に抑えつけた。
ただ、肝心の目的地は途切れ途切れで聞き取れなかった。
「遺品を確認しました…持ち帰ります」
そいつがローブにそれを入れた瞬間、そいつの腕はぽとりと地面へと垂直に落下する。
スキル高速移動を使い後ろに回り込み、腕を切ったがまだ浅い。
俺はすかさず首にヘットロッグをかけて落としにかかる。
残りの二人は気づいていないようだ。
とりあえず小柄なこいつからまずは絞め殺す、俺はもうそいつの姿を目視したときから決めていた。
「が……が……ぐぅ…か…」
そいつは力なく倒れたかと思うと、口からは泡をはいている。
なさけないやつだ、この程度の動きにすら目で追えてすらいないなんて。
勇者ならば、この百倍は早い神速移動で俺をよく殺していたものだが。
感傷にふけるのをやめ、俺は残りの二人を仕留めにかかる。
俺は勇者の言葉を思い出していた。
「何事も慌てず冷静に。物事はね、大概冷静なやつの方に有利に運ぶから」
一人仕留めたからと言って慌てず冷静に、俺は燃えている民家を調べているそいつらの背後に立った。
勝った…やれる…。
俺の心に一瞬、ほんの一瞬油断が生まれる。
そのすきを突かれた。
そいつらは大きく身をひるがえし、まるで待ってましたかのように俺の体を抱きかかえた!
「く……な……」
先程絞め殺したはずのやつは余裕綽々と言った感じで肩をこきこきと鳴らすと、俺の方へと近づいてきた。
「きみぃ、半人前?」
ローブから覗く憎たらしい顔には、見覚えがあった。
そいつは…ダリアとうり二つの顔をしていた。
「ちみぃ、僕と同じ顔の人知らないかな?」
恐らくは、ダリアのことだろうが俺はなにも発することはない。
「イエスかノーかって、どっちか聞いてるんだけど?」
「きみぃは、死にたいの?。君が僕にしてくれたように絞め殺してあげてもいいんだよ?」
俺はなおも沈黙を貫き通し、そいつの目にがんを飛ばしていた。
生意気な顔だけなら負けていないつもりだ。
「も、いいや……」
そう言うと、そいつは自らの首にまるでうずまきを描くように触れると、躊躇なく自分の首をねじ切った。
瞬間、俺の視界は360度回転した。
MP1レベル1の最強魔術師は追放され、メンヘラ魔王とヤンデレ勇者に徹底的に愛される!? 西村洋平 @gabigon
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