第24話 未来…?過去…?
「あんちゃん、だいじょぶか?」
ダリアが心配そうに俺の顔を覗き込んでくるが、俺はそれを手で制し大丈夫ですと言った。
その話を踏まえると、勇者が未来でこの家に実の娘を預けに来るということ。
それも男というのは勇者の夫だろう。
やはり俺の見立ては正しかった。
あの子は勇者の子、勇者の子孫でほぼ間違いない。
ということは、勇者はまだ生きている…ってことか?
まだ不確定要素は多いが、可能性は高くなったとみていいだろう。
俺はそれを知った瞬間、ここを出ることを決意した。
「すまない。もう少しここに滞在しようと思っていたんだが…」
「急用を思い出したんで、そうだな…明日にでもここを出ていくよ」
ダリアはそれを聞いて心底驚いてもいたが、それよりも俺を心配していた。
「大丈夫なのか?あては?」
「あんちゃんさえいいってんなら、もう少しここにいてくれたって全然構わないぞ?」
「いや、大事な急用なんだ。ここで休養を取っているわけにも、いかなくなったらしい」
俺はダリアに軽く頭を下げると、「お世話になりました」と言ってダリアに紹介されてた部屋に入って眠りにつくことにした。
それにしても…まさか…。
生きている…という結果を表しているかもしれない事実がこんなにもうれしいなんて。
俺は一刻も早く、勇者と会いたかった。
ただ、夫がいるというのはどういうことだろう?
俺はそれが唯一引っかかった。
「お、おはよう」
朝になって部屋から出るとダリアとユリアがもうすでに朝食をとっていた。
俺も遅れて席に着くと、ダリアがほれと言ってパンの乗った皿を差し出してきた。
「これ、あんたの分な」
パンにはバターとジャムが塗られていて、さらに焼きたてなのかほんのりと皿もあったかい。
「いただきます」
俺は手を合わせて、朝食をとった。
朝食を取り終わると、俺はダリアに指定されていた最後の仕事にとりかかった。
これが終われば、もうこことはおさらばだ。
寂しい気もしたが、今は勇者と合流することが最優先だ。
勇者と合流し、安全を確認した後にまたのんびりとくればいい。
今度は勇者と…その夫もつれてこよう。
俺が馬宿で作業をしていると、どうも馬達が騒がしい。
まるで何かから逃げ出したがっているような…そんな風に見える。
俺はドードーと言って、馬たちをたしなめるが、なかなか落ち着いてくれない。
すると…ほんのりと火の粉が鼻をかすめた。
この火の粉…嫌な記憶を思い起こさせる…。
あの業火に包まれた魔王城が俺の頭に浮かんだ。
俺は咄嗟に手で払ったが、馬たちの見ている方向を見るとそこには火の海に包まれているとある一軒家が見えた。
あれは…ダリアたちのいるはずの…家だ。
俺はその光景に魔王城の陰を重ねてしまった。
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