第23話 勇者の子孫?
「いやぁ、美味かった」
俺が食事を終え、くつろいでいるとユリアを寝かしつけてきたダリアが二階から降りてきた。
二階にはできるだけ夜は近づかないように頼む、と言われたがまぁそのつもりもなかったのでわかったと了承した。
「良かった良かった。これからも仕事の方もよろしく頼む」
「それはもう」
「じゃ、お前さんの知りたいことを話そうか?」
いきなり切り出してきたダリアに、俺は一瞬驚くが早く知れることに越したことはないの俺は聞く姿勢に入る。
「ああ、あの子について。何があったのか知りたい」
ダリアが一度ため息をついて、話し始めた。
「あの子はな、捨て子だったんだよ」
「捨て子…?」
「ある日突然…二人の男女がここにきてな」
「そんで…あの子を頼むといって去っていった」
二人の男女?まさか…と思い俺は訪ねてみる。
「その女の方は金髪じゃなかったか?」
「ああ…確かに…そうだったかもなぁ…金髪に青い目だったのを覚えてるよ」
「あの子を渡す瞬間、見えたのを覚えてる。ここら辺じゃあ珍しかったからな、金髪に青い目は」
俺は確信した。
恐らく女の方は勇者だ。
ただ…男の方は誰だ…?それにあの子…勇者と同じ名前を持っているということは本当に勇者の隠し子なんじゃないのか?
俺はどんどんと湧いて出てくる謎に対処しきれずにいた。
「あんちゃんが聞きたかったのはこれであってるか?少なくとも俺はここまでしか知らない」
「あの子がいる前じゃあ、話しづらかったからなぁ」
そういうとダリアは考え深そうにうなっていた。
「もう…六年前になるか…あの子が来てから」
ダリアが黄昏れ、他人事のようにそうつぶやく。
六年前…?
俺は勇者が隠し子を身ごもっているなんて話は聞いたことがなかったし、ましてやそんな素振りは全くといっていいほどなかった。
あの勇者がそれを隠し通せるとも思えないし…。
ただ、俺は一つ可能性があることに気が付いていた…いや…気が付いていないふりをしていただけだ。
「今って…統一歴何年だ?」
統一歴、神がこの世界へ降りてきてこの世界を作ってから経った年数らしいが、俺もこの世界に転生してきて初めて知った概念だった。
俺たちがこの世界に転生してきたのは、統一歴637年だったはず。
そして魔王城で修行していたのはそれから二年後だったはずなので統一歴639年のはず…。
だとしたら今は…?今は何年なんだ?とふと気になった。
「何言ってんだい?今は…統一歴1936年だよ」
ダリアの平然とそう言ったが、俺にはそれがどこか遠くの世界の別のことのように思えた。
俺の転生した年から千年以上たっている…っていうのか?
ありえない…いや…俺は確かあの冥級ダンジョンで何年過ごした?
もしかしたら千年以上…気付かないうちに過ごしていたのだとしたら…?
いや…だとしてもなぜ魔王は俺を知らなかった…?知らない素振りをした?そんな風ではなかったし…。
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