第22話 双子!?

「ワシは、ダリア。この一軒家でこの子と住んどる」

その勇者に似たその子を抱きしめてなでなでしている老人が後から自己紹介をしてくれたが、正直あまり頭に入っていなかった。

ユリアという勇者と同じ名前…それに容姿にもどことなく面影がある…。


ここまで共通点がそろっていて、他人なんてこと…あるか?

俺はその子が居候だというダリア老人の話を思い出した。

居候とは、どういうわけがあってそうなったのか。


それが異常に気になって、気が付けば言葉を発していた。

「え、この子が何でうちに居候してるかって?」

「言いずらいことがあれば結構ですので…」

酷かと思い俺はそう補足したが、内心気になってしょうがなかった。

欲を言うなら早く、ここで聞き出しておきたいのが本音だ。



「ああ…この子は――……すまない、その話をするのはまた今度でいいかな?」

ダリアはそう言って話こそはしてくれなかったが、どうやら話す意思はあるらしかった。

今は単純にこの子がいるから話しづらい…ということだろう。


俺はその件は満足のいく反応が得られたので一旦保留にし、いつもの口調で何か手伝いましょうかと提案した。

ここでいくらか暮らす以上、何か手伝わなければつり合いが取れない…そう思っての行動だった。

ダリアはそうかい悪いね言いつつも頼もうと思っていたことがあるんだと、仕事内容をいくつか指定してきた。


「君は若そうだから、これもやってもらってもいいかな?」

「夕食まで、終わらなかったらそのままでいいからね」

ダリアはそう言うと、せっせと家の中へ戻っていった。


まぁ、のんびりやっていくかと思ったが今は情報源は何もない状況だ。

俺は手と頭を同時に動かしながら考えていた。

しいて言うなら、あのユリアという少女だがまだ不確定要素が多すぎるのも事実。


あてにはしない方がいいだろう。

ダリアは信頼できる人だと思うし、ユリアという少女のことに関しても何か後ろめたいことがあるのだろう。

俺のステータスは、あれから何も変わっていない。


ただ、MPは相変わらず1のまま…。

これは恐らく今後も変わらない数値だろうが、だからこそ何か対抗策を講じなければ…あいつと…氷河の魔人と再戦する際にはどうにかしておかなくては。

俺はこぶしを固く握り、二度目の復讐を誓った。


思ってみれば俺は、復讐をまだ何一つ果たせていない。

魔王城にいたのもクラスメートだろうが、まだ全員に復讐を果たすまでは、終われない。

それからここはどこだろう?魔王城からそう遠くはないだろうが、現在地を把握できていなのは正直不安だった。


そうこうしているうちに作業が終わったので、俺は家に戻ることにした。

夕食まで、と言っていたが全然早く終わったのは作業が簡単だったからだろう。

俺が家に入ると、ダリアが驚いて振り返ってきた。


「あんちゃん、終わったのかい!?」

「まぁ、一応」

「へぇ~最近の若者は要領いいねぇ~」


ダリアが料理を作っている横で、テーブルで絵を描いているユリアの姿が目に入った。

俺もテーブルでダリアの料理ができるのを待つことにした。

「あんちゃん、ちょっと待っててくれよ。すぐできるからな」


俺はすまないと言って、席についた。

正面でユリアが書いている絵をのぞき込んでみると、そこには三人の人物が森?の中へと歩いて行っているような絵だった。

その森が背景が黄色と水色で塗りつぶされていて、どことなく朝日がさしているのを表しているのかな?と思った。


「はいよ、お待ちどぉ」

ダリアが鍋を手袋をしながら暑そうに急ぎ足で持ってくると、慣れた手つきでふたを開ける。

ふたを開けると、中からこおばしい湯気が立ち込め中を見るとハンバーグだった。


「おおっ、すごいな」

「ありがとよぉ、今日の仕事の礼も兼ねてるんだ。たっぷり食べてくれよぉ~」

「ありがたく」


俺は手を合わせ、何年からぶりの食事にありついた。

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